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 よく知られているように、同じ北斗星号用の食堂車でも、JR北海道のスシ24とJR東日本のスシ24では、内装の意匠に大きな違いがありました。前者は全体的な色合いから調度まで、非常に”こってりとした”重厚な内装が特徴的で、後者(東川口のグランシャリオはこれ)は比較的簡素で”あっさりとした”仕上がりになっています(ただし廊下は全くの逆)。

 前のページでも述べたように、私は、北斗星号の食堂車を8回利用していますが、JR北海道車が1回だけだった一方で、JR東日本車は7回です。そのため、私としては、「北斗星号の食堂車」と聞くと、やはりこの車内が頭に浮かびます[①]。時代が時代なら、JR北海道のスシ24も保存されていたかもしれませんが、2008年は、まだ寝台列車のブームやクラウドファンディングはありませんでしたからね・・・。

 椅子は現役時代のものをそのまま流用しているので、着座したときの座り心地や視点の高さ、そして辺りを見回したときの眺めは、現役時代に利用したときのそれと完全に同じです[②]。しかし、平日の昼間ということもあって、他には誰もおらず、利用客は私1人だけ。現役時代は、さすがにここまでのガラガラっぷりはありませんでした。

 現役時代に6号車(ロビーカーないしはロビー・ソロ)と連結していた側は、扉の向こう側が業務用室的に使われていることもあって、張り紙曰く「プライベートルームのためご観覧はご遠慮ください」とされ、立ち入ることはできません[③]。普通の保存車であれば、便所以外は全て開放することでしょうが、この辺りは”使われている”保存車ゆえの事情もあります。

 現役時代末期は、なかなかゆっくり・まったりと食堂車にいられはしませんでしたが、平日の昼下がりに事実上貸し切り状態のグランシャリオで過ごす時間は、結構に贅沢なものです[④]。トレインホステル北斗星や茂辺地の北斗星における一連の記憶と今の光景を繋ぎ合わせると、本当に北斗星号での旅路(ロイヤルに乗ったと仮定)を追体験しているかのようになります[⑤]

 左右1つずつのそれぞれのテーブルは、食事での利用には供さず、募金箱や絵を置いたり[⑥]、北斗星号にまつわる様々なグッズを置いたりするための台として使用されています[⑦]。現役時代も、食堂車の営業時間帯は、2人用テーブルのひとつがグッズ置き場に使われていたような記憶があるので、ある意味では当時を見事に再現していると言えそうです。












 テーブルについては、現役時代とはいくらかの相違があり、まずテーブルクロスが現役時代とは異なるものに取り換えられているようです。ただ、少しでも本物に近づくように、同じ系統の色のものを調達した点は素晴らしいと思います。また、そのテーブルクロスの汚れ対策か、あるいはメニューを挟むためか、天板にガラス板が敷かれるようになりました[①]

 椅子はまさしく現役時代のものがそのまま流用されていて、「グランシャリオでの食事」を再現するのに大きく貢献しています[②]。いくらこの場がスシ24であったとしても、そこらへんのホームセンターで売られている椅子を持ってきてしまえば、もう雰囲気は台無しになってしまいます。こういった施設は、「場」も大切ですが、そこにある「モノ」も大切です。

 料理を注文してお冷やがやってきたので、そろそろテーブルにつきましょうか[③]。15:00から開始したカフェタイムにおいて、今回は、ドルチェ&ドリンクセット(飲み物付きで800円)を頼みました。乗車券(500円)と合わせると、計1300円ということになります[④]。なお、詳細は後ほど書きますが、当初の予定では、特製カレー・ハヤシライス(1200円)を食べるつもりでした。

 ブルートレインあけぼのやブルートレイン日本海の車内での飲食ができなかった分、今こうしてグランシャリオの車内で食事ができているのは、非常に嬉しいことです[⑤]。供食設備を持つ車両として生まれた食堂車は、やはり食事をするために利用してこそ使われる価値があるというものです。約2年6か月ぶりの”グランシャリオでの食事”の時間を、じっくりと堪能しましょう。

 平日・月曜日の昼間ということもあって、他には誰も客がおらず、随分と閑散としています[⑦]。「現役時代の混雑ぶりが嘘のような・・・」と言いたいところですが、実は、現役時代の北斗星号でも、1度だけこのようなやたらとガラガラなグランシャリオを経験しています。

 それは、人生2度目の北斗星号への乗車となった、2014年1月26日(日)発の下り便でのことでした。当時はまだ翌年のダイヤ改正で臨時列車に格下げされることは発表されておらず、また、微妙な時期の日曜日発の列車ということもあって、大人気個室のロイヤルが1か月前の10時打ちで一発で取れてしまうほどでした(他、ソロも3室取れてしまった)。

 当時の下り北斗星号は、札幌到着が11:15であり、モーニングタイムは10:30まで営業していました。自室で朝食を食べた(ルームサービス)後、「せっかく北斗星号に乗ったわけだから」と思い、9:45頃に食堂車を訪れたところ、利用客は私+1人だけでした。末期は上野を出た直後からパブタイムに並ぶ人がいたあのグランシャリオにも、このようなときがありました。

