![]() Page:18 ![]() なお、最高の品質を誇る食事や、アルコールも含まれるフリードリンクなど、良いところについては、今更言うまでもないことだと思いますので、表題の通り、ここは「愚痴をぶちまけるコーナー」、即ち、不満点だけをだらだらと述べてみることにしたいと思います。 今回、私が申し込んだツアーは、「首都圏発/下関までの交通費・1泊1食(ホテルの朝食)・特別なトワイライトエクスプレス(ロイヤル)」を含み、その合計金額が19万8000円(1人あたり)、というものでした。特別なトワイライトエクスプレスに乗るツアーは各旅行会社から結構出ていたものの、20万円を切る価格は、非常に珍しいです。大抵は、ホテルが良かったり、観光が付いていたりしていて、相場はもっと高いです。 今回のものは、安いか、高いかで言えば、「特別なトワイライトエクスプレスのツアー」としては、かなり安いということになります。私のように「とりあえずトワイライトに乗れれば」という人にとっては、最適なツアーでした。ただ、それでも、気軽に乗れるような額ではありません。また、首都圏発と言いつつ、大阪到着をもって解散で、帰りの大阪・新大阪〜東京の切符がないというのもどうかと思いますが。まあ、これは日本旅行の問題ですが。 「特別なトワイライトエクスプレスの部分は、いったいいくら相当なのか?」というのを求めてみます。今回のツアーには、ホテルの宿泊を伴わない「広島発」というプランもあり、これは、特別なトワイライトエクスプレスへの乗車に加えて、広島→下関の乗車券と、広島→新下関のひかり441号の指定席特急券がついてくるというものです。「特別な〜以外の付加要素ができる限り少ないもの」として、広島発を計算のベースに使ってみます。 広島発の金額は166000円。広島→下関の切符代は、合計6670円です。よって、特別なトワイライトエクスプレスの部分は、159330円ということになります。もちろん、詳細な内訳が不明なので、この額がそのまま「特別なトワイライトエクスプレス代」とは言えませんが、参考にはなるでしょう。 さあ、これを高いと思うか、安いと思うか。この旅日記を読んでみて、皆さんは、果たして、約16万円分のことをしていたな、と思われたでしょうか。少なくとも、私は、その金額だけのことをしているようには思えませんでした。 たしかに乗車時間は長かったですが、それは、運転停車と長時間停車の繰り返しによって生まれた産物です。走ったのは下関〜大阪間約560kmのみで、もしこれが普通の列車だとしたら、切符代は、乗車時間ではなく、乗車の距離から決まるので、16万という値札はつけられないはずです。 ちょっと計算してましたが、全ての停車時間を合計すると、総停車時間は1074分と出ました。総所要時間は1662分なので、停まっている時間の方が動いている時間より長いんですよ。これは駄目でしょう。もちろん、乗務員の交代、新快速の退避など、運転上やむを得ない停車は絶対に発生しますが、それにしたって異常です。ミニツアーのための停車を差し引いても、825分も停車していることになります。 さらに百歩譲って、深夜の就寝時間帯の停車時間を差し引きましょう。それでも457分。「走らないと揺れないから眠りやすい」ということで、深夜の停車をありがたがる人はいるかもしれませんが、起きている時間帯の運転停車をありがたがる人は誰もいないでしょう。車窓が動かず、ただただ退屈なだけなんですから。そんな運転停車を、いったい何度繰り返したことか。 「動かないこと」にこれほどの時間を使えるのなら、下関〜大阪だけなどと言わず、大阪〜山陰本線経由〜下関〜山陽本線経由〜大阪のように、ぐるっと一周するくらいのことをやったらどうでしょう(別に多少高くなってもいい)。そこまでは言わないまでも、今回の場合で言えば、もう少し足を延ばして、下関〜大阪〜琵琶湖一周〜京都・大阪くらいしてほしいものです。 で、鉄道好きとしてではなく、普通の旅行客の視点としてまずいと思ったのが、停車に関する案内があまりされなかったということです。 私は、今回の特別なトワイライトエクスプレスのダイヤを知っているので、次はどこで停まるのか、何分停まるのかということを知っていますが、そうでない人は多いはずです。それにも関わらず、何も言わずに停車して、発車するときにだけ「まもなく発車します・・・」とだけ言う場合が多かったです。車掌によっては、まもなく●●に到着します・・・と言うこともありましたが、どの車掌も、何分停車するのかということは、全く言いませんでした。 これは旅行会社側の非も指摘することになりますが、旅程表で案内されていた停車は、光・柳井・和気・吉永のみでした。