HB-E300系は全車両が普通車です。座席は回転式のリクライニングシート[①]で、2+2配列で並びます。座席本体は特急型車両の普通車の座席とほぼ同等なものですが、布の座席カバーがかけられていないというあたりが”快速”ということなのでしょう。
もっとも、HB-E300系では、座席カバーがないと言っても、ちょうど頭が当たる部分は革製になっていて、またわずかながらふくらみがあり、非常に簡易的な枕がついていると言っても良いかもしれません[②]。その「枕」の表面には「RESORT HYBRID」の刻印も入っています。
「座席本体は特急型車両の普通車の座席とほぼ同等」と言いましたが、前の座席との間隔については、他のどの特急型車両よりも、こちらのHB-E300系に軍配が上がるでしょう。ご覧ください、この驚異的なまでの足元の広さを[③]。それもそのはず、HB-E300系の座席間隔は、なんと1200mmを誇ります。JRの特急型車両では、普通車は大抵910mm〜1000mm、グリーン車でも1160mmです。グリーン車までもを上回っています。
天井には、前面展望が映し出される液晶画面が取り付けられています[④]。車両(客室、座席が並んでいる範囲)の両端にそれぞれ1台と中央に1台の、計3台があります。HB-E300系には前面展望ができるスペースがあるので、これを積極的に見る必要性は薄いですが、意欲的な設備だと思います。ただ、画質はだいぶ悪かったですが・・・。
13:14に新青森を出ると、次の停車駅は青森で、そこで進行方向が逆になり、青森からは青い森鉄道線へと入ります。決して東北本線ではありません。「青い森鉄道」です。東京〜青森間を結び、日本最長路線の肩書きを持っていた東北本線も、東京〜盛岡にまで短縮され、実に203.9qもの距離が削られました。
13:39に到着するのは浅虫温泉駅[⑤]。浅虫温泉は東北新幹線の新青森開業の恩恵をあまり受けないところとされ(以前はJRの特急が停車し、また青森⇔東京を新幹線と白鳥・つがるで移動する場合は必ず通るところだったが、今ではどちらでもなく、JR→青い森鉄道で運賃上昇、その他いろいろマイナス点あり)ていますが、実際のところはどうなのでしょう。さすがに窓越しに駅を見るだけでは何も分かりませんが・・・。
ここで、大館駅で受け取った2つの鶏めし弁当のうち、あけぼの号で食べないでおいた、普通の鶏めし弁当を昼食として食べます[⑥]。しかし、広い1200mmという座席間隔でありながら、背面テーブルはごく一般的なもの(手前に伸びたりしない)なので、背面テーブルに弁当を置くと写真のような具合になり、手元から遠く、かなり食べにくいです。
もっとも、全座席の脇に小型のインアームテーブルがあるので、背面テーブルに弁当やお茶を置くと、どうにも遠すぎていまいち食べにくい、という場合はそちらを使う手もあります。
野辺地には14:02に到着します[⑦]。ここまでは、雪は降っていないか、あるいはちらちらと少しだけ降っているという程度で、野辺地に到着したときも雪は降っていませんでしたが、気がついたら写真のような雪の降り方になっていました。列車は野辺地で進行方向を再び変え、また、野辺地からはJR大湊線へと入ります。
一つ驚いたことは、野辺地で乗ってくるわ乗ってくるわで、一気に車内が満員に近くなったこと。正月にリゾート列車に乗ろうとする人なんてそうそういないだろうと踏んでいただけに、ほぼ満員になるほどの盛況となるとは思ってもいませんでした。青森駅で窓側の指定席が取れなくて「あれっ」とは思いましたが、せいぜい窓側の席は全部埋まっているのかな、ぐらいにしか思っていなかったので・・・。しかしなぜ野辺地から?青森なら分かるが。
乗ってくる人の様子を見てみると、地元の人と思しき人が結構多かったような気がします。大湊線は本数が非常に少ないので、リゾートあすなろ下北号が指定席料金の必要なリゾート列車であるといえども、地元の人には”増発列車”感覚なのでしょうかね。別に、運賃に+510円を払えば乗れますから、乗車のハードルは低いですしね(それで、絶対座ることができて、普通のキハ110系などよりも快適なリクライニングシートが使える)。
大湊線は、定期列車では1日に9往復しか列車がないというローカル線です。ですから、私はてっきり「そんなに線形が良いわけでもなく、のんびり、ゆっくりと走るのだろう」と思っていたのですが・・・、実際には大湊線は地形の起伏があまりなく、曲線も少なくて直線が多いというなかなか優れた線形の路線で、リゾートあすなり下北号も、大湊線で直線を飛ばして(と言っても80〜85q/h)走るという、私の予想を覆す走りを披露してくれました。
晴れているときの雪原は、空の青さと地上に降り積もった雪の対比が鮮やかで美しく、良い景色になりますが、荒天だと、逆に冬の雪国の厳しさを伝える景色に様変わりします[⑧]。春が訪れるまでに、このような厳しい状況が何度繰り広げられることでしょうか。透明な窓を隔てて広がるモノトーンの景色の寒々しさは、車内の温かい暖房との対比と言えます。
青森〜野辺地では、私が乗っていた1号車が進行方向でしたが、野辺地で2号車が再び進行方向になりました。わざわざ隣の車両の展望スペースに移動してまで前面展望をするのは面倒くさかったので、進行方向反対側の1号車の展望スペースで、ちょっと後面展望を楽しんでみました[⑨]。雪煙が絶え間なく舞い上がり、その雪煙と運転室の窓に付着した水滴が視界を濁らせますが、まあ、これはこれで冬の雪国らしいということで・・・。
大湊の1つの前の駅、下北で半分以上の乗客を一気に降ろしたリゾートあすなろ下北3号は、15:02の定刻に終点の大湊に到着しました[⑩]。降り立った大湊駅は激しい降雪。冬季はかなりの確率で運休する大湊線ですが、今回は大湊線自体、そしてリゾートあすなろ下北号も運休することはありませんでした。それだけでも十分ですが、この雪の中を走りながら、1分の遅れもなく時刻通りに到着したこと。これは本当に素晴らしいことです。
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