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 さて、いよいよヌプリ号に乗車します。改めてご案内しておきますが、ヌプリ号は、札幌〜函館間を山線経由で走る臨時特急列車です。皆さんもご存知のように、函館本線の山線区間である長万部〜小樽間は、現在は普通列車と快速列車のみが運転されていて、定期の優等列車は設定されていません。ヌプリ号(とその返しのワッカ号)は、その山線を走る特急列車という、鉄道好きには見逃せない列車です。

 使用車両のキハ183系ニセコエクスプレスが札幌駅の2番線に入線してきます[②]。ヌプリ号・ワッカ号は、一般型のキハ183系で運転されたこともありますが、2014年の夏季は、ジョイフルトレイン・ニセコエクスプレスでの運転となりました。一般型のキハ183系であれば、かつての特急北海号に近い旅を楽しめるのではないかと思う一方、定期列車では乗ることができないニセコエクスプレスに初乗車できるという喜びもあります。

 JR北海道の他のジョイフルトレイン・・・、クリスタルエクスプレスとノースレインボーエクスプレスが二階建て車両や個室、ラウンジ、ハイデッカー車両などを備えていることを考えると、全車平屋・全車普通座席車のニセコエクスプレスは、かなり地味な存在に思われます。しかし、そこは腐ってもジョイフルトレイン。座席番号の工夫した表示の仕方[③]や座席の肘掛け部のオーディオパネルに、ジョイフルトレインらしさを感じます[④]

 座席背面のテーブルにも特徴があります。何やらやけに低い位置にあり、背もたれ裏側の上部に妙なスペースを作っている[⑥]背面テーブルですが、押さえを外してもテーブルが展開されません[⑦]。ニセコエクスプレスの背面テーブルは、この状態からテーブルを斜め上に引き上げることによって展開されるという、とても謎めいた仕様になっています[⑧]。が、このようにすることでどういう利点があるというのでしょうか・・・。

 7:57に札幌を発車した列車は、函館本線を小樽方面に向かって進んでいきます。「山線経由」であることがヌプリ号の最大の特徴ですが、札幌〜小樽間にしても、定期の優等列車の設定はありません。山線に入る前の段階、札幌を発車して琴似や手稲といった駅を通過している段階で、既に特別な旅が始まっています。札幌を発車してしばらくすると、記念の乗車証明書が配布されました[⑪] [⑫]

 札幌運転所に3両編成の711系がいました[⑬]。今回の旅では、結局711系に乗ることはできませんでした(明日も含め、結局1度も乗れず)。次回北海道を訪れるころには、711系は全廃されていることでしょう。しかし、1968年登場の車両ということを考えれば、ここまでよく持ったと思います。

 銭函を通過すると、海岸線沿いの区間に入ります[⑭]。この区間を特急列車で通過するというのも、普段は体験することのできない、貴重な体験です。また、札幌〜小樽間の途中停車駅は小樽築港のみであり、定期列車が全て停車する手稲や南小樽は通過します。これもまた、普段は体験することのできないことです。臨時列車なのであまりスピードは出ませんが、特急列車らしく、停車駅は絞り込まれています。

 南小樽駅で721系とすれ違います[⑰]。そして列車は8:40に小樽に到着します[⑱]。かつての特急北海号は、札幌〜小樽間は無停車でした。


























 小樽を出ると、いよいよ山線区間に入ります。今回、札幌〜長万部間でヌプリ号に乗車しますが、山線区間を含む区間で乗車することに大きな意味があります。なんと言っても、「定期の優等列車がない区間」ですからね。私はそういう世代ではありませんが、山線区間を走る特急列車というものに、かつての特急北海号を重ね合わせる方も多いのではないでしょうか。車両は当時とはちょっと違いますが・・・。

 小樽を出て最初に通過する駅は塩谷です[③]。小樽〜長万部間の山線区間は、定期の優等列車の設定がないだけでなく、「通過駅がある定期列車」の設定もありません。山線区間で駅を通過するという体験に、一種の新鮮さを感じます。しかし、山線区間はもとより線形が悪く、また高速化工事などもされていないため、平均的にスピードが出ないほか、駅を通過するときは、ヨタヨタと分岐器を通過してゆっくりと通過していきます。

 塩谷の隣の蘭島で運転停車。下りの小樽行きの普通列車の到着を待ち、列車交換を行います[④]。特急列車と言っても、ヌプリ号は定期列車の合間を縫って走る臨時列車であり、また山線経由という”お遊び列車”だからか、特急列車であるヌプリ号が普通列車を待つというひどい扱いです。こちらは”特別急行”ですから、定期列車と言えども、普通列車側がダイヤ変更をしてでも待ってくれるぐらいでないと・・・と思うんですが。

 9:05、小樽を出てから最初の停車駅、余市に到着します[⑤]。余市は、かつての特急北海号も停車駅としていました。発車時刻は9:20であり、15分の停車時間が設けられています。それだけの停車時間があるので、もちろんいったんホームに降りますが、ホームでは、「歓 迎 特急ヌプリ・ワッカ号」と書かれた看板[⑧]と、余市町のご当地キャラ「ソーラン武士」に出迎えられました[⑨]

