秘境駅として知られる布原駅にやってきました。山間の僅かに開けた地に存在し[②]、そのホームの長さは、1両編成の列車がどうにか収まるかもしれないという程度です[③]。駅のプラットホームというより、留置線にある運転士の乗り降り用の台に見えてしまいます。
発車時刻表によると、新見方面は1日に6本、東城方面は1日に5本とのことです(それぞれ1本は土曜・休日運休)[④]。布原駅は伯備線上にあるため、本来であれば、伯備線を走る列車も停車すべきところなのでしょうが、その需要の少なさのために、備中神代〜新見間に乗り入れてくる芸備線から(へ)の列車しか停車しません。この結果、布原駅に停車する列車の本数が非常に少なくなり、秘境駅としての価値が高められました。
駅の近くを西川がせせらぎ[⑤]、田圃には緑の絨毯が広がっています[⑥]。民家も数える程度であり、のどかで落ち着いた、とても風情のある環境に布原駅は位置しています。流れる川の音がBGMとなり、あとは虫の鳴き声や鳥のさえずりが聞こえるのみ・・・。
そんな布原駅は、陰陽連絡線の基幹路線である伯備線の駅であるため、特急やくも号をはじめとして、秘境駅の割には、比較的頻繁に列車が通過します。しかし、停車するのは芸備線直通の列車のみで、伯備線の列車は普通列車にさえ無視されるというのが、秘境駅としての哀愁をより引き立てているように思われます。本数の多さがかえって秘境駅の魅力を高めることもあるわけですね。
「高速で通過する列車」[⑧]。そう聞いて真っ先に思いつくのは、やはり特急やくも号ですね。布原駅での滞在時間は28分しかありませんが、その中で、何かしらの列車に遭遇しないかなと思っていたところ、下りの特急やくも号が眼前を通過していきました[⑨]。布原駅の前後は線形が悪く、また分岐器があるからか、「”高速で”はさすがに脅しだな」と思う程度の速度でしたが、低い視点から見る鉄道車両は、なかなかの迫力がありました。
布原駅のホームは1両分程度の長さしかありませんが、その割には、前後の複線区間がやけに長いですね[⑩]。それは、この布原駅が、元々は列車交換などを行うための信号場、布原信号場として誕生したためです。また、上り線のホームと下り線のホームは、互いにずらして配置されていますが、これは、信号場時代に通票の交換を行っていた名残です(上下線の列車の運転室がほぼ同じ位置に来ることで、交換が楽にできる)。
出雲市へ向けて走り去って行ったやくも号・・・でしたが、線路が右へ大きく曲がっているため、布原駅を通過した後も、その姿をしばらく眺め続けることができます[⑪]。最後尾の車両が見えなくなるところまでを見届けましょう。
そろそろ次の列車に乗車しようと思いますが、新見方面への列車に乗車するのではなく、東城方面への列車に乗車します[⑫]。芸備線の列車の本数の少なさは知っての通りであるため、同一方向の列車を待っていたのでは、待ち時間がいたずらに長くなります。そこで一度逆方向の列車に乗り、新見方面への列車を迎えに行くことで、異常な長さの待ち時間ができるのを回避しようというわけです。
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