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キハ56系



















 キハ58系の北海道版と言える車両がキハ56系です。小樽市総合博物館には、3両のキハ56系が保存・展示されています。3両それぞれ状態が異なっていて、3両目の車両はクリーム色と朱色も鮮やかな比較的綺麗な状態[②]、2両目の車両は今まさに修繕中で塗装の被膜を一部剥がした状態、端っこの1両目の車両は塗装も色褪せた残念な状態でした[③]

 今まさに修繕中の2両目は、グリーン車のキロ26-107です[④]。キロ26は三笠鉄道記念館にもありますが、あちらにある車両とは違い、こちらは車内に入ることができます。端っこの1両目はキハ56-23で、風雨にさらされたことによる劣化が著しく進んでいることが分かります[⑤]。今は修繕の順番待ちというところでしょうから、そのうち綺麗になるのでしょう。急行型気動車らしく、種別幕には、「急行」を表示しています[⑥]

 普通車の車内[⑧]。デッキを備え、車内の端までクロスシートをずらりと並べたその様は、まさに急行型車両です。急行列車に運用される車両ではありましたが、北海道という土地の気候、そして普通車ということもあって、冷房化はされませんでした。天井の扇風機がそのことを物語っています。また、キハ56系の普通車は床が板張りとなっていることが特徴のひとつで、一瞬、旧型客車ではないかと錯覚してしまいます。

 手入れという手入れはしていないようで、座席はおおむね汚いです。しかし、一部の座席の座面は、まるで新製ほやほやの車両のように、鮮やかで綺麗なものになっています[⑨]。なんですか、このアンバランスさは(笑) 理由は不明ですが、穴が開くなど、あまりにもひどい状態になってしまったものだけ、特別に座面ごと取り換えたのかな・・・と予想します。

 キハ56系の普通車には、S席なる謎の座席が存在しています[⑩]。普通はABCDですから、Sというのは見慣れないものです。S席は、最もデッキ寄りにある向かい合わせにならない座席に割り当てられています[⑪]。で、結局どういう座席なのかというと、S席は、戸袋の横に設置されている関係で、他の座席よりも幅が狭くなっています。そのため、専ら調整席として運用されたらしく、それゆえに特別な座席として扱われていたようです。

 グリーン車のキロ26の車内には、ワインレッドのリクライニングシートが並んでいます[⑫]。キロ26はグリーン車ということだけあって、初期の車両は非冷房だったものの、それらは後に冷房化がなされ、後期の車両は最初から冷房を搭載して新製されました。また、床面は普通車とは異なり、普通のリノリウム張りとなっています。車内には何やらモニターが設置されており、映像が流せるようになっているようです。

 座面や背もたれの形状、座席の色合い、背もたれの絶妙な角度の付き方など、このグリーン車の座席には、一種の美しささえ感じます[⑬]。ほぼ同型の座席が、はまかぜ号に運用されていたキハ181系に残存していました。肘掛けの脇から引き上げて展開する小型テーブル、背もたれ裏の大きな網ポケット[⑭]、深いリクライニング角度[⑮]、やや小振りな足置き[⑯]など、国鉄型車両のグリーン車ならではの特徴がよく見られます。

 展示されている車両は、便所など、一部入れないように封鎖されているところがありますが、キハ56系の便所の扉にはロックがかけられておらず、内部を見ることができました[⑰]。そして、私はこの便所を見た瞬間、すぐにあることに気がつきました。この便所にある和式便器、鉄道車両では非常に珍しい陶器製となっています[⑱]。また、白さのある綺麗なトイレットペーパーが残っています。

 便所の向かいには洗面所があります[⑳]。蛇口を捻って水を出すという方式ではなく、「洗面器の上にあるボタンを押すと、5〜6秒後に水が出る」という、これまた他の鉄道車両ではまず見ない水の出し方になっています。何かと謎の多い便器・洗面所です。









ED75形

キハ22形


キシ80

C12形
DD51形
その他






 屋外の車両展示場の敷地内を、小さな蒸気機関車とその客車が走ります[①]。子供騙しなレプリカの蒸気機関車なのかと言えばそうではなく、アイアンホース号と名付けられているこの蒸気機関車は、1909年製造の本物の蒸気機関車です。1993年に、アメリカのとあるテーマパークからこの小樽の地へやってきました。日本ではまずお目にかかれない914mm軌間の車両です。

