博物館などでの車両展示にありがちな「その形式を最も代表できる車両として、先頭車を1両だけ保存する」というやり方ではなく、中間車も含めた6両編成で展示されていることが、クロフォード公園のキハ80系の何よりの魅力です。その結果、貴重なキロ80形グリーン車が、形式の代表性が低い中間車両でありながら、こうしてクロフォード公園という安住の地を得ることができました[①]。
車体の状態は、屋外展示の割には比較的良好で、凹凸も少ないように思いますが・・・、そんな中、何かが飛び出しているのを発見しました[②]。恐らく、非常用の脱出扉ではないかと思いますが、下部が浮き上がってしまっています。屋外に十何年も置いていたら、どうしてもこうなってしまうものなのかもしれません(と、ここまで書いて、「非常扉ってもともとこんなものじゃないか?」という気がしてきました。ご存知の方、ご教授ください)。
クロフォード公園のキハ80系は、編成での保存となっていますから、当然、公園の入り口側の反対側に、もう1両の先頭車があります。車両の脇を通って行き、そちらの様子を見てみましょう。
公園の入り口側とは反対側・・・、つまり、ちょっと人目には付きにくいところにある・・・がためにそうなっているわけではないと思いますが、公園の入り口側にある先頭車と比べると、やや状態が悪いです[③]。正面右上にある前照灯の右ライトは完全に失われていて、ただの穴になってしまっています[④]。左上のものの左ライトも、ガラス部分が消失しています。尾灯は、左右両側とも破損し、失われています[⑤]。
この破損ぶりを見るに、どうも、人的ないたずらがあったのではないかと疑いたくなってしまうんですが・・・、どうなんでしょうか。クロフォード公園は夜間でも出入りができるので、人がいなくなった夜間に何者かがいたずらをした可能性も、なくはないと思いますが。それこそ、いつ落書きなどが行われてもおかしくないような気がします。なお、先頭車の貫通扉は、過去に盗難の被害に遭ったことがあります。
丘の斜面からキハ80系を眺めてみます。食堂車キシ80の独特の窓配置や業務用扉は健在で、窓越しには、厨房の壁も見えます[⑥]。グリーン車キロ80も、小窓を連続させた特徴的な外見がそのままで、窓1枚ごとに整然と並ぶ、グリーン車の赤い座席も見えます[⑦]。線路に乗り、青空の下、編成を微妙にうねらせた状態を見せるキハ80系は、こうして見ると、本当に現役として走っているのではないかと錯覚してしまいます[⑨]。
そうなると、見ている側としては当然、車内に立ち入って見学をしたい・・・という思いが湧いてきますが、残念ながら、普段は車内の公開は行っていません。以前は、公園の入り口側の2両に入ることができたようですが、窃盗などをはたらく不届き者が出没したので、車内の公開は中止となったようです。キシ80とキロ80については、私自身、特に見学してみたいと思っているんですが・・・。
このように、クロフォード公園には、キハ80系をはじめする実物の鉄道車両が何両か展示されていますが、三笠市の所有物というわけではないようです[⑫]。「JR北海道から貸与された」ということは、所有権は、今でもJR北海道が持っているということですよね。静態保存されている蒸気機関車を復活させ、動態保存するというのはよくあることですが、JR北海道には、ここは1つ、3両くらいで構わないので、キハ80系の復活を・・・と。
クロフォード公園は、旧幌内線の三笠駅の跡地を利用した施設なので、その起源もあってか、ホーム(のようなもの)が整備されていて、DD51形や貨車などは、ホーム上から見学することができます[⑬]。なるほど、この視点で見てみると、三笠駅に停車している貨物列車に見えないこともありません。三笠駅の跨線橋を忠実に再現した跨線橋もあり、なかなかそれらしい雰囲気ができています。
実のところ、私がこのクロフォード公園を訪れたのは、キハ80系に会うことが最大にして唯一の目的であり、それが達成できればよし、という姿勢でいました。そんなわけで、キハ80系以外の車両・・・、DD51形や貨車、ホッパ車、車掌車などはちらっとだけ見て、1枚ずつくらい写真を撮るだけにしました。別に時間がなかったわけではありませんが、もはや真面目に観察する気も起きなかったので。
クロフォード公園の入り口(管理棟)は、旧三笠駅の前身である、旧幌内太駅の駅舎を再現したものとなっています[⑱]。ここから入り、改札口(というか扉)を抜け、跨線橋を渡ってホームに降りると、そこにはDD51形が牽引する貨物列車が・・・という流れで辿るようにすると、かつての幌内線の光景が思い出されるかもしれません(平成生まれが何言ってんだかって感じですが)。
クロフォード公園の見学はこれで終了です。しかし、もう1つ、訪れておきたい鉄道施設があります。バスでそちらへ向かいましょう[⑳]。
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