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 鹿児島湾の向こうに山の影らしきものが見えますが、あれこそは桜島です[①]。雲ひとつない快晴であれば、鹿児島を象徴する存在とも言えるその姿が明らかになっていたことでしょうが、ちょっと雲が多すぎます。なお、このときは、ちょうど桜島が噴火しそうだとしきりに言われていたころだったので、「どうか鹿児島県内を脱出するときまでは持ちこたえてくれ」と思っていました。

 五位野からは各駅停車となります。五位野のひとつ次、坂之上から先は、どの駅も利用客が多いので、少しばかりの速達輸送を実現するよりかは、利用できる列車の数を増やそうという姿勢があるようです。列車は住宅地の中を走るようになり、街へとやってきたことを実感します[②]

 10:21、慈眼寺に到着[③]。現在、谷山〜慈眼寺間では高架化工事が行われており、その建設現場が眼前に迫ります。指宿枕崎線は、鹿児島中央〜五位野間では住宅地の中を走りながらも、ずっと地平を通っているために、随所に踏切が存在しています。そして、その踏切が、自動車や歩行者の円滑な通行を妨げていました。この高架化工事が完了すると、合計15か所の踏切をなくすことができます。

 宇宿駅発車後に現れてきた、何やら立派な複線電化の線路[④]。鹿児島本線であるわけはありませんが、一方で、この辺りには、指宿枕崎線以外のJR線はありません。ぴったりと並行するこの線路は、いったい何者であるのか?

 この線路の正体は、鹿児島市交通局(路面電車)の谷山線です。宇宿駅過ぎ(手前)〜南鹿児島駅過ぎ(手前)の約950m強の区間で、JR指宿枕崎線と鹿児島市交通局谷山線の線路は、仲良く並行しています。南鹿児島駅では、キハ200系と路面電車の競演が実現しました[⑤]

 鹿児島中央駅の手前で、415系や787系などが留置されている鹿児島車両センターの脇を通ります[⑥]。この後、左手からやってくる鹿児島本線と合流し、列車は終点の鹿児島中央に到着しました[⑦]























 JR九州の駅名標には、「その地を象徴するものを描いた絵」がついています(特に小さな駅を除く)。例えば、鹿児島中央駅の場合は、桜島と西郷隆盛が描かれています[①]。JR各社は、それぞれで異なったデザインの駅名標を作っていますが、「絵」は、JR九州の駅名標を特徴づけるものです。

 鹿児島中央からは九州新幹線に乗車します。乗車するのは、11:05発のさくら552号・新大阪行きです[③]。JR九州全線が特急列車を含めて乗り降り自由になるアラウンド九州きっぷは、3日間有効で30860円と、正直、割高感は否めません。それゆえ、「原価回収」をするのも、実は結構楽な話ではないんですが、少しでも得をしようと思うならば、やはり、正規の運賃・料金で乗るとかなりの値が張る九州新幹線に乗るのが良いでしょう。

 かつて門司港・博多〜西鹿児島間を走っていた特急つばめ号は、おおむね1時間に1本程度の本数でした。今、鹿児島中央駅の九州新幹線の発車時刻表を見てみると、1時間に1本どころではない本数があることが分かります[④]。もちろん、新幹線ゆえ、所要時間の大幅短縮も実現されました。鹿児島・熊本〜博多方面に限って言えば、九州新幹線の恩恵は相当なものでしょう。

 N700系のさくら552号に乗車しましょう[⑤]。800系が試運転で新山口まで乗り入れたことがありますが、結局、800系の山陽新幹線内乗り入れは、旅客列車では実現していないため、「山陽直通の列車」は、強制的にN700系となります。昨日と同様、2+2配列がありがたい指定席に乗車[⑥]。指定席券では6号車が指定されましたが、ここはグリーン車との合造車であるため、約半室という小ぢんまりとした空間が特徴的[⑦]

