※各画像はクリックすると拡大します



べても、函館駅のホームに降りれば、北海道上陸を実感せずにはいられない。
 時間をたっぷりとかけた果てに上陸した北の大地。まだ夜も明けきらぬ函館の、暖房に慣れきった体を刺激するような寒さに触れたとき、深い旅情にしみじみと包まれた。
辿り着いた北の大地 函館から始まる一日
 函館は道内最初の停車駅。カシオペアの新しい一日はここから始まる。今回は確認できなかったが、3年前の2012年1月に下りのカシオペアに乗車したときは、函館での下車もあったことを確認した。必ずしも全員が札幌まで乗車するのではないようである。
 到着後、青森〜函館間でカシオペアを牽引したED79形が切り離され、新たにDD51形が連結される。しかし、函館には6分しか停車しないため、ED79形とDD51形の撮影を両立させるのは難しいことである。
 ED79形へ向かう人、DD51形へ向かう人。その人の好みが見えてくるが、いずれにせよ、早朝5時過ぎだというのに、こうして撮影に繰り出す人のなんと多いことか。
 あまりの興奮に寝付けなかったのか、それとも、予め就寝しておいて、函館到着に合わせて起き出してきたのかは定かではない。だが、とにかく皆熱い。カシオペアに乗ったときのことを少しでも思い出深くするべく、早朝から動き出すだけの情熱を秘めている人が、少なからずいるということのようである。
 やや遅れて函館に到着したため、機関車の交換が終了し次第の発車となった。深夜と何ら変わらぬ暗さのままの函館を出て、列車は札幌へ向かって動き出した。車内放送や食堂車の営業は6:30頃に再開する。外も深夜だが、車内もまだまだ深夜である。
 隣の五稜郭で、札幌行きのトワイライトエクスプレスと遭遇した。物の様子を確認するのも大変な暗闇だが、深い緑色に黄色の帯が引かれたその車両は、間違いなく黄昏時を行く列車であると確信させる。早朝の、それも一瞬の出来事であるが、東西を代表する豪華列車が相見えた瞬間であった。
 その横を静かに通過していくカシオペアは、終点の札幌まで、トワイライトエクスプレスに先行する。これから通ってゆく沿線の有名撮影地では、両列車の通過を待ち構える人たちが数多くいることであろう。こうして再び闇夜に飛び出したカシオペアは、重連のDD51形に導かれて札幌を目指す。
 2月半ばの北海道の夜明けは遅い。夜明けとともに北海道、というのであれば、またとな
く印象深い旅路になるであろうが、冬場ではそうはいかない。だが、幸いにして、終点の札幌到着は9:32である。カシオペアの旅は夜明け前に終了・・・、とはならず、夜明け後の白銀の大地を十分に堪能できるだけの時間が用意されている。
白む空 暁闇の北の大地に何を思う?
 5:50前ぐらいになると、徐々に空が白んでくる。同時に、今日の空模様が見えてきた。どうやら、曇天ではあるものの、昨日のような雨ではないようである。
 黒潰れしているだけのようだった車窓が、徐々にそれらしくなっていく。木々や山々、建物の外縁がはっきりとするようになり、その全体像が見えてくる。これぞ北海道を印象付ける車窓、というものはまだ見られていないが、暗さの残る中でもはっきりと分かる白銀、一向に現れない民家、すれ違う列車のあまりの少なさなど、少なくともここが東京ではないということだけは、深々と実感する。
 12両編成の最後尾に乗車していると、曲線区間に入ったとき、前方を行く車両が観察できる。機関車も含めれば14両という長大編成が反り、木漏れ日のように雪上に伸びた車内の照明が、その場所の雪を暖かく照らす。光量の多い場所と少ない場所は相まって、雪上にグラデーションを描き出す。いつしか時刻は5:55、起床した人も増えたのか、照明が灯る窓の数が多い。
 その様子は、夜明け前のマンションに近いものにも見えた。だが、今、この日本の中でも、これほど優雅に時間が流れているマンションは、他にありはしまい。
 進行方向右手に現れる駒ヶ岳は、道内における絶景のひとつである。しかし、夜明け前の暗さ、それも天気が優れないとなると、いかに勇壮な駒ヶ岳も、その全貌を捉えきることはできない。その稜線はぼんやりと確認できるが、駒ヶ岳であるとはっきりと認識するまでには至らない。それをじっと眺めていると、暁の風景に、どうも北海道へ来たらしいということと、長く付き合った夜が去ろうとしていることだけが、なんとなく分かってくる。
 6:00過ぎ、部屋のインターホンが鳴る。モーニングコーヒーと朝刊の配達がやってきたのだ。朝刊はもちろん北海道新聞だ。列車内で新聞を読むというと、いかにもスーツ姿のビジネスマンが想像されるところだが・・・、ここはカシオペアである。豪華寝台特急の個室で、熱いモーニングコーヒーをすすりながら、非日常的な世界に長くいるために、ちょっと
▲青森〜函館間でカシオペアを牽引するED79形 ヘッドマークがあるのは嬉しい
▲DD51形ではなくED79形の方に注目する人もいる その人の好みが見えてくる
▲函館を発車して札幌へ向かう ホーム上は拍子抜けするほどの雪の少なさ
▲緑地に黄帯の車両が見える 五稜郭でトワイライトエクスプレスと遭遇だ
▲空がわずかに白んできた しかし夜明けまでにはまだまだ時間がありそうだ
▲12両のE26系が横に反る 光がこぼれている窓が多い 起床した人が増えたのか
▲勇壮な駒ヶ岳も暗くてはまず全貌を捉えきることができない だが北海道らしい車窓だ
▲6:00過ぎにモーニングコーヒーと朝刊が到着する カシオペアの朝が始まった





                  10  11  12  13  14  15  16  17  18 
DISCOVER どこかのトップへ

66.7‰のトップへ