 一方、料理の到着を待っている間とそれを食べた後、接客係の女性とマスターの男性から色々なお話を伺うことができました。

 なんでも、スマホに北斗星号の車窓の動画を流すことで、現役時代さながらの雰囲気に浸ろうとする人がいたとか、現役時代のグランシャリオで使われていたコースター(車内販売のグッズでもあった)を寄贈した人がいたとか、車両が装備するBGM装置を使おうとしたものの断念し、結局USENの装置を繋いでBGMを流すことにした・・・、など、様々な出来事や裏話がありました。

 ちなみに、今回、私は、その寄贈されたコースターをいただくことができました。「実はこのようなものが寄贈されたのですが、いかがですか?」という体での頂き物でしたが、せっかく本物のコースターを貰えたのならば、それをこの場で使用しない手はないと思い、既にお気づきの方もいらっしゃることでしょうが、アイスコーヒーの下に敷いて実際に使っていました。

















 「我々はそろそろ引き上げなければならないが、あとは帰るまで好きなだけ写真撮影をしてもらってよい(ただし厨房はダメ)」とのことだったので、もう少し車内を探索してから帰ることにしました。

 車内はできる限り現役時代の状態を保持するように努められていて、2014年3月改正時点での乗務員用の時刻表も残っていました[①]。時刻表にある通り、上り列車は、青函トンネルを走行する時間帯がパブタイムの時間と重なっていました。車窓はトンネルの内壁のみでしたが、「海底トンネルでの優雅な食事」は、雰囲気としてはかなり気に入っていました。

 「北斗星号の食堂車が保存され、レストランになっている」となれば、やはりそれなりに注目されるようで、ここを訪れた芸能人や有名人のサインが残されていました[②]。メディアで取り上げられたこともあるようで、私もこの後、本当に偶然ですが、11月26日に放送された番組で、トレインホステル北斗星と共に「引退した電車の使い道」と題して紹介されているのを目撃しました。

 利用客目線ではまず意識しませんが、現役時代から備え付けられている冷蔵庫に飲料が入っているあたり、この冷蔵庫は、当時のものをそのまま使えているようです[③]。一方、消火器の左にはコンセントがあり、ここにはお冷や調達用の冷水器がありましたが、既に撤去されています。ブルートレイン日本海でさえ冷水器は使用停止でしたから、これを使うのは難しいようです。

 この視点で廊下に立っていると、レジで会計を済ませて、自分の寝台に戻るためにここを歩いたときのことが思い出されます[④]。北斗星号の各寝台は、内浦湾が見える側に置かれていましたが、食堂車の廊下は、それとは反対の山側に設けられているため、寝台にいるときには見られない車窓を見ようと、しばらくこの窓から景色を眺めたこともありました[⑤]

 食堂車の廊下といえば、手を洗うための水道が設けられていることがポイントですが、水回りからの劣化を考えると、これを引き続き使えるようにするのは容易ではありません。しかし、この水道を使えるようにすることにはこだわりがあったらしく、別途新たな配管を設けたことによって、この水道からは現役時代さながらに水が出るようになっています[⑥]

 今回は15:00からのカフェタイムを利用しましたが、レストラン・グランシャリオは朝から晩まで営業していて、他にもモーニング・ランチ・ディナーの各時間帯があります[⑦](この後、営業時間等が変わったようなので、ご利用の際は、この写真ではなく最新の情報をご覧ください)。東川口という関東近郊の立地に最安800円からと、まさに「日本一気軽に使える食堂車」。

 一時期、「列車ホテル」が流行し、日本各地で車両を使った宿泊施設が営業していたことがあるようですが、ブームの沈静化と維持・管理の甘さが祟って、その多くは閉鎖し、車両も解体されたと聞きます。レストラン・グランシャリオのみならず、ブルートレイン日本海などもそうですが、「意気揚々と始めたのは良かったものの、結局数年でやめてしまった」とならないことを祈ります。

 客足がどれだけあるのかも大切ですが、車両をどれだけ適切に維持できるのかも大切です。スシ24-504については、現状は窓に少々水垢が見られる程度ですが、雨曝しという環境で果たしてどれほど耐えられるか・・・?[⑩] 塗装の塗り直しや修繕にかかる費用をきちんと積み立てるべく「乗車券」という制度を用意してあることは、先を見据えた好判断と言えるでしょう。

 営業時間を知らせる電光掲示板の上では、レストラン・グランシャリオを紹介する映像が流れていました。その中には、スシ24-504が陸送されるときの様子を記録した映像も[⑪] [⑫]。新幹線車両の陸送はよくバラエティ番組等でも取り上げられますが、それよりも小振りな在来線車両とはいっても、公道で輸送するのはやはり大変です。





