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 唐津で伊万里行きの列車に乗り換えました。筑前前原行きの到着の1分後である14:26に発車するダイヤとなっていて、発車までの待ち時間は非常に短く、効率の良い乗り換えができます。列車は、筑前前原行きの列車よりも先に唐津を発車していきます[①]

 唐津を発車してからしばらくの間は、唐津駅近辺の高架化区間を走ります。今走っているところは、一見するとあたかも複線化されているように見えますが・・・[②]、左側の線路には架線がないのに、右側の線路にはあるなど、ちょっとおかしいですね。

 実は、この区間は複線化されているというわけではなく、”伊万里・佐賀方面⇔唐津方面の気動車の列車のみが走る筑肥線・唐津線の単線の線路(左側)”と”福岡空港方面⇔唐津方面の電車の列車のみが走る筑肥線の単線の線路(右側)”が並べて敷設されているという、単線並列と呼ばれるものなんですね。つまり、異なる路線の単線の線路が並べて敷設されているがために、複線のように見えてしまうだけということ。

 和多田駅付近で単線並列は解消し、それぞれの線路がそれぞれの方面へ向かって分かれていきます[③]。写真の右側に写っている和多田駅は、電車の列車が走る線路にのみホームがあり、気動車の列車が走る線路の方にはホームが設置されていません。和多田駅から乗る人が伊万里・佐賀方面へ向かおうと思ったら、その線路は目と鼻の先にありますが、いったん唐津駅まで向かう必要があります。

 唐津を出て最初に停車する駅は鬼塚[④]。既に高架区間も終わり、線路とホームは地上にあります。鬼塚駅は写真の通り、松浦川に面するところに設けられていて、ホームや列車の車内からは、松浦川を眺めることができます[⑤]

 鬼塚の次の駅は山本です[⑥]。西唐津〜山本間は、久保田〜西唐津を結ぶ唐津線を走ってきましたが、山本からは再び筑肥線となります。これで山本〜伊万里間を乗車すれば、姪浜〜唐津・山本〜伊万里という2つの区間に分断されてしまっている筑肥線の全線乗車を達成できます。筑肥線は唐津線を介して2つの区間に分かれているという特殊な状況ゆえ、このように、全線乗車の方法もちょっと特殊です。

 筑肥線のうち、電化区間である姪浜〜唐津間は電車が走り、列車の本数も多く、地下鉄との相互直通運転も行うという区間ですが、非電化区間である山本〜伊万里間は、基本的には1両編成の気動車しか走らず、列車の間隔も最大約3時間という区間です。同じ筑肥線を名乗ってはいますが、その性格は大きく異なっています。

 それこそ、このような周囲の民家も少なく、田圃の中にあるというような単式1面1線の駅(写真は肥前長野)[⑧]を見ると、ますます、ここが電化区間と同じ筑肥線であることが信じられなくなってきます。非電化区間は、列車の運行形態からすれば、明らかにローカル線状態なんですが、”幹線”に指定されている筑肥線の一部ですから、運賃は、安め(あくまでも擬制キロ・運賃計算キロ比で)の幹線運賃が適用されます。

 今回に限らず、旅をするときに毎回思うことですが、今自分が乗っている列車が走っているこの線路[⑨]が、日本最北端の稚内などまで途切れることなく続いているということに、鉄道というもののロマンが秘められているように思います。この線路をたどっていけば、時間はかかっても、いつかは全国各地のあらゆるところへ行ける・・・。私がJR線の全線乗車を志したのも、きっとこの線路から壮大なロマンを感じたことが理由だと思います。

 15:17、終点の伊万里に到着[⑩]。ようやく筑肥線の全線乗車を完了しました。



























 駅名標[①]。伊万里駅は筑肥線の終点駅であり、また行き止まりの駅でもある[②]ゆえ、駅名標に記される隣の駅は片側の1つしかありません。駅名標に挿入されている絵はもちろん伊万里焼の絵。

 伊万里駅のホームにはもう1つ、違う種類の駅名標がありますが、それはこのようなもの[③]。JRの筑肥線の上伊万里駅を隣の駅として記すだけでなく、ここで接続している松浦鉄道の伊万里駅の隣の駅も記しています。しかし、前述のように、筑肥線の線路はここで途切れていて、「線路はこの先も伸びるが、ここから先は松浦鉄道に・・・」というわけではありません。純粋に線路が途切れていながら、駅名標の左右両側に駅名を記しているというのは、極めて珍しい例ではないでしょうか(もっとも、これには歴史的経緯があるようで)。

 この駅は伊万里市の市街地の中に位置していて、駅周辺はそこそこの街になっています[④]。かつてはJR九州・松浦鉄道が同じ駅舎を使用していましたが、現在はそれぞれが独立した別の駅舎を持っています。JRの駅舎はこういう感じ[⑤]。両社の駅同士を結ぶ駅ビル(ペデストリアンデッキ)があり、「東ビルJR駅[⑦]」「西ビルMR駅[⑧]」として、それぞれの入り口が東西2つの駅ビルに設けられています。
 その結果、道路にある案内標識でも、1つの「伊万里駅」としてではなく、JR・MRそれぞれの駅を別々のものとして案内しています[⑨]

 この手のものについてはあまりよく知らないんですが・・・、駅の近くにあったこの立像は「伊万里色絵婦人立像」というものだそうです[⑪]。風俗画で流行した美人画に写る女性を立体化したものとして、陶器による美人像が制作されるようになり、その美人像を現代の技術を用いて巨大に制作したものが、この伊万里色絵婦人立像・・・というところなんでしょうか。すみません、さすがによく分かりません。

