◆11月6日◆
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※各画像はクリックすると拡大します。












 翌朝6:00頃、鳴り響く目覚ましによって11月6日の朝を迎えました[①]。「カーテンを開けたら、外はすっかり明るくなっていて、列車は見知らぬ土地を走っていた・・・」というのが寝台列車の醍醐味ですが、残念ながら窓越しに見える場所は変わっていません。ブルートレイン日本海は11月末までの営業ですが、運が良ければ、銀世界の中で朝を迎えることもできそうです。

 朝の下段寝台の様子[②]。現役時代ならば、もうこれ以上寝台で横になるつもりはない、と考えた時点で、座席状態への転換を始めるところですが、今回は眠るのに使った区画以外の全ての下段寝台が座席状態のままなので、「座席に座りたい」と思ったならば、他の区画を使えば良いわけです。ですから、面倒なので、ここの寝台解体はやりません。

 デッキで照明を操作し、減灯状態を解除して全灯状態に戻しました[③]。窓から取り込まれる外の明るさも加わって(ほとんどのカーテンは昨夜から開けっ放しでした)、車内はあたかも「終点まであと少し」といった雰囲気に。いわゆるおはよう放送が流され、薄暗かった車内が明るさを取り戻すその瞬間、寝台列車の新しい1日が始まったと感じたものでした。

 せっかく上段寝台も自由に使えるわけですから、上段寝台特有のある”儀式”を忘れずにやっていきましょう[④]。梯子を上って上段寝台に潜り込んだ私は、寝台灯の横にある「何かを塞ぐようなカバー」に着目します。そのカバーにはつまみがついていて、横に動かすことができるようですが、ここを開けるといったい何が起こるのか・・・?

 そしてカバーをずらすと、そこに小窓も小窓というような非常に小さな窓が現れました[⑤]。下段寝台には、車窓を思う存分堪能できる大窓がありますが、上段寝台には、そのようなものはありません。しかし、だからといって、窓が全くない超閉鎖的空間なのかというと、実はそうでもなく、「申し訳程度に外が見える窓」があったわけです。そう、本当に申し訳程度に[⑥]

 朝になって、もう二度寝をすることもないだろう、となったときには、進行方向向きに座ることができ、向かいに足を投げ出すこともできる座席状態は、かなり重宝するものでした[⑦]。かつて開放式A寝台でヒルネができたときは(さくら号など)、”A寝台”ということで、グリーン車として扱われていたようですが、これにグリーン料金を払うのはさすがに・・・。

 なお、ブルートレイン日本海の車内での飲食は一切できないため、昨晩の夕飯・今朝の朝食は、どちらも管理棟にある休憩室で食べました。川を挟んですぐそこに道の駅いわいずみがありますが、レストランは昼間しか営業しないため、夜も朝も使えず。

 そこでコンビニまで車を走らせたわけですが、最寄りのコンビニは、ふれあいらんど岩泉から6.6kmも離れたところにあります。ふれあいらんど岩泉(ブルートレイン日本海)に行くだけならば、列車(三陸鉄道)と町民バスの組み合わせでも何とかなりますが、食糧調達やチェックイン・チェックアウト時刻の自由度を考えると、やはり車が無難であるように思われます。
















 昨晩は辺りが暗かったこともあって、その外観的様子があまり分からなかったブルートレイン日本海の客車ですが、朝になって明るくなったことで、各車両の全貌がハッキリと見えてきました。

 開放式A寝台車のオロネ24は、個室寝台車に改造されたような車両とは異なり、大窓がほぼ等間隔に並ぶという点において、見た目は普通の開放式B寝台車とほとんど変わりません(まあ、同じ「開放式」ですからね)[①]。ただ、各大窓の上には、先ほどご紹介した小窓がちょこんとついていて、それが開放式A寝台車特有の外見的特徴となっています。

 山奥にある岩泉町は、同じ岩手県でも、県都の盛岡市や沿岸の宮古市などよりも数段寒くなります。そのようなこともあってか、各車両は朝露に濡れていて、北国を走った日本海号らしい雰囲気がありました[②] [③]。昨晩も、星空とブルートレイン日本海の写真を撮影するために、結構な時間のあいだ外に出ていましたが、まあたしかに寒くて、手袋をしていても手が麻痺しました。

 A寝台車は人間(私)が使っているということもあってか、そこまで酷く結露してはいませんでしたが、残る2両は、誰も使わずに一晩中”放置”されていたためか、どちらも全体が激しく結露していました[④] [⑤]。A寝台車では、当然、車内で暖房をかけているため、内部がある程度暖まっています。その分だけ窓や車体での結露が発生しにくいのでしょうか。

 ブルートレイン日本海は、一応、「寝台特急日本海号を保存・移設した」ということになっていますが、重箱の隅をつつくように厳密なことを言ってしまえば、「青森所属の24系を保存・移設した」という方が正確になります。

