食堂車のモーニングタイムは6:30から始まります。「満席ですのでしばらくお待ちいただきます」などという憂き目には遭いたくありませんから、私としては、6:30よりも前に食堂車で待機していようと思っていたんですが・・・、ですが・・・。ある事情から、食堂車へ行くための身支度を開始するのが遅くなりすぎて、結局、食堂車に到着したのは、6:40ごろでした。
通路に並ぶ順番待ちと思われる人の列。はい、間に合いませんでした。食堂車は既に満席であり、通路で待ってもらうとのことでした。私としては、待つこと自体はさほど苦でもありませんが、今回は8:00からシャワーを浴びることになっています。食堂車の回転が遅すぎて、朝食を食べるのが遅くなり、シャワーを浴びられなくなってしまったら・・・。それだけが心配です。
3号車の通路で順番待ちをします[①]。食堂車での順番待ちは、今回カシオペア号で過ごした時間の中で、最も無為でむなしい時間でした。一方、その間も、列車は上野へ向かって南下を続けます。仙台、福島、郡山、宇都宮、大宮、上野という限られた停車駅。小さな駅はどんどん通過します。食堂車の通路の船底部分は、1階部分(階下)に相当する低さであり、駅通過時には、ホームがすぐ目の前に迫り来ます[②]。
待つこと約25分、ようやく食堂車に入れてもらえました。「おひとり様ですか」 はい、ひとりですよ。食堂車の従業員からの視線はともかく、食堂車で朝食を摂っている他の乗客からの視線は、私を奇異の目で見ているようにしか思えず、辛いというより、やり場のない気恥ずかしさを感じました。
食堂車のモーニングタイムでは、和朝食か洋朝食のどちらかを選択します[③]。値段はどちらも同じなので、なかなか悩まされるところですが、「そういえば、この列車の名前はカシオペアとかいう横文字だし」というくだらない理由で、「洋には洋を」と、洋朝食を選択しました。
並走する東北新幹線の高架橋を、上りの新幹線が通過していきました[④]。まだとても200km/hには乗っていないようなゆっくりとした速さでしたが、加速を続け、カシオペア号を追い抜いて行ってしまいました。しかし、そんなことを気にする人は誰もいません。カシオペア号に速さを求める人は誰もいません。カシオペア号に乗る人は、その誰しもが、こののんびりとした旅路を求めてここにやってきたんですから。
コーヒー以外のものが揃いました[⑥]。本当はのんびり、ゆっくりと食べて、朝の食堂車の優雅な時間を楽しみたかったんですが、私の後ろにも食堂車の順番待ちをしていた人たちがいたことを思うと、あまり長居はできないなと思い、食事は手短に済ませました。厚切りロースハムは本当に厚みがあり、歯応えも十分。洋朝食で出てくる料理の中でも、特に評価したい一品です。
透明な窓ガラスを隔てて、その外と内では、全く違う時間が流れています[⑨]。外は「雨になってしまったせっかくの日曜日」。内は「豪華寝台列車で過ごす朝のひととき」。外がどうなっていようとも、カシオペア号の世界はカシオペア号の世界です。この優雅で特別な時間が流れる「食堂車」の世界は、外界のいかなるものも邪魔することはできない、神聖な空間です。
食後にやってきたホットコーヒー[⑩]。まさに淹れたてという熱さで、飲めるくらいの熱さになるまでには、少し時間がかかります。私は、ホットコーヒーやアイスコーヒーには、砂糖やシロップは入れず、クリームだけを入れます。これを個人的に「男の飲み方」と定めています(笑)
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