2016年2月終了時現在、私は、北斗星号に通算7回、カシオペア号に通算3回乗車しています。
「一度は乗ってみたい豪華寝台特急」と言われるそれらの列車に複数回乗れたことは、我ながら誇りにできることです。

しかし、同じ本州〜北海道を結ぶ豪華寝台列車でありながら、大阪〜札幌間を結ぶトワイライトエクスプレス号には縁がなく、
2015年3月のダイヤ改正により、トワイライトエクスプレス号への乗車経験がないまま、ついに同列車は廃止となりました。

子供のころに廃止されたというのであれば諦めもつきますが、19歳11か月の時点での廃止ということもあり、私は、
トワイライトエクスプレス号の廃止後も、「本当は乗ることができたのではないか?」という思いに苛まれ続けました。

その後、JR西日本より、例の「特別なトワイライトエクスプレス」の運転開始が発表されました。
これは大変な朗報だ、と思ったのも束の間。その代金はどのツアーでも非常に高額なものであり、いくら乗り鉄に心血を注ぐ性であるといっても、
ただの大学生にとっては、30万円や40万、あるいはそれ以上の金額というのは、さすがに出せるものではありませんでした。

そんなある日にネット上に出てきた日本旅行の広告。それは特別なトワイライトエクスプレス号のものでした。
特に深い考えもなくクリックしてみると・・・、その先のページには、種々の観光などを省く代わりに、首都圏発の2泊3日間(うち車中1泊)で
19万8000円(ロイヤル利用、4度の食事が込み)という、「なんとかならないこともない金額」のツアーが紹介されていました。

特別なトワイライトエクスプレスが2016年3月をもって運転を終了することは、既に発表されていて、私も知っていました。
これを逃せば、今度こそ本当にトワイライトエクスプレス号に乗れることはないだろう。この機会をみすみす逃して良いものか?

もはや高いとか安いとか、そういうことじゃない。たった2つしかない選択肢のどちらを選ぶのか。ただそれだけのこと。
トワイライトエクスプレス号に乗るのも、それのために大金を出すのも、どうせこれが最初で最後のことなんだから。人生で1度のことなんだから。

思い出してみよ。「旅の育て方」の3番に、自分は何と書いたのか?
やはり何よりも「列車に乗って旅をすること」が好きです。となれば、そこにお金をかけないで、いったい何にお金をかけようというのでしょうか?―――


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※各画像はクリックすると拡大します。


注意:今回の旅日記の写真は、一部、私の一眼レフで撮ったものではなく、連れのスマートフォンで撮った写真となっています。



















改札前での点呼を済ませ、特別なトワイライトエクスプレス号が発車する9番線へと向かう。高架駅となっている下関駅では、各ホームに上がるためには、階段やエスカレーターを使って上へ向かわなければならない。だが、「ホームに向かって階段を上る」というただそれだけのことなのに、どうしてこんなにもわくわくするのだろうか。かつてない高揚感。それは夢の時間への期待の表れ。

 2016年2月は、山陽コースの上り便は、毎週月曜日に下関を発っていたが、平日であるにも関わらず、ホームには見物人の姿もあった。特別なトワイライトエクスプレス号の誕生により、トワイライトエクスプレス号(の24系)は、しばしの延命を授かった。しかし、今度という今度は、いよいよ完全なる廃止である。4月以降は、もはや団体専用列車としての任すらも与えられないのである。

 一般客は乗れない団体専用列車でありながら、発車標には、「臨時 トワイライトエクスプレス 10:37」という表示が出ていた。山陽コースでは、大阪〜下関間を往復し、下関からの上りは大阪行きとなるが、「大阪」の表示がなかったことは残念であった。「トワイライトエクスプレス」の表示が再び見られて、そしてそれに乗ることができること。未だに夢のようであり、信じがたい。

 添乗員からもらった記念乗車証は、私が今回の特別なトワイライトエクスプレス号の乗客であることを証明してくれる。下関10:37発大阪行き。大阪〜札幌間運転時代の末期は、下りは大阪を11:50に発車し、「夜行列車でありながら真昼間に出発する」ことがよく知られていたが、それよりも1時間13分も早い発車である。大阪着は翌日の14:19。総所要時間は24時間を軽々と超える。長旅の友はロイヤルである。

 発車標の下段には、これからやってくるトワイライトエクスプレス号が「団体専用列車」である旨が繰り返し流される。時刻表に掲載されて普通に寝台券を販売していた時代を思うと、どうにもハードルが上がったものだな、と思ってしまうが、この列車の歴史を紐解いてみれば、運転開始当初は団体専用列車で、後に時刻表掲載の一般列車になったことが分かる。特別なトワイライトエクスプレスとは、実は原点回帰なのだった。



































ホームにJR西日本の社員が並びだした。これから特別なトワイライトエクスプレス号を出迎えるとともに、その発車を見送る。駅長と助役が代表として出席する程度かと思えば、意外や意外、結構な人数で待ち構えている。下関駅を発着する数多の列車のうちの一本ではなく、1日に1本しかない、まさに「特別な」列車としての丁重な扱いが表現されている。

 10:08頃、EF65形と24系8両からなる特別なトワイライトエクスプレス号がその姿を現した。まず下関駅の側線(11番線)を通り、いったん大阪方面へ引き上げてから、推進運転で入線してくるようである。特別なトワイライトエクスプレスの運転開始当初は、EF65形は特急色であったが、2015年11月、1124号機がトワイライトエクスプレス色となり、専用色のEF81形が牽引していた大阪〜札幌時代を思い起こさせる編成美が蘇った。

 特別なトワイライトエクスプレスの特徴といえば、何と言ってもその編成内容である。大阪〜札幌時代はB寝台もあったが、この特別編成では、全ての寝台がA寝台となった(7号車はBコンパートメント車だが、乗務員専用の控車であり、客は使えない)。全ての寝台がA寝台個室というのは、まるでカシオペア号のよう。展望スイートを備えるスロネフ25を1号車とし、以降、中間スイートの大窓が目立つスロネ25が3両連なる様は、まさに圧巻。

 列車は側線上でいったん停車する。威風と重厚感、そして存在感を兼ね備える立ち姿は、大阪〜札幌時代と変わりない。






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