Page:6
※各画像はクリックすると拡大します。























 では改めて、三笠鉄道記念館へ入りましょう[①]。入館料金は530円とされていますが、これは資料館への入場の際にだけ必要になるものであり、屋外に展示されている車両は、無料で見学することができます。

 敷地へ入ろうとするなり、踏切の警報機が作動しだしたので[②] [③]、「蒸気機関車でも通過するのかな」と思ってその場に立ち止まりましたが、結局、何も通過しませんでした。どういうことだろうかと思っていると、「押ボタンを押すと〜10秒間作動します。」と書かれたプレートがあるのを発見しました[④]。ああなるほど、見学者が自分で鳴動させられる踏切だったんですね。子供にはウケるようで、何度も何度もボタンが押されていました。

 写真ででさえ見たことのないような謎の塗装をまとった車両が、敷地内の線路上に鎮座していました[⑤]。しかも、車両番号を見てみると、ステンレスの切り抜き文字で「キシ80-31」とはっきりと記されています[⑥]。クリーム色と赤色による正統派の国鉄色でない、全く見覚えのない謎の塗装をまとったこの車両がキハ80系の食堂車だとは、にわかには信じがたいんですが・・・。

 ただ、食堂車ならではの厨房の二段窓[⑦]や、食材の搬出入用の業務用扉[⑧](閉塞されたようですが)がある上に、製造から年月の経過した鉄道車両らしい車体の劣化が見られ、決して、キハ80系の食堂車に似せた実物大模型などではないということが分かります。

 ・・・で、結局、これは何なのかというと、まさしく本物のキシ80-31です。そして三笠鉄道記念館では、土曜・日曜・祝日などに、このキシ80-31を、レストラン(食堂車)として営業しているんです[⑨]。本物の食堂車で昼食が食べられる・・・、動きはしませんが、鉄道ファンからしたら、これほど食指が動かされるものもなかなかありません。
 なお、以前は、車体の側面に「THE 3-TRAINS」というレタリングを入れていました。現在は消されていますが、その跡が残っています[⑩]

 三笠鉄道記念館自体は、月曜日が休館日で、月曜日以外は毎日開館(冬季閉鎖期間あり)しますが、この「食堂車」は、土曜・日曜・祝日・イベント開催日しか営業しません。これが、私を大きく悩ませることとなりました。

 三笠鉄道記念館を訪れるだけであれば、月曜日を避ければよいだけなので、何の問題にもなりません。しかし、せっかくはるばる茨城から向かうわけですから、どうせなら、土曜か日曜に訪れて、キシ80-31で昼食を食べたい。ただ、そうすると、三笠鉄道記念館を訪れる日は、自然と土曜日か日曜日に限定される・・・。旅程を組んでいくにあたっては、このことが大きな問題となりました。

 ここを訪れる日は、土曜か日曜しか選択肢がありません。その結果、旅程の構築は、「三笠鉄道記念館を土曜か日曜に訪れ、キシ80-31で昼食を食べる」ということを絶対的な前提として行わざるを得なくなりました。それを気にしなくて良いのであれば、もっと楽に旅程を決定できたのではないかと思いますが、「前提条件を守りつつ、いかに優れた旅程を構築するか」という命題の解決に、頭をフル回転させ、とにかく腐心しました。

 しかし、食堂車の営業開始は11:00〜です。時刻はただいま10:30。まだ開店していないので、屋外の展示車両を見て回ることにしましょう。

 三笠鉄道記念館では、動態保存をしている蒸気機関車の列車に乗ることができます[⑬]。1人300円で、2両連結された緑色のオープンデッキ型客車に乗車するようです[⑭]。三笠鉄道記念館で動態保存されている蒸気機関車というのは、工場・専用線向けに造られたS-304形[⑮]というもので、残念ながら、国鉄線上を走っていた有名な蒸気機関車というわけではありません。しかし、黒煙を噴き上げる姿はなかなかのものです[⑯]

 実物車両の展示は大人向けという感じですが、三笠鉄道記念館には、子供向け(というか、ここは、親子連れを来訪客の中心層と見据えているのではないかと)の施設もあります。その一例は、100円で動くミニ列車でしょう。しかしねぇ、そのミニ列車の車両が0系だったり、フラノエクスプレスだったり[⑰]って、それ、明らかに「大人向け」じゃないですかね。むしろ大人が、これを見て「懐かしい」と感じて楽しみそうな気が(笑)
 0系はともかく、フラノエクスプレスなんて、ミニ列車に乗るような小さな子供は全く知らないでしょう(1995年生まれの私でもよく知らないのに)。

 車両の展示[⑱]は、全体的には、クロフォード公園よりも充実しています。あちらは、キハ80系が6両編成を組んだ状態で展示されていますが、いかんせん、種類と両数が少なすぎます。こちらは、旧型客車、郵便車、蒸気機関車、電気機関車、ラッセル車、キハ22形・・・など、種類も両数も豊富です。なお、キハ80系は、三笠鉄道記念館の方には、1両も置かれていません。





