 ニセコエクスプレスには、行き先表示機やサボ受けがありません。そのため、列車名や座席種別は、乗降扉の窓に貼られたシールによって案内されています[⑩]。このようにせざるを得ないというのは理解しますが、そうするのであれば、シールは丁寧に貼っていただきたかったですね。シールの粘着部に入り込んで泡になった空気が見えてしまっています。

 この車両は、ある「JR初」を持っています。それはいったい何でしょうか。ニセコエクスプレスが持つ「JR初」とは、「JR初のプラグドア採用車両」ということです[⑪]。ニセコエクスプレスでは、外吊り式のプラグドアが採用され、冬季の着雪による扉開閉のトラブルの可能性を軽減させるとともに、戸袋を廃止することに成功しています[⑫]

 背面テーブルの引き出し方が特徴的なニセコエクスプレスですが、新たな特徴を発見しました。それは、車両間の貫通扉がボタンによって開くものということです[⑮]。このボタンを押すと貫通扉が開くというわけですが・・・、反対側の車両の貫通扉もボタンの押下に連動して開くのかと思えばそうではなく、反対側のものは、なぜか普通の人感センサーで開くようになっています。

 そのため、渡り板の上で一瞬待たされる時間があり、歩きながらボタンを押したり、ボタンを押してすぐに反対側の車両へ移動しようとしたりすると、反対側の車両の貫通扉に激突する羽目になります。特徴的な背面テーブルの引き出し方にしてもそうですが、意欲的で独創的なことはたしかであるものの、さりとてその利点と目的が見えてきません・・・。

 ホームでは、地元産品を販売する出店が営業し、余市名物のりんごを使用したアップルパイやチョコレートなどの販売を行っていました。そこで、とりあえずチョコレートとグミを購入してみました[⑰]。グミはともかくとして、チョコレートはりんごゼリーが入っており、なかなかおいしかったです。

























 通過駅となっている小沢で運転停車します[①]。特急北海号の停車駅ではありませんでしたが、急行ニセコ号などの停車駅でした。また、かつては小沢〜岩内間を結ぶ岩内線が接続し、岩内〜小沢〜札幌間には、急行らいでん号が運転されていました。今となっては、山線区間の小さな駅というところですが、木造で重厚な跨線橋(開業時から使用?)が、往年の主要駅としての威光を放ちます[②]

 キハ40形の普通列車の到着を待ち、小沢を発車します[③]。普通列車を待たされることにしても、必ずしも必要ではない長時間停車をすることにしても、どうも「特急」にふさわしくないような運転をしていることは否めません。本来ならば快速以下がふさわしいところだとは思いますが・・・、特急料金を徴収して収益を上げたいJR北海道の気持ちも分からなくもないです。それならば、今こそ「急行」という種別の出番ではないでしょうか?

 倶知安駅に向かっているとき、乗客にアンケート用紙が配られました[④]。JR北海道では、北海道新幹線の新函館北斗開業を見据え、函館本線の山線の観光ルートとしての開発を進めようとしています。ヌプリ号もその一環として運転されているものであり、このアンケート用紙に書いた回答は、北海道新幹線開業後に運転される(かもしれない)山線経由の特急を形作る材料になるのかもしれません。

 倶知安に10:05に到着します[⑤]。今日のヌプリ号は倶知安から乗車した人もいました。運転日が限定される臨時列車ではありますが、そういう需要がどれだけあるかは置いておいて、倶知安から乗り換えなしで函館まで行ける列車は、ヌプリ号への乗車が目的の場合のみならず、一般的な観光・仕事での利用時にも便利ですね。下りの札幌行きのワッカ号もまた然りです。

 倶知安で地元のガイドの方が乗車し、黒松内まで各種観光放送を行います。クイズの時間があり、その中の問題で、「羊蹄山の別名は?」という問題が出ましたが、そこで出された選択肢は「ニセコ富士」「蝦夷富士」「北の富士」。北の富士の選択肢が読み上げられたとき、車内に笑いが起こったのは言うまでもありません(笑) せっかくなので千代の富士も加えてもらいたかったところですが。

 尻別川を横目に見つつ[⑥]、10:20、列車はニセコ駅に到着しました[⑦]。発車時刻は10:38で、余市駅と同様に長めの停車時間がとられるとともに、地元産品の販売が行われます。そこで買い物をする人も結構いましたね。

 ニセコ駅は、国鉄・JRの駅として初めてカタカナのみの駅名が名付けられた駅です。1968年に狩太から改称されてニセコとなりました。通常、駅名標には、「漢字書きの駅名とひらがなの読み仮名」が書かれますが、ニセコ駅の場合、「ひらがなの読み仮名」にあたる部分もカタカナです[⑧]。ひらがなで「にせこ」とはならないんですね。

 自由席の3号車には、「ヌプリシート」と名付けられた記念撮影用の座席が設置されています[⑫] [⑬] [⑭] [⑮]。羊蹄山と駒ヶ岳に生息する動物がモチーフとなっています。もともとの座席にカバーとしてかけるだけという 手抜きな ものであることはそっとしておきましょう。


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