さて、これにて今回の旅は終了です。
就職活動終了後はじめての本格的な大型旅行でしたが、なんとか無事に終わらせることができました。

今回は「懐かしの寝台列車たちとの再会」をひとつのテーマとして、北斗星号の実車パーツを利用したトレインホステル北斗星、
現役の寝台列車であるサンライズ出雲号、驚きの動態保存を実現しているブルートレインあけぼの、
疑似青函連絡船を標榜した津軽海峡フェリー、有志の熱い協力が源となって保存された茂辺地の北斗星号、
洗面台や便所まで使えるブルートレイン日本海、そして「食堂車での食事」を叶えるレストラン・グランシャリオと、
実に様々な”寝台(夜行)列車要素”と巡り合うことができました。

関東にある施設と北東北・北海道にある施設をひとつの旅の中で訪れ、さらにわざわざ横浜に出向いて横浜〜東京間で
サンライズ出雲号に乗車するなど、掲げたテーマに沿うために、随分とめちゃくちゃなことをしたものだなと思いますが、
それによって計7つの”寝台列車要素”を網羅することができ、旅の”厚み”はかなり増したように思います。

「若者だって、時には懐かしさを追い求めたくなる」。
私の旅に組み込まれたことのあるかつての盟友たち(フェリーはさすがに時代が違いますが)の第2の活躍を祈るとともに、
唯一残された現役の(定期)寝台列車であるサンライズ瀬戸・出雲号の末永い運転を期待しましょう。






ここまでの旅日記を見る限りでは、レストラン・グランシャリオへの訪問は、特にこれという問題も起こらぬままに
平和に終わったかのように思われますが、実は、以下のような危機に遭遇していました。そう、それは15:00前のこと・・・。



15:00のカフェタイム開始を前に、スシ24-504の近くで写真を撮っていると、先ほどの接客の女性(以下、店)が現れて・・・。

店「カフェタイムをご利用のお客様ですか?」
私「ええ、そうですが・・・。」
店「あの〜、実は、今日は営業しないんですが・・・。」
私「(???)」

「月曜日はカフェタイム休業」とは書いてありませんでしたし、11月6日は臨時休業ともありませんでした。
それなのに今日は営業しないとはいったいどういうことなのか? もう少し詳しくお話を伺ってみると・・・。

店「(連休明けの月曜日だから)今日はお客様は来ないだろうと思って、シェフに会議の予定が入っておりまして・・・。」
店「今日はどちらからいらっしゃったんですか?」
私「住んでいる場所としては茨城県で、割と東川口に近いですが、今回はかくかくしかじかこういう旅の中で訪れて・・・。」
店「そうなんですか! なんとかならないか、ちょっと(本部に)聞きに行ってきます!」

北海道在住とかではないので、その気になれば、後日改めて訪れることもできなくはないわけでしたが(とはいえ、交通費等のことを考えれば、当然、今回の旅の中で訪問するのが一番良いのは当たり前)、事情を話した私のことを哀れに思って下さったのか、なんとかカフェタイムの営業ができないか交渉してくる、という展開に突入。

店「残念ながら、カレーやハヤシライスはお出しできませんが、ドルチェであればお作りできます。」

レストラン・グランシャリオでカレーないしはハヤシライスを食べることを前提として、昼食を駅弁1個に留めておいた(普段ならそこにおにぎり等をプラスします)私としては、満点の回答が返ってきたとは言い難いものがありましたが、背に腹は代えられぬというか、ここで「だったら別にいい」と答える理由は何もないので、ドルチェでも構わないという回答をしました。

これが、先ほど書いた「なお、詳細は後ほど書きますが、当初の予定では、特製カレー・ハヤシライス(1200円)を食べるつもりでした」ということの裏事情でした。もう選択肢がドルチェしかなく、それ以外にどうすることもできなかったわけです。

やむを得ない事情での突発的な臨時休業であれば、私も「まあ致し方ないか」と思いますが、”今日は客が来ないと思ったから閉めるつもりでいた”という理由には、さすがに腰を抜かしました。たしかに、お昼時や土曜・休日でもなく、平日・月曜日の昼下がりにここを訪れる人はそうそういないでしょうが、カフェタイムを始めてもいないのに見込みで判断されたらさすがに困ります。

このことがあったからなのか、以前はホットペッパーのサイトで「カフェタイム 15:00-17:00」とされていたのが、いつの間にか「カフェタイム 15:00-16:00(不定期営業のため、ご予約、若しくはお問い合わせ下さい。)」という文言に書き換わっていました。

「(レストラン・グランシャリオを)是非宣伝してくださいね」とのことだったので、今回の旅日記できっちりとご紹介いたしましたが、その代わり、困惑してしまった出来事も、真実としてきちんと残しておかねばなりません。

もっとも、接客の女性やマスターの男性の態度や人柄には、何ら問題はなかったですし、スシ24は現役当時を偲ばせる状態を保持しながら、比較的良好に維持・管理されていましたから、とにかく先の一件だけが残念でした。いや、残念というより、怒るというより、腹立たしいというより、なんだかとにかく「不思議」というやら、「意味が分からない」というやら・・・。

というわけで、ホットペッパーに記された営業案内でも既にそのように書かれていますが、とりわけ何もない平日にカフェタイムで利用される際は、事前に連絡をして、自分が行くことを予告しておいた方が良さそうです。










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