●9月3日●
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−Day:4 小樽に宿る歴史の証人−

※各画像はクリックすると拡大します。











 おはようございます。快晴とはいきませんが、今日もまずまずの天気です。それでは、幌延駅から旅を再開しましょう[①]

 今日はまず、幌延駅を朝一番に出る上りの普通列車に乗車します。平日でしたから、「こういうのには高校生が乗ってくるのだろう」と思っていましたが、駅舎の中には誰もいませんでした[③]。とりあえず、私が今日の幌延駅の一番乗りのようですね。

 前のページにも記したように、幌延町には、高校が存在しません。この町に住む高校生は、別の町にある高校に通う必要がありますが、鉄道利用で考えた場合、上り方面で一番近いのは、約70km先の音威子府駅近くにある、おといねっぷ美術工芸高校です。普通科のある高校で上り方面で一番近いのは、約100km先の美深駅近くにある、美深高校です。

 一方、下りで考えると、2つ隣で約16km先の豊富駅近くに、豊富高校があります。また、約57km先の南稚内駅の近くに、3つの高校が存在しています。加えて、幌延駅から道路で約19kmの距離の沿岸部には、天塩高校があります。ここなら、車、あるいは自転車でもなんとかならないこともありません。いずれにせよ、幌延駅から上り方面へ鉄道で通学するのは、あまり一般的ではないと考えられます。

 さて、ここで私は、何かがおかしいということに気がつき始めていました。手元にある旅程を参照すると、幌延を6:03に発車する始発の普通列車に乗車することになっているのに、その時刻が近づいても、一向に列車がやってくる気配がないんです。

 「始発といっても、幌延で夜間滞泊をしているわけではないようだし、どこかから回送でやってきて(実際には南稚内)、途中駅のように、1・2分程度で乗車を済ませるつもりなのかな」とも思いましたが、6:03を過ぎても、なお列車はやってきませんでした。

 そして私は、いよいよ予想もしなかった事実を知らされました。発車時刻表を見てみると、6:03発という列車はなく、代わりに、6:15発という列車が記載されていました[⑤]。そして、「お知らせ」と書かれたポスターに、6:03発の普通列車は、8月30日のダイヤ改正により、発車時刻が6:15に変更されるという旨が記されていました[⑥]。手元にある旅程表は、その変更を反映していません。ああ、大失態・・・。

 ・・・と言いたいところなんですが、ちょっと言い訳させてください。2014年7月4日に、JR北海道から、8月30日のダイヤ改正の要綱が発表されましたが、この要綱には、「(前略)その他、一部特急列車及び普通列車の時刻を見直します。」と記されています。特急列車の時刻変更と札幌圏の普通列車の変更については、具体的にどう変わるのかをはっきり掲載していますが、宗谷本線の普通列車については、「宗」の字も出てきません。

 そのため、私は「普通列車の変更は札幌圏のみで、宗谷本線の普通列車は、特に変更はないのだろう」と考えました。仮にあっても、それは1・2分程度の変更だろう、とも。少々の時刻変更であれば、言及なしで時刻を変更することもあるかもしれません。ただ、それが通じるのは、普通は1・2分程度だと思いますが・・・。10分や20分も時刻を変えておきながら、「その他」の3文字に押し込めて、要綱で一切触れないというのはひどくないですか。

 幸い、宗谷本線の普通列車の時刻変更は、駅での滞在時間の長短を左右することはあっても、今後の乗り継ぎにまでは影響を及ぼさないということが分かりました。乗り継ぎにまで影響を及ぼすような時刻変更を知らせてくれていなかったとなれば、さすがに許しがたいものがありましたが。

 南稚内方面から2両編成のキハ54形がやってきましたが、まずはここで解結作業を行います[⑦]。分割されたそれぞれの車両のうち、旭川寄りの車両が6:15発の旭川行きの普通列車に、稚内寄りの車両が6:30発の稚内行きの普通列車になるようでした[⑧]



















 6:15発の旭川行きの普通列車に乗車し、まずは問寒別へ向かいます[①]。この列車は、幌延〜名寄間を通過駅ありの普通列車として走り、名寄〜旭川間を快速なよろ号として走りますが、前面の方向幕には、既に「快 速」と表示されていました。宗谷北線運輸営業所配置のキハ54形には、「Sohya NORTH LINE」と書かれた特製のロゴシールが貼り付けられています[②]。 (注 宗谷北線とは、名寄〜稚内間のこと)

 誰もいない車内[③]。車端部にロングシートが置かれ、中央部に転換クロスシートが置かれるセミクロス仕様ですが、転換クロスシートは、0系の廃車発生品を使用しています[④]。もっとも、0系から直接転用されたものではなく、0系から快速海峡用の50系に転用され、そこから更にキハ54形に回されてきたものとされています。座席間の肘掛けはありませんが、通路側の肘掛けに内蔵されたテーブルは健在です[⑤]

