DF200も遠ざかり、カシオペア号は、五稜郭駅のホームにひとり取り残されました[①]。我々の足元からは、これから進みゆくところにして、これまで通ってきたところでもある線路が伸びゆき、銀色に磨き上げられた表面を灯りで鈍く光らせながら、海を越え、山を越え、川を越え、東北・北関東・首都圏へと途切れることなく続いていく道筋を、我々に薄く指し示しています。
そのまま「次の主役」の登場を待っていると、いよいよやってきました、青函トンネルを含む区間専用に設計された新型機関車・EH800形[②]。小雪がちらつく中に現れたその姿は、遠目にはEH500形のようにも見えるものの、実際には全くの別物。北海道新幹線の開業によって青函トンネル区間の保安装置が新幹線仕様のものに切り替えられることに伴い登場した機関車で、まさに「新型」。
車内から機関車の交換作業を見ることのメリットは、離れゆく・近づく機関車を正面から見られるということにありましょう[③]。一般の臨時列車として走っていたころは、ホームから観察する勢とラウンジカーから観察する勢の二手に分かれていましたが、カシオペア紀行となった今ではホームに降りられない以上、全員が車内から見るほかありません。
連結作業は手際よく進み、遠目にEH800形のかすかな光が見えたときから3分も経たずして、EH800形とE26系の連結作業が完了しました[④]。これで青函トンネル走行に向けての準備は整いました。DF200形も、EH800形も、JR貨物の機関車である以上、旅客列車の牽引は前提とはしていないはずで、カシオペア紀行が北海道に乗り入れていた僅かな期間ではありますが、両形式ともに”花形運用”を手に入れることができました。
まさに機関車と接するラウンジカーからは、EH800形の細かな部分もよく観察できます[⑥]。下りでは、展望スイートが基本的に最後尾になり、上りでは、ラウンジカーが基本的に最後尾になりますが、青森〜五稜郭間に限り、それが反対になります。ということは、カシオペア紀行を牽引する3種類の機関車、EF81形・EH800形・DF200形の全てをラウンジカーから見るには、上下両便に乗らねばならぬということです。
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