 ED75形唯一の500番代車にして北海道仕様車のED75-501。たった1両しか製造されませんでしたが、その唯一の1両が、ここ小樽で保存されています[③]。表面の修繕を施さないままに再塗装し続けたのか、ややでこぼこしているように見えますが、退色などは見られず、交流専用機を示す赤色2号の濃さがしっかりと出ています。登場時は菱形のパンタグラフでしたが、後に下枠交差式のものに換装されました[④]

 キハ22形は、キハ20系に属する車両で、北海道向けに耐寒耐雪能力を向上させた1エンジン車です[⑥]。この仲間であるキハ52形が、つい数年前まで大糸線や米坂線で運用されていたことは、記憶に新しいところでしょうか。キハ56系の普通車と同様に床面は板張りで、一般型気動車に分類される車両のため、車端部はロングシートとなり、つり革も設けられています[⑦]。ただし、急行列車での使用実績もあります。

 キハ22形の横には、キシ80が連結されています[⑨]。キシ80はもう1両あるわけですから、ここ小樽には、都合2両のキシ80が保存されていることになります。これぞ食堂車!と思わせる、高い位置に設けられた窓など、外観はキシ80のそれをよく保っています[⑩]。しかし、もう1両のキシ80と同様、こちらも厨房などが撤去された残念な状態となっています。また、こちらのキシ80は、車内に入ることはできません。

 このほか、C12形[⑫]、DD51形[⑭]、ラッセル車[⑯]など、様々な車両が保存・展示されています。また、「蒸気機関車資料館」なるものも開設されています[⑱]。屋外の車両展示場は、各車両を細かく真剣に見学し、蒸気機関車資料館にも立ち寄っていけば、見終わるまでには、かなりの時間がかかるのではないかと思います。見ごたえ十分の車両展示場です。






























 屋外の車両展示場が売りの小樽市総合博物館ですが、「総合博物館」ですから、何も鉄道のことだけを取り扱っているわけではありません。科学展示室という部屋があったり[⑥]、企画展示室でバイオミメティクスの世界を紹介したりと[⑧]、一般科学のことも取り扱っています。・・・が、いやー、誰もいねーなーと・・・(笑) 結局、鉄道好きの人が集まってくるので、こういうのはあまり関心を持たれないんですかね(私もですけど)。

 館内では、鉄道を建設中の様子を再現した模型が展示されているほか[⑨]、蒸気機関車のナンバープレート[⑩]、愛称や種別を記したサボの展示などがされています[⑪]。しかし、「ものを見学する」ための気力と体力を既に使い果たしていたことと、この博物館を訪れた目的が屋外の車両展示場の見学にあったため、館内の各種展示は真面目に見学する気になれませんでした。目を通す、という程度にとどまりました。

 バスに乗車し、小樽駅に戻ってきました[⑬]。小樽駅の駅舎と上野駅の駅舎は瓜二つの外観をしていますが、それは気のせいではありません。1903年に開業した小樽駅の駅舎は、1883年に開業した上野駅の駅舎を意図的に模倣して造り上げられました。関東圏の人間としては、この小樽駅の駅舎を見ると、つい上野駅の駅舎が思い浮かんでしまい、「ふるさと」(別にそうでもないんですが)への郷愁が生まれます。

 戻りも快速エアポート号を利用します[⑯]。17:04発の快速エアポート174号。バスの到着時刻からいくと、これが一番待ち時間の少ない列車でしたが、そうでないとしても、私は、エアポート号を待ってuシートを利用したいと思います。それくらい、私はエアポート号のuシートを気に入っています(もちろん、移動空間としての快適性だけでなく、札幌まで約32分というその足の速さも、高評価の理由のひとつです)。

 今日のエアポート174号は、新型の733系3000番代での運転でした[⑰]。エアポート号に733系が導入されるという話は聞いていたので、「どうせなら733系のエアポートに乗りたい」と思っていました。先ほど札幌〜小樽間で乗車したエアポート121号は721系だったので、ちょっとがっかりしていたところだったんですが、ここで733系のものに乗ることができて良かったです。

 行き先表示機はフルカラーLED[⑱]。さすが新型車両と言うべきか、ステンレス製の車体は、まだぎらぎらとした輝きを持っていました[⑲]。乗降扉は片開きですが、約1150mmの開口幅となっていて、防寒性と乗降性の両立が図られています[⑳]


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