岩国〜柳井間を走行中しているときのこと。「(ハイケンスのセレナーデ♪)皆さま、おはようございます。今日は8月17日、列車は時刻通り運転しております・・・」。こんなおはよう放送で目が覚めて、ちょっと廊下に出てみると、窓から朝陽が燦々と差し込んでいて[①]、今日という日の朝が爽やかに始まったことを実感します。二度寝しようかな、いやでも門司で行う機関車交換が見たいしなあ・・・。
昨晩から全く飲み物を飲んでいないし、まず水でも飲もうか。真っ白で、何の飾り気もない冷水器だけど、袋状の紙コップを開き、水を入れて飲めば、たちまちのどが潤います[②]。
どうもまだ眠い感じがする・・・。そんなときは、冷たい水で顔を洗えばいいんだ。蛇口とレバーが特殊な構造で、しかも列車は揺れるから、手に水を溜めるのはちょっと難しいけど、そこは旅慣れた人間としての腕の見せ所[③]。口の中に痰が出て来たら、痰壺の中へ・・・。
・・・というのは、いずれも私の勝手な妄想。おはよう放送なんて流れるわけがありません。たしかに廊下に朝陽は差し込んでいますが、窓越しに外を見てみると、当然のことながら、見える景色は昨晩と全く同じなんですよね。少したりとも動いていない。それに、冷水器も洗面所も、物は残っていても、実際に使用することはできません。
それでも、そういう想像や懐古と共にブルートレインたらぎを利用すれば、きっと、寝台列車時代の富士・はやぶさ号のことを思い出せるのではないでしょうか。あいにく、私は1度も乗ったことがないんですが・・・。
宿泊予約時に、翌朝の朝食(600円)を付けておきましたが、この朝食とは弁当(幕の内)とみそ汁のこと。3両ある客車の中間の、共有スペースの車両にあるフロントで受け取ります。個室(寝台)内での飲食は禁止なので、これは共有スペースの車両で食べます。
車内を撮影するのを忘れてしまいましたが、ここブルートレインたらぎにおける共有スペースの車両は、端っこに数区画の開放式B寝台(荷物置き場らしい)を残して、大部分の寝台を撤去し、その代わりに木製のベンチやテーブル、共有の大型テレビなどを置いたという車両です。飲食はここの車両でしてくれということですが、どうせなら、オシ14でも置いてくれれば・・・なんてね(それなら弁当だろうが何だろうが食堂車気分!)。
朝食を終えたら、身支度を済ませて、チェックアウト。昨晩ここにチェックインしたのは20:30ごろで、今朝チェックアウトしたのは8:20ごろ。晩年の下りの寝台特急はやぶさ号は、静岡を20:36に発車して、下関に8:32に到着していましたから、実際のダイヤに当てはめると、おおよそそのような区間で乗車したことになるというところです。
朝のブルートレインは、夜とはまた違った表情を見せます[④]。そもそも鉄道車両における”表情”とは何なのかということもありますし、また感覚的な話ではあるんですが、長距離(夜行)列車は、始発駅と終着駅では、何となくその車両の表情が違っているような感じはしませんか?長旅をする前、長旅を終えた後。いまいちとらえどころのない話ですが、なんだか、そういう違いを感じます。
下関ではやぶさ号を下車した(と仮定する)私。下関では6分停車しますが、次の列車の発車時刻が近いので、残念ながら、その発車を見届けることはできません(と仮定する)。下関駅に停車するはやぶさ号に別れを告げ、次なる列車が発車するホームへと向かいます[⑤](と仮定する)。多良木駅のホームを、次の列車が発車するホームであると見立てておくことにしましょう。
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