 「新幹線と海」といえば、北陸新幹線の延伸開業区間が、糸魚川付近において日本海に近いところを走っており、「日本で一番海に近い新幹線」などと話題になりました。しかし、九州新幹線も、”それなりに”海に近いところを走っていることを忘れてはなりません。出水〜新水俣間などでは、海岸線沿いを走る肥薩おれんじ鉄道の線路に近づき、東シナ海を望むことができます[⑧]

 新八代発車後、氷川を渡ります[⑨]。八代市と氷川町の境界線をなす川で、ここを渡ると、氷川町に入ります。もっとも、氷川町内を通る部分は、同町の形状の関係上、僅か約2200m。新幹線の高速走行にかかれば、30秒ちょっとしかかかりません。

 鹿児島本線の線路が近づいてきて[⑩]、筑後船小屋を通過します[⑪]。この列車の九州新幹線内の停車駅は、昨日新鳥栖〜鹿児島中央間で乗車したさくら411号と同様、鹿児島中央〜熊本間の各駅、久留米、新鳥栖となっています。筑後船小屋駅の近くで建設が進んでいる、何かの競技場らしきものは、プロ野球・福岡ソフトバンクホークス2軍の2016年からの新本拠地球場です[⑫]

 新玉名、新大牟田、筑後船小屋と3駅連続で通過して、下車駅の久留米に到着します[⑬]。乗る人も降りる人もそれなりにいます[⑭]























 さくら号で久留米にやってきました。「新久留米」などとならず、既存の久留米駅への乗り入れを果たしてくれたことは、非常にありがたいことです。

 駅舎は、九州新幹線の博多開業に先駆けて建築したもので、2010年に完成した新しいものです。東西を結ぶ自由通路は、採光窓を多数設けた丸い屋根が特徴的であり、その頂点にあたる部分には、ステンドグラスが埋め込まれています[③]。煉瓦模様の壁とも相まって、駅舎の内部というよりは、一種の美術館の内部のようにも思える、芸術性を感じられる駅です。その特徴的な構造は、外部にも形状となって表れています[④]

 久留米市は30万都市ですが・・・、それにしては・・・、うーん、ちょっと駅前が寂しいような気が[⑤]。東口(まちなか口)の駅前には、高さ約120mで、福岡県内でも6番目に高い建築物という高層マンション、「ザ・ライオンズ久留米ウェリスタワー」が建っていますが、「とりあえず高いものを建てて都会感を演出する」という雰囲気をひしひしと感じます[⑥]

 もっとも、このようなことになっているのには、れっきとした理由があります。JRの久留米駅は、市街地から大きく外れた、筑後川を間近に控える場所に位置しています[⑦]。一方、市街地の中にある西鉄久留米駅は、久留米駅の中心駅としての地位を得ています[⑧]。地図の標示を見ても、駅周辺の施設の数などの違いから、その発展度合いの差が分かります。両駅は、道路上の距離にして2200mほど離れています[⑨]

 しかし、仮に現在の西鉄久留米駅の位置にJRの久留米駅があれば、新幹線の直接乗り入れは叶わなかったかもしれません。九州新幹線を既存の久留米駅に併設することができたのには、街外れにあること、すなわち比較的土地に余裕があったことが、少なからず影響しているはずです[⑩]

 丸い屋根が特徴的であった東口の駅舎に対し、西口(水天宮口)は、青みがかった窓ガラスを敷き詰めた駅舎が特徴的です[⑪]。JRの久留米駅が街外れにあるといっても、東口は30万都市のJRにおける玄関口であるわけで、それなりに人通りや車通りがあります。一方、西口は閑静な住宅街が広がっていて、新幹線も乗り入れる駅が間近にあるという至極便利な場所であるにも関わらず、静けさの中での暮らしができそうです[⑫]

 九州新幹線の博多開業前は、特急リレーつばめ号を中心として、ひっきりなしに特急列車が行き交った鹿児島本線ホーム[⑬]。今、このホームにやってくる列車は、普通列車と快速列車が大半となりました。一応、朝と晩に特急有明号がやってきますが・・・。

 では、日中の久留米駅にはもはや在来線の優等列車は来ないのか?というと、そのようなことはありません。特急ゆふ3号に乗車します[⑭]


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