 引き続き、駅の周辺を歩いてみます[⑫]。その中で見つけたのは、小さな城状の建物[⑬]。ここ伊万里には、かつては伊万里城があったので、それにちなんだ小さな資料館か何かかと思いましたが・・・、実はこれの正体は公衆便所。遠目に見たら、これが公衆便所であるとはとても思えないでしょう。私も、「中央公衆便所」と書いてある看板を見て、初めてこれが公衆便所だと分かりましたし・・・。

 伊万里駅に戻ってきました。「きっぷうりば」と書いてある案内板の「新幹線」のところを見ると、そこには100系の絵がありました[⑭]。新幹線を示すピクトグラムというと、0系を始めとして、様々な種類ものがありますが、ここはJR九州の管内ですから、駅のピクトグラムでは800系が使われているのではないかと思っていました。それがよもや100系とは。

 九州新幹線が部分開業しても、伊万里など佐賀県内の駅の最寄りの新幹線の駅は、山陽新幹線の博多でした(今は新鳥栖でしょうか)から、やはりこのあたりの駅にとっては、昔から、新幹線といえば山陽新幹線ということなのかもしれません。実際、九州新幹線の部分開業により、九州を800系が走ることになっても、佐賀県にとってはあまり関係のないことでしたしね。
 「わざわざシールを貼って800系にする必要性が見当たらなかった」と言われれば、こんな考察も全部無意味になりますが(笑)

 これから乗車するのは、16:23発の唐津行きです[⑮]。先ほど乗ってきたところをそのまま折り返す形になります。松浦鉄道を使えば、同じ区間を折り返して2度乗車するという事態を避けることができましたが、この先の旅程の都合上、たとえ同じ区間を2度乗車することになっても、JRの筑肥線の列車に乗る方が良いので、今回はそうします。

 筑肥線の山本〜伊万里間の非電化区間は、列車の本数がかなり少なく、列車の間隔が3時間という場合もあります。伊万里駅を出る列車は、1日僅か10本しかなく、第三セクターの松浦鉄道の方がよっぽど本数が多いという状況になっています。






















 これから、筑肥線の列車で山本駅を目指します。その山本は、久保田(佐賀)へ向かう唐津線(路線区間としては久保田〜西唐津)と接続する駅であり、山本からは唐津線の列車に乗り換えて、唐津線の全線乗車を果たします。

 間もなく発車という頃に車内に入ると、車内は予想以上に混んでいました。そこで私が陣取ったのは、後部運転室の横[②]。実は伊万里への行きの列車でも、同じ場所に陣取っていました。夏休みだからということもあるのかもしれませんが、伊万里へ行くときの列車も、伊万里から帰るときの列車も、いずれもそこそこの数の乗客がありました。

 筑肥線の山本〜伊万里間の列車の本数は、2013年3月のダイヤ改正で減らされたようですが、少なくともこの日の乗客の数を見る限り、減便する必要はなかったのでは、とも思いましたが。

 ワンマン運転用の運賃表示機がありますが、そこの駅名の一覧には、臨時駅であるバルーンさが駅もありました[③]。駅名自体はシールで貼り付けられているようですが、営業期間外でも、もう貼りっぱなしなんですね。まあ、臨時駅といっても、毎年同じ時期に同じ期間営業することはもう分かり切っていますからねぇ。いちいち貼ったり剥がしたりするのも面倒なんでしょう。

 単線、非電化の筑肥西線を進んでいく列車。どの駅に停車しても[④]、乗り降りする人の数はそう多くはありません。列車は、時には林の合間を縫うように走り[⑤]、周囲に集落という集落がない駅も通っていきます[⑥]。江差線が”廃線”(第三セクターなどへの転換がない純粋な廃線は、JR線では横川〜軽井沢間以来?)されることが話題になりましたが、こういうローカル線も、本当にいつまで持つんでしょうかね。

 橋梁の下を線路が通っています[⑦]。筑肥西線は単線ですから、もちろん、複線の線路が一時的に左右に分かれる・・・といった類のものではありません。この線路は山本で接続する唐津線のものです。

 その唐津線と筑肥西線には、実は並走区間(約3.8キロ。結構長い)があります。といっても、別々の路線の単線の線路が並走しているだけなので、先ほど唐津〜和多田付近で見たものと同じ「単線並列」に相当するものに過ぎませんが。

 単線並列の区間の中で特筆できるのはこの光景[⑧]。右側の線路(唐津線)にはホームがあるのに、左側の線路(筑肥線)にはホームがないというこの駅は、本牟田部という駅です。

 和多田駅付近でも同じようなことが起こっていましたが、和多田駅は、2つの線路が分かれはじめたところにあったのに対し、本牟田部駅は、2つの線路が完全に並行しているところにある、というところが注目すべき点です。(和多田駅以上に、「こっちの線路の方にもホームを設置してやれよ」と言いたくなってしまう)

 筑肥線の線路にはホームが設置されていないので、当然、今私が乗車している筑肥線の列車も、本牟田部駅は通過していきます。本牟田部で降りようと思ったら、こうやって山本まで来て[⑨]、唐津線の列車に乗り換える必要があります。

 山本では、乗り換え時間1分で唐津線の列車と接続しています。私もここで唐津線の列車に乗り換えます。


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