 オロネ24は日本海専属の車両だったので、たしかに「日本海」ですが、2両目のオハネ25-151は、あけぼの号と共通運用であったため、あけぼの号として走ることもありました。そして1両目のオハネフ25-121は、「ゴロンとシート」の表記があることからも分かるように[⑥]、日本海号どころか、むしろあけぼの号専属の車両でした[⑦]

 とはいえ、ごく普通のオハネフ25を保存するよりかは、ゴロンとシートのロゴが残るオハネフ25-121の方が、より歴史的価値がありますから、この選択は悪くないでしょうね。それに、現役時代には決してありえなかった、「ゴロンとシートを連結する日本海号」が見られているわけですから、これはこれで面白いわけです[⑧]

 日本海のテールマークを掲出するオハネフ25-121ですが、他の列車の愛称幕も残っているらしく、昨晩利用方法の案内を受けたときには、「明日の朝、ウチの責任者にお願いしたら、幕回しをさせてもらえると思います」とのことでした[⑨]。しかし、今回は、朝の時間があまりなかったため、それは断念しました。あけぼのは当然として、他にはどんなものがあったのでしょう?

 1両目のオハネフ25-121の出入り台に立って向こうを見てみれば、気分はあたかも「窓から顔を出して乗降扉を操作する車掌」[⑩]。この写真からも分かるように、編成は直線の線路上にはなく、緩い曲線を描いた線路の上にあります。設置場所の都合か、それとも意図してのものかは分かりませんが、この方が”走っている列車感”が出ているように感じます。

 山奥の町・岩泉は、辺りを見回してみれば四方を山に囲まれていて、その表面では、木々が赤や黄色や橙や緑と、実に様々な色でこの町の風景を彩っています。目の前の雲は、ちょっと頑張れば手が届きそうなほどに低いところを漂い、自ら切るシャッターの音と足音以外には、他に動くものも聞こえる音もありません[⑪]。都会の月曜日ではありえないような、なんとも平和な朝です。

















 7:40頃、そろそろ出発しなければと思って車を停めたところへやってくると、昨晩から続く厳しい冷え込みもあって、車はすっかり霜だらけになっていました[①]。「リアワイパーもないのにどうするの」と思いつつ、荷物を入れるためにトランクを開けると、運の良いことに、そこに雪落とし(というより窓拭き棒?)が用意されていたので、それで霜を取り払ってから発進しました。

 チェックアウトの手続きをして、ふれあいらんど岩泉を発ちます[②]。いま目の前に見えている小本川が、2016年の台風10号で氾濫し、岩泉町に大きな被害をもたらしました。川自体は、さすがに普段通りの様子に戻っているようですが、以前この道と川の間にあったパークゴルフ場はすっかり荒れ果てていて、少なくともこの場所で復旧することはありません(移設予定)。

 昨日の夜も、そして今日の朝も、なかなか寒いものだなと思っていましたが、道路の上に表示されていた気温計によると、現在の気温は1度とのことです[③]。なるほど、そりゃあどうりで寒いはずですし、車にも霜がびっしりと付着するわけです。

 しかし、その寒さこそが、岩泉町の紅葉を力強く鍛え上げてきました。ビデオカメラの焦点距離が長めで、写せる範囲が狭いために、私がこの目で実際に見てきた風景をお届けできないのが残念ですが、小本川沿いに車を走らせていると、もう終わりかけとはいえ、右にも左にも前にも美しい紅葉が展開し、それはもう素晴らしいドライブでした[④] [⑤]

 今日はいよいよ山田線(宮古〜盛岡)に乗るということで、レンタカーは、久慈に戻って返すのではなく、宮古で乗り捨てることにしています。しかし、ふれあいらんど岩泉から宮古駅までは約45kmと、それなりの道のりであるため、今日も適宜休憩しながら走ります。そこで、最初の休憩地として、ふれあいらんど岩泉から約14kmのところにある展望台に立ち寄りました[⑥] [⑦]

 その展望台に立てば、そこから見えるのは、見渡す限りの一面の大海原です[⑨]。手前の方にいくつかの岩があるのを除けば、その向こう側は、離島やちょっとした小島はもちろんのこと、海面に突き出す小さな岩すらも見当たりません。昔の人々が地球は平面だと思っていたのも納得するような、どこまでも果てしなく続く水平線が印象的です。

 しかし、一方で、視線をやや右にずらせば、そこはリアス式海岸を擁する岩手県らしく、海に飛び出た陸地が見られます[⑩]。さらに、視線を手前の方に寄せれば、ほぼなすがままにされている 自然や岩々も観察できます[⑪]。海が見える展望台といっても、それ用に自然や海を無理に拓いて整備していることはなく、あくまでも自然を尊重しています。

 今日は雲も少なく、澄んだ青色が大空に広がっています[⑫]。懐かしの日本海号の寝台で目覚めて、外に出てみればありがたいまでの好天。旅行最終日は良い気分と良い天気の中で終えることができそうです。


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