Page:24

※各画像はクリックすると拡大します。












 かつては東北新幹線の終点駅として機能していたということもあり、八戸駅の新幹線ホームは、2面4線という主要駅らしい構造になっています[①]。しかし、東北新幹線が新青森まで達した際に、当時の八戸始終着の列車は、全て新青森まで延長され、それ以降、臨時列車を含めても、八戸発着の列車は現れていません。また、今となっては通過列車もあります。

 八戸といえば、人口22万人以上を擁する、青森県第2位の工業都市ですが、「八戸駅」の割には、駅周辺は意外なまでに平凡です[②]。それもそのはずで、八戸市の真の中心駅は、実は、八戸線で2つ隣にある本八戸駅となっています[③] [④]。こちらは明らかに市街地を外したところにある駅ですが、「新八戸」などを名乗ってはいません(かつては尻内と言いました)。

 現在の駅舎は、2002年の東北新幹線八戸開業に先駆けて建設されたもので、すぐ隣にホテルメッツを併設しています[⑤]。前述のように、八戸駅は市街地を外れたところにある駅であるため、八戸駅周辺のホテルは多くありません。大抵のホテルは、本八戸駅の周辺で営業しています。もっとも、私のような鉄道旅行者にとっては、「八戸駅周辺のホテル」の方が便利でしょうけれども。

 ここからは八戸線に乗車して、終点の久慈を目指します。乗車するのは、12:22発の久慈行きですが、土曜・休日等は、ジョイフルトレイン車両を使用した「リゾートうみねこ」として運転されます[⑥]。ただし、発車標に「(LOCAL)」とあるように、リゾートうみねこになると言っても、普通列車として各駅に停車するダイヤと自由席の存在は維持され、単純に車両だけが差し替えられます。

 八戸線ホームの駅名標は、背景にウミネコを描いた、独自デザインのものが使用されています[⑦]。そして、これから乗る車両は「リゾートうみねこ」と、八戸線とウミネコの間には、いかにも何か関係があることを匂わせていますが、これは実際その通りで、鮫駅の近くにある「蕪島(かぶしま)」はウミネコの繁殖地であり、多くのウミネコが飛来します。












 こちらがこれから乗るリゾートうみねこ号です[①]。いかにも「リゾート○○」と名乗る全車指定席の臨時快速列車のような出で立ちをしていますが、八戸線で「リゾートうみねこ」として運用される際は、1両が指定席・2両が自由席の普通列車として走ります。窓はとりわけ上下方向に大きく拡大されていて、八戸線に展開される絶景を眺めるのに適しています[②]

 車両側面には、約6文字分の文字を流せるLEDの電光掲示板があります[④]。しかし、ホームから観察する限りでは、ずっと「リゾート うみねこ」を繰り返し流すばかりで、それ以外の情報は一切流れませんでした。これが快速列車であれば、停車駅を流すという使い道もあるかと思いますが、まあ、普通列車で各駅に停まっていきますからね・・・。

 今回は3号車の指定席に乗車します。今日朝に青森〜弘前間で乗車したリゾートしらかみ号などとは異なり、リゾートうみねこ号の1号車と3号車は、あたかもグリーン車かのような2+1の座席配列となっています[⑤]。ただし、座席そのものは、いたって平凡です[⑥]。普通車で2+1配列のジョイフルトレインといえば、リゾートやまどり号が挙げられますが、あれは253系のグリーン車の座席を流用しています。

 そして、リゾートうみねこ号のもう1つの特徴は、1号車と3号車の1人掛け席(C席)は、窓に向かって45度だけ回転するということです[⑦]。八戸線では、C席は海側の座席となりますが、これにより、窓越しに展開される海景色をより堪能することができます。



















 八戸を出発すると、ほどなくして、「八戸臨海鉄道株式会社」の看板とJR貨物のコンテナ車が車窓に現れます[①]