 三笠鉄道記念館の敷地内には、”ミニ新幹線”が通っています。まあ、親子で乗る、よく見るアレです。車両は300系です。このミニ新幹線の線路ですが、実物の車両を展示しているエリアの中を縫うように敷設されているので、実物の鉄道車両の横を、それよりもはるかに小さいミニ新幹線が通るという光景が展開されます[①]。なお、列車は予告なく突然やってくるのでご注意。間違っても、線路上にとどまって写真は撮らないように・・・。

 駐車場にはキロ26が置かれていましたが、敷地内には、先頭車であるキハ56、キハ27の2両が置かれています[③]。乗務員扉の脇のタブレットキャッチャーも、撤去されることなく残されています。ただ、こうなると、キロ26だけが離れた場所に置かれてしまっているのが残念ですね。敷地の広さの関係で、3両編成組ませて展示するのは難しいとしても、どうかキハ56とキハ27の近くに置いてあげてほしいものです。

 旧幌内線の廃線跡は、線路が全て撤去されてしまったということはなく、一部(約2.8km)は残され、トロッコで辿ることができるようになっています。その線路が敷地内を通っています[⑥]。また、この写真に写っている線路のうち、手前側を通り、10km/hの速度制限を受けて右奥へと消えていく線路は、蒸気機関車の列車が通る線路として使われています。

 トロッコでの廃線跡巡りは、牽引されるトロッコで巡るやり方と、自分でトロッコを運転して巡るやり方の二種類があります。後者の場合は、普通運転免許を所持していなければならないという制限がありますが、鉄道ファンであれば、やはり自分でトロッコを運転したいと思うものでしょうか。なお、私は結局、どちらもやりませんでした(時間が足りなかったうえに、案内をしている公式サイトがぐちゃぐちゃで、情報をよく掴めなかったので)。

 レンガ造り風の機関庫がありますが、その中には、ED76形[⑬]やDD13形、蒸気機関車が収められています[⑭]。屋外に置かれている車両と違って、雨風を受けないで済むので、保存環境としては良いと言えそうです。

 食堂車の開店時間である11:00を過ぎたので、このあたりで、食堂車へと向かいました。どうせここを訪れるなら、やはり食堂車で昼食を食べなければ、という思いがあり、クロフォード公園を訪れる目的がキハ80系に会うことであったように、三笠鉄道記念館を訪れる目的が、いつしか、キシ80の食堂車で昼食を食べることになっていました。

 日曜なので混み合っているかな(と言っても。土日祝日しか営業しないのでどうしようもないんですが)・・・と思いながら店内へ入ってみると、先客が1人いただけで、とても空いていました[⑯]。ああ、良かった。

 正直に感想を申し上げると・・・、まあ、ちょっとがっかりしたというのが本音ですね、キシ80を食堂車(レストラン)として活用していると聞いていただけに、「往年の特急おおとり号で昼食を食べられる」といったようなものを想像していたので、天井や壁、照明、カーテンなどが、現役時代とは全く異なる状態になっていたのは、残念なことでした(その点から行くと、交通科学博物館のナシ20は、現役時代の状態に近いものでした)。

 車体の塗装が、国鉄色のようでそうでない、何だかよく分からないものになっているというのもなかなか残念ですが、やはり、何より、内装がきれいすぎますね[⑰]。壁や天井はこんな真っ白で綺麗であるはずがないし、照明も、こんな一般家庭で使用されているような小奇麗なものであるはずがありません。そのような改装を施しておきながら、なぜかテーブルにレースがかかっていないというのも、食堂車の雰囲気を損なうようで、ちょっと残念。

 全ての窓にカーテンがかかっていたので、私が座ったところのカーテンを少し開けてみました[⑱]。在来線の昼行列車の食堂車が最後まで残ったのは、北海道でした。特急おおとり号、特急オホーツク号の食堂車がその最後の生き残りとして残存し、1986年11月のダイヤ改正まで営業を続けました。キシ80で食事をしながら眺める車窓はどんなものだろう、と想像してしまいました。

 ここでちょっと食堂車に関する思い出話を。生まれた時代が生まれた時代なので、私は、在来線の昼行列車の食堂車というものを体験したことがありません。その最後であった特急おおとり号、特急オホーツク号の食堂車が1986年11月のダイヤ改正で廃止されているので、まあ当たり前ですね。また、昼行列車の食堂車という括りでも、100系「グランドひかり」の食堂車を1回利用したことがあるだけです。それは人生初の食堂車でした。

 グランドひかりの食堂車の営業が休止されたのは2000年3月(2002年のさよなら運転で復活したが、そんなものに乗りに行ったわけがない)のことでしたから、それまでに利用しに行ったとなると、少なくとも4歳以下であったことはたしかです。カレーライスを食べたものの、その辛さに途中で降参し、残った分を母に食べてもらったことは記憶しています。

