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 列車はまもなく五稜郭に到着します。それに先駆けて、12号車に連結されているラウンジカーへ向かいました[①]。カシオペア紀行では、途中駅での人の乗り降りがないということもあってか、わざわざ函館までは向かわず、函館本線と道南いさりび鉄道(江差線)がちょうど分岐する五稜郭で機関車交換を行うことになっています。まるでトワイライトエクスプレス号のようですね。

 21:28に、列車は五稜郭に到着しました[②]。配布された資料によれば、五稜郭は21:26到着となっているので、2分遅れということのようです。札幌を約5分遅れて発車したカシオペア紀行ですが、遅延は徐々に広がり、東室蘭では12分遅れになってしまっていましたが、だいぶ回復できました。もっとも、ダイヤは非常に余裕のあるものになっていて、単純計算でならば、合計2時間くらいの遅れまでは吸収できるかと思います。

 五稜郭では機関車交換が行われ、そして五稜郭〜青森間では、ラウンジカー側に機関車が連結されるということで、多くの人がラウンジカーの展望窓に張り付き、新しい機関車の登場を待っています[③]。一方、ちょうどこのとき、1号車(展望スイート)側では、札幌からここまでを担当したDF200形の解結作業が行われています。21:38ごろ、DF200形がカシオペア号の脇を通過していき、闇へと消えていきました[④] [⑤] [⑥]

 ・・・それにしても、このカシオペア紀行においてひとつ気に食わないのは、途中の駅における停車は数あれど、乗降扉は徹底的に閉めっぱなしで、始発から終点まで、ずっと缶詰め状態であるということです。その方向性の違いということなのかもしれませんが、2016年2月に乗車した特別なトワイライトエクスプレスでは、途中駅で息抜きや写真撮影に使える(=外に出られる)停車がきちんとあっただけに、あまりにも対照的です。

 鉄道好きであれ、そうでない人であれ、例えば機関車交換というのは、非常に関心を寄せるもので、「是非見学してみたい」・「写真を撮ってみたい」と思う人も多いはずですが、深夜1時台になる青森はともかく、21時台・22時台の五稜郭ですら扉を閉めっぱなしとは。

 特別なトワイライトエクスプレスでは、乗客がホームに出られる停車の後は、添乗員が点呼をとり、全ての乗客がきちんと戻ったかどうかを確認していましたが、やはりそれが面倒くさいということなのか。いかに豪華な列車といえども、完全固定窓に全室個室、外へ出ることは許されない、では、ちょっと息苦しさがあるのは否めません。どんな名目でも良いので、途中駅の扉の開放はしてほしいものです。













































 DF200も遠ざかり、カシオペア号は、五稜郭駅のホームにひとり取り残されました[①]。我々の足元からは、これから進みゆくところにして、これまで通ってきたところでもある線路が伸びゆき、銀色に磨き上げられた表面を灯りで鈍く光らせながら、海を越え、山を越え、川を越え、東北・北関東・首都圏へと途切れることなく続いていく道筋を、我々に薄く指し示しています。

 そのまま「次の主役」の登場を待っていると、いよいよやってきました、青函トンネルを含む区間専用に設計された新型機関車・EH800形[②]。小雪がちらつく中に現れたその姿は、遠目にはEH500形のようにも見えるものの、実際には全くの別物。北海道新幹線の開業によって青函トンネル区間の保安装置が新幹線仕様のものに切り替えられることに伴い登場した機関車で、まさに「新型」。

 車内から機関車の交換作業を見ることのメリットは、離れゆく・近づく機関車を正面から見られるということにありましょう[③]。一般の臨時列車として走っていたころは、ホームから観察する勢とラウンジカーから観察する勢の二手に分かれていましたが、カシオペア紀行となった今ではホームに降りられない以上、全員が車内から見るほかありません。

 連結作業は手際よく進み、遠目にEH800形のかすかな光が見えたときから3分も経たずして、EH800形とE26系の連結作業が完了しました[④]。これで青函トンネル走行に向けての準備は整いました。DF200形も、EH800形も、JR貨物の機関車である以上、旅客列車の牽引は前提とはしていないはずで、カシオペア紀行が北海道に乗り入れていた僅かな期間ではありますが、両形式ともに”花形運用”を手に入れることができました。

 まさに機関車と接するラウンジカーからは、EH800形の細かな部分もよく観察できます[⑥]。下りでは、展望スイートが基本的に最後尾になり、上りでは、ラウンジカーが基本的に最後尾になりますが、青森〜五稜郭間に限り、それが反対になります。ということは、カシオペア紀行を牽引する3種類の機関車、EF81形・EH800形・DF200形の全てをラウンジカーから見るには、上下両便に乗らねばならぬということです。













































 五稜郭の発車時刻は22:11であるため、発車まではもうしばらく時間があります。機関車交換の作業時間が含まれているとはいえ、五稜郭は21:26〜22:11の45分間停車であるため、相当に遅れて到着したとしても、それをかなり吸収することができます。

 21:56、函館行きの特急北斗22号がやってきました[①]。時刻表に書いてある時刻からすると、どうやら6分ほど遅れているようです。この北斗22号は、函館〜五稜郭間の所要時間は3時間40分で、一方カシオペア紀行は4時間48分。臨時の団体専用列車であることによる足枷もあるかと思いますが、とはいえ、客車列車と気動車列車の動力性能の違いをまざまざと見せつけられています。

 キハ183系の北斗号には、振り子機構を持つキハ281系(スーパー北斗)のような俊足さはありませんが(しかし、今はあまり大差ない)、その代わり、ハイデッカーグリーン車による素晴らしい眺めがあります[②]。もっとも、見たところ、グリーン車はガラガラのようですが・・・。私としては、一度は乗ってみたい「気になる車両」ではあるのですが、なかなか乗れそうな機会に遭遇しません。

 22:01には、キハ40形の普通列車が隣にやってきました[③]。しかし、時刻表を見ても、五稜郭に22:01に到着する普通列車などありません。「これもだいぶ遅延しているのだろうか」と思ったら・・・、ありました、ありました。この列車の正体は、函館発上磯行きの道南いさりび鉄道線直通の普通列車でした。車両の塗装がJR北海道時代のままで、ロゴシールのようなものもないので、本当に函館本線の普通列車かと。

 1・2号車は全室SA2個室という車両で、A2個室が連続する4〜11号車とは、3号車に連結されているダイニングカーをもって分断されています。人っ子ひとりいない2号車の廊下は、物音のひとつや喋り声さえも聞こえず、極めて静かです[④] [⑤]。しかし、1・2号車を構成する個室は、スイート7室とデラックス1室であることを忘れてはなりません。この2両においては、デラックス利用者は”最下位”の存在です。

 そして22:11、カシオペア号は当初の予定通りの時刻に五稜郭を発車しました[⑥]。函館まで行かず、五稜郭で折り返したという要素には、ひとつ「カシオペア紀行らしさ」が宿っているようにも思われます。ここからは江差線、もとい、道南いさりび鉄道線に入ります。



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