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 特にすることもないので、陸前矢作12:14発の陸前高田行きでとんぼ返りします。JR東日本のBRTで使用されているバスには、その外観において、いくつかの種類がありますが、そのうちのひとつは、このようにヘッドマークを掲げている仕様のものです[①]。四角い箱型の車両の前面にヘッドマークがある。それは、まるで電気機関車がヘッドマークを掲げて走る姿のようにも見え、さながら寝台列車かのようです。

 枝線状態の陸前高田〜陸前矢作間は、専用道は竹駒駅の前後の約450mが整備されている程度であり、それ以外は一般道を走ります。東日本大震災から5年以上が経過し、道路や街並みは、その復活を目指して変化を続けていますが、殊に被災した鉄道に関しては、被災当時からほぼ手つかずのままという場所も少なくありません。中途半端に途切れたままの橋梁は、その一例です[③]

 BRTバスは9分で終点の陸前高田に到着。ここでまた次のBRTバスへと乗り継ぎます。鉄道時代の陸前高田駅は、同市の玄関口として機能し、そこから街が展開していましたが、津波は、駅と街を直撃しました。その結果、元々駅や街があった場所は完全に失われてしまい、陸前高田駅は、市役所などとともに、高台の森林を伐採して造成した土地へと移転してきました。

 そんなわけで、現在、陸前高田駅は、市役所(仮庁舎)や消防防災センター、コミュニティホールなどに近接した場所に設置され、それらの施設と共に、仮の市中心部を形成しています[④] [⑤] [⑥]。元あった市街地は、今、嵩上げ工事が進められている段階です。それが完了し、そこに新たな市街地を築き直していくようになったときは、駅の再移転が行われることでしょう。

 鉄道時代の陸前高田駅は、大船渡線における主要駅として機能し、みどりの窓口も置かれていました。今、BRT駅となった陸前高田駅には、鉄道は通っていませんが、営業日や営業時間が限定されながらも、以前と同様に、引き続きみどりの窓口が置かれています[⑦]。定期券や指定席券の購入のための場は、失われずに済みました。このようにして鉄道時代の利便性や機能性を少しでも維持することは、とても大切なことです。















 時間調整兼ちょっとした観光のため、これより、いわゆる奇跡の一本松へ向かいます。12:27発のBRT110便に乗車しますが、「高校生の乗車がとても多かった」とのことで、5分ほど遅れてやってきました。まあ、これくらいならば誤差の範囲内でしょう。

 陸前高田駅の前後では専用道が整備されていないため、BRTバスは一般道を進んでいきます[②]。専用道を整備するためには、駅がもうその場から動かないことが確約されている必要がありますから、嵩上げ後の新市街地の構築などによる移転の可能性がある陸前高田駅では、専用道を造るにはまだ早いのかもしれません。

 車内から例の松が見えました[③]。しかし、嵩上げのために盛った土の向こう側に少し見えるという程度で、その全体ははっきりとは見えません。街は、今後、最大で約12mの嵩上げを行うため、さすがに松を見下ろすほどにはなりませんが、その視点は随分と高くなりそうです。

 奇跡の一本松は隣の駅であるため、5分ほどで到着しました[④]。 名前の通り、奇跡の一本松への来訪を主眼とした駅であり、開設当初は、期間限定の完全な臨時駅でしたが、現在は常設状態にあります。当駅が開設される前は、奇跡の一本松への最寄り駅は陸前高田で、そこから徒歩で30分ほどかかっていました。松により近い駅として当駅が開設されましたが、いや、なんか、あまり近くないような・・・[⑤]















 「設置位置の柔軟性が高いBRT駅で、奇跡の一本松と名乗っているくらいだから、きっとすぐ近くにあるのだろう」と思っていたら、どうも徒歩で10分かかるとのことです[①]。駅と松との位置関係などは一切調べていなかったので、これにはちょっと驚きました。まあ、陸前高田が最寄りだったころの徒歩30分と比べれば、相当な改善がなされているということは分かりますが・・・。

 奇跡の一本松の下へ行く途中、その頭上を、立派な吊り橋が通過していました[②] [③]。その佇まいは実に威風堂々としていて、何よりも美しい。あまりにも立派な造りをしており、その立ち姿は、さながらミニ瀬戸大橋です。しかし、「復興の一環で新しい橋を建設している途中か」と思ったのも束の間、これは道路橋ではなく、嵩上げ工事に使う土を運ぶためのベルトコンベアーの一部であり、その解体途中のものでした。

 海が近いということで、ウミネコが空を飛び交っていました[④]。平和の象徴は鳩であると言いますが、私としては、ウミネコがいつものように声を響かせながら空を舞っている瞬間というのも、ひとつの平和の象徴であるように思います。まあ、東日本大震災当日、テレビのニュースで釜石港に押し寄せる津波の映像を見ながら、「陸と海がこんななのに、まあお前らよくそんなのんきに空飛んでんなあ」と思った身ではありますが。


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