 発車の直前に1人の男性が乗車してきて、その方と私の計2人という乗客数で幌延を発車しました[⑥]。便利な時代になったもので、九州だろうが北海道だろうが、東京を出たその日のうちに辿り着くことができますが、現地の早朝の列車・・・、例えば、このような幌延6:15発の列車に乗ろうと思ったら、現地に前泊しておく必要があります。そういう列車に乗ったとき、私は、旅をしているという感覚が強くなります。

 南幌延を通過します[⑦]。板張り・屋根なしのホームを持つ1面1線の駅で、文字通りの秘境駅です。運転上は普通列車である幌延〜名寄間にも通過駅のある4324Dでは、このようなあまりにも小さな駅は通過の対象です。転換クロスシートのキハ54形に乗車し、駅を通過する。2000年3月のダイヤ改正まで運転された最後の道内急行列車群のひとつ、急行礼文号を思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 6:30、雄信内に停車します[⑧]。抜海駅と似た造りの比較的大きめの木造駅舎を持つ駅で、4324Dも、ここは停車の対象としています。駅周辺に民家はほとんどありませんが、2人ほどの乗車があったほか、箒でホームを掃除している方(地元の人)がいました。雄信内駅の手前あたりから、進行方向右側の車窓には天塩川が現れ、クネクネと曲がりつつ、ついたり離れたりします。

 問寒別には6:39に到着。秘境駅というほどの駅ではありませんが、早朝ゆえ、辺りは物静か。旭川へ向けて発車するキハ54形が姿を消すと、そこにあるのは「北の大地の静かな朝」です[⑩]




























 問寒別駅にやってきました[①]。良くも悪くも、ここは秘境駅というほどの駅ではありません。1面1線の構造ですが、ホームはしっかりとしたコンクリート造りです[②]。駅舎は車掌車を転用したものですが[⑤]、駅周辺にはまとまった集落が構築されていて、学校・・・、問寒別小中学校もあります。民家すらもろくにないという駅ではないので、正直、「どうして車掌車改造の駅舎なのか」と思ってしまいます。

 駅で下車したら、駅舎の中の様子を探っておくのが筋というものですが、問寒別駅でそれをすることはできませんでした。というのも、このようなやけに大きい蛾が駅舎の扉に留まっていたからです[⑦]。このほか、バッタのようでバッタでない、謎の緑色の昆虫もいました。蜂などと違って、仮に飛んでも、こちらに危害を与えてくることはないでしょうが、こういう昆虫は好きではないので・・・。

 上述したように、問寒別駅の周辺には、比較的まとまった集落が構築されています。駅前も「人が住んでいる」という感じがあって、北海道の秘境駅によくある「まさに自分しかいない」という雰囲気ではありません[⑩]。実際、お話などはしませんでしたが、問寒別駅にいる間も、何人かの歩く人を見かけたほか、マイクロバス(どうも学校の送迎バスらしい)を運転してどこかへ向かう人も見かけました。

 正直なところ、別に問寒別駅に降りたいと思ってここに来たわけではないので、特にすることも考えることもありません。真の目的地は糠南駅なんですが、先ほど乗車した4324Dは、糠南を通過します。一方、この後問寒別を7:10に発車する下りの稚内行きは、糠南に停車します。結局のところ、問寒別にやってきたのは、その下りの普通列車を迎えに行って乗るためにすぎないということです。

 残念ながら、問寒別駅は、中途半端に町ができているので、あまり面白くないんですよね[⑬]。秘境駅のように「何もない」という環境であるか、町らしく人通りも車通りもあるという環境である(まあ早朝というのも悪いんですが)か、そのどちらかであればいいんですが、どっちつかずの環境にあるような気がします。駅舎の中を探索できるなら、まだ時間の潰しようもあるんですが、それができないので、どう時間を潰せば良いのやらと・・・。

 歩道の一角に花壇がありました[⑮]。殊に「物体」という点においては、きれいなものを嫌いだという人はいません(人間はまた別の話です)。私も、花に関する知識はこれっぽっちもありませんが、こういうきれいな花を眺めるのは好きですよ[⑯]

 花壇は、問寒別駅のホームにもありました[⑰]。黄色、橙色、赤色、紫色・・・。風雨で色とりどりにたくましく成長していくのが花ならば、風雨で朽ちていくのが駅舎です。問寒別駅のホーム上において、そんな対比が展開されています[⑱]。きれいな花壇が維持され、そして誰もがきれいだと認める駅舎が誕生したときこそ、問寒別駅は、人々を気持ちよく送り迎えできる駅になります。


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