Page:13

※各画像はクリックすると拡大します。



















 さすがは九州でも屈指の秘境駅。ただでさえ秘境感が高いというのに、こうも夜に訪れたわけですから、宗太郎駅が持つ「秘境駅としての矜持」は、今まさに最大限に引き出されていると言っても良いでしょう[①]。車の行き交う音すら聞こえない静寂、街灯りもない暗闇に唯一浮かび上がるホーム、そして列車の行く手を見せない完全なる闇[②]。うーん、素晴らしい。

 JR九州の駅名標のお約束でもある「真ん中のイラスト」は、宗太郎駅の駅名標にはないようです[③]。まあ、ここの名所はなんだと言われても、たしかに、何も思い当たらなそうではありますが。もっとも、翻ってみれば、この宗太郎駅自身が、宗太郎駅の名所ではないかと思います(ですから、駅の全景を描いたものを載せてみては)。

 全国でも有数の秘境駅ですが、駅の構造は2面2線、それも有効長がまずまずとられていて(両端の分岐器の端から端までは約370m)、特急列車が列車交換のために運転停車をすることもあります[④]。佐伯〜延岡間(もっと言えば、大分以南の全区間)は単線となっている日豊本線ですが、同区間内の駅は、いずれも2線以上を有していて、全ての駅で行き違いができます。

 駅舎、もとい、便所[⑤]。しかし、ただでさえ周囲が暗いというのに、この便所には、どう見ても照明が点いていませんから、冷やかしで中に入る気にすらなれませんでした。別の人の死体が出てきそうとか、そんなことは考えませんが、碌な手入れもされていない便所特有の悪臭や、蛾だの蜘蛛だの、そんなものがあるのだろうと考えると、とてもとても・・・。

 朝、夕方、夜にそれぞれ1往復の、計3往復の発着しかないことを示す時刻表[⑥]。見ての通り、列車時刻の都合上、宗太郎駅を効率よく訪ねようと思ったら、必ず延岡側を拠点にする必要があります。3往復でも十分に少ないですが、2018年3月のダイヤ改正によって、その本数はとうとう1.5往復にまでなり、下りは朝の1本のみとなってしまいました。

 駅前には、かつては駅員が立っていたであろうフネの残骸と、駅舎の基礎であろう部分が残されていました[⑦]。今となっては、当然のごとく無人で駅舎もない宗太郎駅ですが、それでも、かつては駅舎を持った有人駅であったことが分かります。無人駅となったのは1972年ですが、駅舎はその後もしばらくは存置され、少なくともJR化の時点ではまだ残っていたそうです。

 (私以外の)誰が聞くというわけでもない、列車の接近を知らせる自動放送が流れました。「特急かな」などと考えながら、遠目に駅を見ていると・・・、徐々に大きくなったその音は、電車特急らしからぬもの。そして駅を通過したのは、貨物列車でした[⑧]。なお、意外にも、日豊本線を走る貨物列車は少なく、定期で走るのは2往復で、そのうち宗太郎駅を通過する定期列車は、たったの1往復です。

 駅に停車する列車が3往復(現在は1.5往復)なら、バス停に停車するバスも1日に3往復です[⑨]。しかも、このバス路線(宗太郎線)は、普通のバス路線ではなく、予約に応じて運転する「デマンドバス」のようなので、利用の申し込みがなければ、運転もされません。そういう意味では、鉄道より深刻かもしれませんが。

 利用客の減少によって退廃してしまった駅とは裏腹に、駅の近くを通る道路は、モータリゼーションによって多くの自動車が行き交って・・・、いませんでした[⑩] [⑪]。夜だから(と言っても、まだ20時台なのですが)というのもあるかもしれませんが、それにしても、車が全然やってきません。であれば、当然、自転車も人も通りません。これがますます駅の不気味さと秘境感に拍車をかけます。

 朽ち果ててしまった廃屋に、古めかしい書体の「トーア毛糸」[⑫]。人家か、商店か、はたまた倉庫か、この建物が何であったのかすらも定かではありませんが、宗太郎駅周辺に形成されているごく僅かな集落も、月日を経るごとに縮退していっていることは、間違いありません。しかし、こんなものを夜の暗闇で見せつけられてしまうと・・・。

 下りホームには、ごく簡単な屋根とベンチを設けた待合所があります[⑭]。ただし、実際の列車の停車位置(乗降口)は、これとはだいぶ違うところなので、ここでのんびりしすぎないように!











 宗太郎へ行くときと同じく、帰りの普通列車も、キハ220形1両編成による運転でした。しかし、行きの便がセミクロスシートであったのとは異なり、この便は、オールロングシートとなっていました[①]。私が宗太郎で乗り込んだ時点では、他に乗っていた乗客は僅か1人で、知識として既に知ってはいるものの、県境を越える佐伯〜延岡間の移動需要の少なさを感じられました。

 延岡のひとつ手前が北延岡[②]。延岡市内の駅ですが、2018年3月のダイヤ改正による減便の煽りを受けて、宗太郎駅と同じく、1日僅か3本しか列車が停車しない駅(下り1本・上り2本)となってしまいました。

 列車は21:14に延岡に到着しました[③]。今度こそ今日の移動は終了です。なお、この列車は、ひとつ先の南延岡行きとなっていて、4分停車したのちの21:18に発車します[④]。上述したダイヤ改正の際に、南延岡行きという列車は消滅(南延岡始発は 1本だけ残る。南延岡発佐伯行きの普通列車)し、今では見られない行き先表示となりました。

 1番線に南宮崎行きの特急ひゅうが11号が停車していました[⑤] [⑥]。延岡を出る下りの特急列車は、基本的に宮崎空港行きとなっていますが、空港に行っても乗れる飛行機がないような時間帯(夜)になると、このように南宮崎行きとなります。











 3番線に713系がやってきました[①] [②]。さきほど、宮崎〜佐土原間を移動する際に乗車した車両ですが、そのときは、列車が混んでいたために、この車両の車内をご紹介できなかったので、今ここで改めて触れておきたいと思います。

 特徴その1。車端部はロングシートとなっている713系ですが、ロングシートの割には、背もたれがやたらと高いです[③]。見た感じ、813系のクロスシートから肘掛けを取り払ったものを、そのまま流用しているように思われます。「流用」とは言ったものの、背もたれに肘掛け部の切欠きが見当たらないので、813系で使われていた発生品ではなく、新規に製造したものに見えます。

 ロングシート部も面白いものでしたが、もっと面白いのはクロスシート部で、ここには、485系の普通車で使われていた座席の廃車発生品が使われています[⑤]。しかも、普通列車への転用に合わせた、機能の「オミット」は行われておらず、リクライニングも、背面テーブルも、回転機構も、全てがそのまま残されています。実に贅沢な座席です。

 とはいえ、713系は、あくまでも普通列車に使われる「近郊型車両」です。立ち客の発生は当然想定されていますから、車内には吊り革があります。そんなわけで、713系は、特急型車両のリクライニングシートと吊り革が併存するという、何とも言えない不思議な車内空間を持っています[⑥]






TOP                    10  11  12  13  14  15  16  17  18  19
20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  31  32  33  34
35  36  37  38  39  40  41  42  43  44  45  46  47  48  49  50
51  52  53  54  55  56  57  58  59  60  61  62  63  64  65
66  67  68  69  70  71  72  73  74  75  76  77  78  79  80  81
82  83  84  85  86  87  88  89  90  91  92  93  94  95  96
97  98  99  100  101  102  103  104  105  106  107  108  109
110  111  112  113  114  115  116


DISCOVER どこかのトップへ

66.7‰のトップへ