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 駅に戻り、武蔵野線のホームにやってきました[①]。私が乗るのは東京方面行きの列車ですが、その列車を待っているとき、反対側のホームに府中本町行きの列車が到着し、その車両は205系でした。また、その車両は、いわゆる”メルヘン顔”ではない、ごく普通の顔を持った編成であり、これを結構な頻度で見られる武蔵野線って、実はちょっと注目すべき存在かも[②]

 14:25発の南船橋行きの列車に乗車して[③]、2つ隣の東川口で下車しました[④]。当初の予定では、その1本前の14:15発の列車に乗ることになっていましたが、京浜東北線からそのまま乗り換えず、南浦和駅で途中下車したため、結果的に1本次のものとなりました。

 入線時の写真が撮れなかったため、発車時に後追いの写真を撮りましたが、これも205系でした[⑤]。よく見てみると、先ほど目撃した府中本町行きの編成とは異なり、こちらは行き先表示機がLEDに交換されていました。メルヘン顔・普通の顔、方向幕・LED、界磁添加励磁制御・可変電圧可変周波数制御(VVVF)と、同じ205系でも個性と差異があるようです。

 昼下がりの東川口駅ホーム[⑥]。ここを最寄り駅とする「訪れるべき場所」があります。それは今回のテーマに沿ったもので、ブルートレインあけぼのやブルートレイン日本海のように”使う”ことができるものです。さあ、その正体はいったい・・・?



















 駅から歩くこと10分弱、街中に突然1両の青い車両が現れました[①]。見覚えのあるこの車両、その形式は「スシ24」・・・。「懐かしの寝台列車たちとの再会を果たす」とのテーマのもとに実施した今回の旅の最後を飾るのは、埼玉県川口市にあるピュアヴィレッジなぐらの郷でレストランとして営業している、かつての北斗星号の食堂車・グランシャリオです。

 そのレストラン・グランシャリオですが、ただいまアルバイトを募集しているとのこと[②]。飲食店でのアルバイトは、コンビニ等と並んで、世の中におけるアルバイトの定番だと思いますが、同じ飲食店でも、グランシャリオで働いてお金を稼げるとなれば、鉄道が好きな人がこのアルバイトをやってみようと思ったとしても、それほど不思議な話ではありませんね。

 この地にスシ24がやってきたのは2016年4月17日のことで、同年5月1日から営業を開始しました[③]。食堂車ということで、スシ24には乗降扉がないため、側面にホームや出入り台のようなものは設置されていません。出入りは妻面の扉からとなります。ただ、食材を搬出入するための業務用扉は側面にありますから、そこから出入りできたら面白かったかも・・・。

 写真の通り、屋根等はなく、屋外で雨曝し状態となっていますが、設置からまだ年月が経っていないためか、外装は比較的綺麗です[④]。また、ここでは、「乗車券」と銘打って、料理とは別に500円を収受していて、乗車券代の一部は車両の保全に役立てているそうですから、その資金を活用した適切な維持管理が行われているのかもしれません。

 食堂車を利用するために車内を移動しているとき、「食堂」と書かれたガラスがついた妻面扉に辿り着くと、つい胸が躍ったものでした[⑤]。また、外から列車を見ているときは、「ス”シ”24」というその車両番号に興奮を覚えたものでした[⑥]。そして窓越しに車内を覗けば、そこには明らかに特別な空間が広がっていて、その日の利用客を羨んだものでした[⑦]

 ただいまの時刻は14:50。現在はひとつの利用時間帯と別の利用時間帯の切り替え中で、15:00から「カフェタイム」として営業を再開します。夕方と言うにはまだ早い時間帯ですが、日中が短い季節特有のやわらかな日差しを受けながら、スシ24が穏やかに佇みます[⑧]。現役時代も、これくらいの時刻のときは、車両基地で静かに休憩している時間帯でしたね。

 スシ24は、客席部分だけを見ると、そこまで特殊な車両という雰囲気はあまりなく、「ただの485系の普通車」という感じがしないこともありません(色はこんなですが)。しかし、その中心に太い窓枠が鎮座する厨房の窓や[⑨]、鉄道車両としては珍しい外吊り式となった業務用扉などが[⑩]、食堂車特有の要素として、これが普通の車両ではないことを匂わせています。

 先ほどから気になっていたのですが・・・、スシ24の脇に停車しているこの軽自動車は、いったい何なのでしょうか[⑪]。車体側面には「ミニシャリオ」とも書かれています。この軽自動車、なんでもアイスを販売する「キッチンカー」だそうで、近隣でイベントが行われるときに出張営業しているのだとか。色だけでなく、「金帯は3本」という点まで再現していて、結構そっくりです[⑫]

 さて、そろそろ15:00になるので、ここいらで入店しましょうか[⑭]。さあ、食堂車・グランシャリオとの再会です。












 妻面の扉から車内に入ります[①]。右側面にある扉は業務用の扉で、ここから食材やごみを搬出入することもありました。車外から車内を見ていると、まだどことなく「保存車を見学している気分」がしますが、一歩進んで車内に立ち入れば、そこで得られるのは、もうまさに「実際の北斗星号の食堂車にやってきた気分」です[②]

 我々を客席へと導く2色模様の絨毯、重厚感を感じさせる濃色の木目調の内装、高い位置に設けられた廊下の窓、そして向こうに見える、金色に煌めく「GRAND CHARIOT」のエンブレム[③]。私の記憶では、北斗星号の食堂車は8回利用したことがありますが(うち1回はJR北海道のスシ24)、今回を”9回目”であると錯覚するに十分の雰囲気があります[④]

 扉についている剥げかかったグランシャリオのエンブレムが、レプリカでもモックアップでも何でもなく、本当に線路上を営業運転していたスシ24を移設してきたことを示しています[⑤]。そして、この扉を手前に引くと、その向こうに見えてくるのは、複数回の利用を重ねてもはや見慣れたものになっていながらも、常に新しい感動と興奮をもたらしてくれたあの空間です[⑥]

 そう、ここは紛れもなく、食堂車・スシ24-504:愛称グランシャリオの客席空間です[⑦]。電圧の都合上、ブルートレイン日本海と同様に、一般向けの汎用空調機を設置せざるを得なかった点を除けば、これまでに見てきたブルートレインあけぼのやブルートレイン日本海と同様に、元の車両の状態がそれなりに保たれています。

 ブルートレインあけぼの・日本海は、実際に宿泊することこそできたものの、車内での飲食は厳禁とされていました。しかし、この車両は「食堂車」です。食堂車であるにも関わらず、車内での飲食はダメなどと言われてしまっては、それはもはや普通の保存車と変わりありません。レストランとして営業しているということは、即ち、ここで食事ができるということです。


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