 人生2度目の食堂車は、2008年1月に乗車した、当時の北斗星1号のモーニングタイムでした(なぜかパブタイムは行かず)。当時の北斗星1号は、JR北海道の担当でした。JR北海道所属の北斗星用スシ24は、木目調の内装で、真っ赤な絨毯とカーテンを持ち、赤い傘をつけた大型のシェードランプと、壁に埋め込んだステンドグラスが特徴的な、現在のJR東日本のスシ24よりも幾分こってりとした、豪華なつくりの車両でした。

 その後、3度目の食堂車を、2012年1月に乗車したカシオペア号で、4度〜6度目を、2014年1月〜3月にかけて乗車した北斗星号で経験しました。まあ、とにかく、生まれる時期が悪かったですね。あと15年早ければ(結構な年数ですね・・・)、おおとり号やオホーツク号の食堂車には間に合わなくとも、九州行きの寝台特急の食堂車は利用できたかもしれません。

 さて、そんなわけで、「グランドひかりの食堂車でカレーライスを食べた」ということを思い出したので、今回、このキシ80の食堂車「キッチンポロナイ」では、あの懐かしき思い出を呼び起こすべく、カツカレー(700円)を注文しました[⑳]。グランドひかりで食べたのは、カツカレーではなく、普通のカレーライスだったと思うんですが、まあ普通のカレーライスじゃ物足りなさがあるということで。なお、普通のカレーライスも400円で販売されています。  




















 食堂車での昼食を終えた後は、資料館の見学に向かいました。資料館への入館は有料で、入館料として530円が必要となってきます。資料館では、明治時代の貴重な資料や、大正・昭和時代の時刻表、鉄道制服などが展示されているほか、リアルな車両模型や、往年の幌内線の映像を見ることもできます[①] [②]。が、実物の車両の見学と食堂車での食事が来訪の目的だったので、これらは適当に流しましたとさ・・・(笑)

 2階にはHOゲージのジオラマがありましたが、特定の時刻に専門の係員による運転がなされるであるとか、あるいは自動運転で動いているとかではなく、お金(400円だったか?)を入れて自分で運転するという、珍しい運転方式になっています。線路上にある列車の中には、DD51形が重連で牽引する北斗星号もありました[④]。電源車なしの3両編成ですが、地方の小さな博物館としては、これでも結構頑張っているほうでしょうね。

 1階へ降りる階段の壁に、旅客JR6社の自慢となる車両設備を集めたポスターが貼り出されていました[⑤]。右側3つはやや見づらいかもしれませんが、上から、JR四国の50系アイランドエクスプレス四国、JR東日本の200系やまびこ(普通個室)、JR九州の787系つばめ(ビュッフェ)の各写真となっています。中央はの大きな写真は、JR東日本の251系スーパービュー踊り子のプレイルームです。

 「列車はだんだん旅になる」ですか。これからの時代、ただ座席に座って移動するだけが鉄道の旅ではない。この車両には、こんな魅力的な設備があるんですよ・・・と言いたげですが、100系・200系の個室、787系のビュッフェは、既に存在していません。いずれも、新幹線の高速化により、ただ座席をずらっと並べただけのN700系やE5系、800系へと取って代わられています。

 ただ、「列車はだんだん旅になる」という言葉は、今の時代においても、決して間違ってはいないと思います。いや、むしろ今の時代にこそより当てはまる、正しい言葉だと思います。JR九州のななつ星が良い例でしょう。あの列車は、まさに「乗ること自体」が目的となる列車で、九州各地を回るクルーズトレインということで、移動手段として使うことができない、列車への乗車自体が旅となる、究極的な列車です。

 そんなななつ星がなぜか大人気となっていることは、言うまでもありません。そして、JR西日本とJR東日本が、その流れに追随し、それぞれクルーズトレインを登場させようとしています。移動のために列車に乗るのではなく、「それへの乗車」という旅をするために列車に乗るという時代が到来しているんです。その一方で、移動のために乗る列車は、どうもつまらない車両ばかりになってしまいました。

 資料館の見学を終えたので、三笠鉄道記念館は、一通り見て回ったことになりました。バスを乗り継ぎ、岩見沢駅へ戻ることにしましょう[⑥]。バスを待っている最中、係員の運転によるトロッコ列車が、目の前を通過していきました[⑦]。廃線跡をトロッコで巡る旅・・・、実は、2017年を目標に、碓氷峠の廃線区間にトロッコ列車を走らせるという構想があります。それが果たされれば、是非行きたいものです。

 マイクロバスに乗車して、クロフォード公園へ向かうときに北海道中央バスを降りた、三笠市民会館へと向かいます。岩見沢ターミナル行きの北海道中央バスのバスが来るまでしばらく時間があるので、バス停の近くに整備されている公園の噴水を眺めていました[⑧] [⑨]。バス停には、屋根付き・扉つきの待合室[⑩]があるので、そこで待つのも良いでしょう。なお、バスは、幾春別方面も岩見沢ターミナル方面も、同じバス停に停車します。


                  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25
26  27  28  29  30  31  32  33  34  35  36  37  38  39  40  41  42  43  44  45  46  47  48


DISCOVER どこかのトップへ

66.7‰のトップへ