 八戸線の貨物列車事情は結構ややこしいようで・・・、まず、八戸を出発すると、次の長苗代駅の少し先まで、もう1つの線路が並行します[②]。「八戸線には複線区間があったのか」と勘違いしてしまいそうになりますが、この線路は、八戸市内で貨物輸送営業を行っている八戸臨海鉄道のものであり、JR八戸線のものではありません。

 一方、八戸線と八戸臨海鉄道線が分かれると、その後すぐに、今度はこちらの八戸線から別の線路が分岐します[③]。これはJR八戸線の線路(事実上の貨物線)で、この先には米軍の油槽所があり、そこと三沢駅を結ぶ米軍向けの貨物列車の運転に使われましたが、現在はその運転が終了したため、使用されていません。当然ですが、旅客列車がこの貨物線に乗り入れることはありません。

 つまり、「JR八戸線のもう1つの線路のように見えるものは、実は八戸線のものではなく、全く別の会社の貨物線」で、「JR八戸線から分岐する線路は、紛れもなく八戸線のものだが、今やそこを走る列車は何もない」ということになります。たしかなことは、色々と惑わせるものがあっても、八戸線は、結局単線非電化で貨物列車もないローカル線だ、ということです。

 馬淵川を渡って沿線の街並みが充実してくる頃、列車は高架線に入ります[④]。これは、八戸市の真の中心駅となる本八戸駅が高架化されているためです。工業都市として発展してきた街ということもあり、八戸市街の区間では、その車窓から、遠くの方で物々しいクレーンが林立していたり、煙突から煙が吐き出されていたりする様子を観察することができます[⑤]

 都市を駆け抜けてきた八戸線ですが、市街地最後の駅である鮫付近までやってくると、線路は段々と海に近づき、八戸線が持つ絶景路線としての一面が垣間見えてきます[⑥]。そして鮫を出ると、ほどなくして、海に少し突き出した島が現れてきますが、これがウミネコの繁殖地・蕪島です[⑦]。ここには神社がありましたが、火災で失われたため、現在再建工事が行われています。

 他の「リゾート〜」シリーズと同様に、リゾートうみねこ号は、運転室の後ろに展望スペースを設けています[⑨]。この写真を見るとお分かりになるかと思いますが、八戸線も、ずっと海の近くを通っているということはなく、案外内陸部の区間も多いです。そのため、せっかくの「海に45度向くC席」も、その神髄が発揮される時間は、実は意外と短いということになります。

 列車は13:08に階上に到着します[⑩]。ジョイフルトレインが使われていると言っても、沿線住民の日常的な便を損なうことがないよう、普通列車としてのダイヤはそのまま維持されているため、”普通の普通列車”として利用し、このような途中駅で乗降する人はいます。ただ、指定席車両(3号車)は、やはり久慈まで乗り通す人が多いようで、途中駅での入れ替わりは少ないです。

 海沿いを走る路線ということもあり、東日本大震災ではかなりの被害を被った八戸線でしたが、地道な復旧工事の果てに、2012年3月17日に全線での運転が再開されました。これに対し、八戸線の沿線住民は、JR東日本に感謝の意を表明するべく、線路脇に「夢を乗せてJR」「ありがとうJR」と書いたドラム缶を設置しました[⑫]。このドラム缶は宿戸〜陸中八木間にあります。

 「なんだか思ったほど海に近づかない」、「晴れると聞いていたのに曇天のままじゃないか」とやきもきしていた私でしたが、宿戸を出ると、線路はいよいよ海の際まで迫るようになり、まただいぶ青空が広がってきました[⑬]。夏は過ぎたと言っても、やはり青い海に青い空という眺めは、実に美しいもの。そして、宿戸の次に停まる陸中八木は、その海を眼前に控える駅です[⑭]


TOP                    10  11  12  13  14  15  16  17  18  19
20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  31  32  33  34  35


DISCOVER どこかのトップへ

66.7‰のトップへ