●9月7日●
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−Day:8 旅路にさよなら−

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 盛岡駅の発車を見届けて寝床に就いた私。ふと目が覚めると、空はうっすらと白み始めていて、列車は、高層建築が目につく、やけに都会めいたところを走っていました[①]。時計が指していた時刻は4:40前。列車は本州に入ってから最初の停車駅、仙台を発車したところのようです。

 食堂車で朝食を食べなければなりませんが、モーニングタイムの開始は6:30です。起床するにはさすがに早すぎるので、ここで二度寝。そして次に目が覚めたのは、5:36着の福島でした[②]。1時間ほどの時間が経過したことで、外はだいぶ明るくなってきていました。

 福島駅のホームが濡れているな・・・と思いましたが、窓を見てみると、窓にも雨粒がついていました[③]。どうやら、今日は天気が良くないようですね。快晴の天気で爽やかな目覚めを迎えるのは魅力的ですが、しかし個人的には、しとしとと雨が降る天気で「気だるさ」をもって目覚めるのも悪くないと思っています。なんとも言えぬ倦怠感というのは、夜行列車の必須品であるとも思います。

 雨はやむこともなく降り続け、窓がすっかり雨粒だらけになってしまいました[④]。雨という天気で気分が明るくなる人はまずいないでしょうが、カシオペア号の車内は例外です。乗客の人たちは、昨日から変わりない明るさと陽気さを保ち続け、雨という天気を気にすることなく、カシオペア号での旅を楽しみ続けているようでした。雨の日の通勤電車の中に流れるような暗さは、ここには一切ありません。



















 食堂車のモーニングタイムは6:30から始まります。「満席ですのでしばらくお待ちいただきます」などという憂き目には遭いたくありませんから、私としては、6:30よりも前に食堂車で待機していようと思っていたんですが・・・、ですが・・・。ある事情から、食堂車へ行くための身支度を開始するのが遅くなりすぎて、結局、食堂車に到着したのは、6:40ごろでした。

 通路に並ぶ順番待ちと思われる人の列。はい、間に合いませんでした。食堂車は既に満席であり、通路で待ってもらうとのことでした。私としては、待つこと自体はさほど苦でもありませんが、今回は8:00からシャワーを浴びることになっています。食堂車の回転が遅すぎて、朝食を食べるのが遅くなり、シャワーを浴びられなくなってしまったら・・・。それだけが心配です。

 3号車の通路で順番待ちをします[①]。食堂車での順番待ちは、今回カシオペア号で過ごした時間の中で、最も無為でむなしい時間でした。一方、その間も、列車は上野へ向かって南下を続けます。仙台、福島、郡山、宇都宮、大宮、上野という限られた停車駅。小さな駅はどんどん通過します。食堂車の通路の船底部分は、1階部分(階下)に相当する低さであり、駅通過時には、ホームがすぐ目の前に迫り来ます[②]

 待つこと約25分、ようやく食堂車に入れてもらえました。「おひとり様ですか」 はい、ひとりですよ。食堂車の従業員からの視線はともかく、食堂車で朝食を摂っている他の乗客からの視線は、私を奇異の目で見ているようにしか思えず、辛いというより、やり場のない気恥ずかしさを感じました。

 食堂車のモーニングタイムでは、和朝食か洋朝食のどちらかを選択します[③]。値段はどちらも同じなので、なかなか悩まされるところですが、「そういえば、この列車の名前はカシオペアとかいう横文字だし」というくだらない理由で、「洋には洋を」と、洋朝食を選択しました。

 並走する東北新幹線の高架橋を、上りの新幹線が通過していきました[④]。まだとても200km/hには乗っていないようなゆっくりとした速さでしたが、加速を続け、カシオペア号を追い抜いて行ってしまいました。しかし、そんなことを気にする人は誰もいません。カシオペア号に速さを求める人は誰もいません。カシオペア号に乗る人は、その誰しもが、こののんびりとした旅路を求めてここにやってきたんですから。

 コーヒー以外のものが揃いました[⑥]。本当はのんびり、ゆっくりと食べて、朝の食堂車の優雅な時間を楽しみたかったんですが、私の後ろにも食堂車の順番待ちをしていた人たちがいたことを思うと、あまり長居はできないなと思い、食事は手短に済ませました。厚切りロースハムは本当に厚みがあり、歯応えも十分。洋朝食で出てくる料理の中でも、特に評価したい一品です。

 透明な窓ガラスを隔てて、その外と内では、全く違う時間が流れています[⑨]。外は「雨になってしまったせっかくの日曜日」。内は「豪華寝台列車で過ごす朝のひととき」。外がどうなっていようとも、カシオペア号の世界はカシオペア号の世界です。この優雅で特別な時間が流れる「食堂車」の世界は、外界のいかなるものも邪魔することはできない、神聖な空間です。

 食後にやってきたホットコーヒー[⑩]。まさに淹れたてという熱さで、飲めるくらいの熱さになるまでには、少し時間がかかります。私は、ホットコーヒーやアイスコーヒーには、砂糖やシロップは入れず、クリームだけを入れます。これを個人的に「男の飲み方」と定めています(笑)















 会計を済ませ、自分の部屋に戻ってきました。もう眠るつもりはないので、ベッドを解体し、ソファーに戻します[①]。ベッドにする際に行った組み換えを逆の手順で行うだけなので、ソファーへの組み換えは、実に簡単に行えます。

 このソファーに座りながら、車窓を眺めつつウーロン茶を飲みます[③]。このウーロン茶は、昨日ウェルカムドリンクと一緒に貰った「モーニングドリンクチケット」との引き換えで、12号車の売店で入手したものです。ただ、紙パックに入った市販のウーロン茶を注ぐ光景は、ちょっとがっかりでしたね。あの場面は見ない方が良かったですねぇ、「豪華寝台列車」の夢が壊れてしまいますから・・・(笑)

 食堂車から自室に戻ってきたとき、部屋の扉のドアノブに、ビニール袋に入れられた新聞紙が掛けられていました[④]。カシオペア号では、全部屋に朝刊の無料配布のサービスが行われます。下り列車では北海道新聞、上り列車では読売新聞となります。

 ・・・で、この新聞を読んでみたとき、「何か違和感を感じるな」と思ったら、福島版でした。上りのカシオペア号で配布される読売新聞は、どうやら福島で積み込まれるようですね。そうだとは思わずに読み始めたので、「なんかやけに福島って字が目につくな」「どうしてテレビ欄が福島のテレビ局ばかりなんだろうか」と、純粋に疑問に思ってしまいました。

 7:50、列車は宇都宮に到着しました[⑤]。もうこんなところまで来てしまったのか、という感じです。上野到着は9:25ですから、乗車時間は、あと1時間30分もありません。下車駅の上野がだんだんと近づいてきています。


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