当然、それ以外の停車もたくさんしているわけですが、徳山の3分、宮島口の12分とかはともかくとして、糸崎の48分、瀬野の75分、中庄の89分などの長時間停車は、予め●●分停車すると知らせておかなければ、あまりにも停まりすぎているために、「何か事故でもあったのか」などと不安になる人もいるはずです。 ミステリー列車に乗せているわけではないんですから、そのあたりのことはきちんと知らせるべきでしょう。いくら食事やイベントが充実していたとしても、情報の不足、不十分な案内があっては、旅行全体の質が大きく引き下がってしまいます。 もうひとつ、オーディオやビデオが使用できないというのはいただけません。第1編成・第2編成・第3編成の寝台車を混成した編成で、オーディオ・ビデオのシステムに互換性がないことが原因であるらしいですが、「豪華寝台特急」としてその名を馳せてきたわけですから、それらの装置が使えないとなると、設備の充実度が一気に下がってしまいます。「豪華寝台特急」としてトワイライトエクスプレスを知ってきた人にとっては、大変残念でしょう。 残念・残念でないだけで済めばまだ良いですが、今回の特別なトワイライトエクスプレスの場合、退屈な運転停車がたくさんあったわけです。福山の約6時間は言わずもがな、瀬野の75分、中庄の89分などは、映画1本が視聴できてしまうくらいの停車時間です。こんなことを見越してか、「暇つぶしの雑誌・新聞」が配布されましたが、ここはやはりオーディオ・ビデオをきちんと使えるようにしておくべきでした。 そして、ミニツアーの内容があまりにも貧弱すぎました。「ミニ」だというのは分かりますが、約16万円の行程についてくるものとしては、内容が薄かったです。簡潔にまとめれば、柳井では、ボランティアガイドの話を聞いて、土産物屋に寄って終わり。和気では、やはりガイドの話を聞いて、作陶の様子を見て、抹茶と和菓子を食べて終わり。何かの制作体験をつけるか、あるいは別の駅でもミニツアーを催行し、回数を増やすか。 鉄道好きとしていただけなかったのは、やはり、何と言っても、福山で6時間も停車して夜を明かしたことです。「夜通し走り続ける」「夜景を部屋を消した室内から眺める」「静かな室内でひたすら走行音を楽しむ」といったことこそが夜行列車の醍醐味だと思うわけで、ずっと停車していたら、列車内で眠ることはできても、そういった醍醐味は味わえないわけです。 また、停まっている方が揺れなくて眠りやすいという声もあるのでしょうが、「動く夜行列車」に乗り慣れている私からすれば、あの揺れが眠気を誘うというもので、ピタッと停まっていては、かえって眠りにくいものでした。まあ、鉄道好きでもなければ、そんなことは思わないんでしょうけどね。 しかし、もしその6時間の間、停まることなく走り続けていたら、下関〜大阪間約560kmだけというみみっちいことにはならなかったでしょう。上述したように、より走行区間を伸ばすことができたはずです。走行区間が長くなれば、それだけ様々な車窓が展開されるというわけで、私のような鉄道好きに限らず、一般の方からしても、より楽しいと感じられたのではないかと思います。 まあ、走行区間を伸ばさないにしても、あれだけの運転停車があるならば、それを削って出発を後らせることもできたでしょう(到着を早めるのはあまり意味がない)。出発を後らせれば、下関観光をしてからトワイライトエクスプレスに乗り込むということも可能だったはずです。今回、観光は実質柳井と和気のミニツアーだけでしたが、そこに下関観光も付け加えられれば、もっと充実したツアーになったことでしょう。 もっとも、これはJR西日本がダイヤを動かしてくれなければどうにもならないので、日本旅行の問題ではないと言えるでしょう。ただ、そこは旅行会社とJR西日本が「出発前に観光を入れる時間を作れないか」という協議をする価値はあると思います。下関観光をつけることで料金が多少増しても、もともとそれなりの金額を払える人間の集まりなので、「それで●●円増えるなんてお断り」とは言われないでしょうし。 今回、実は、車内で紙のアンケートが配布され、大阪到着前に回収されるということがありました。このような旅に望むこと、良かった点、悪かった点などが設問として設けられていました。質問者は記されていませんでしたが、恐らく、JR西日本でしょう。 そもそも、この特別なトワイライトエクスプレスというもの自体、トワイライトエクスプレス瑞風のプロトタイプというか、実証実験のような側面を十分に孕んだ列車だったと思います。「次の検査期限が来るまで使い倒そう」というより、それ以上に、JR西日本としては、トワイライトエクスプレス瑞風の運転に当たってのデータが欲しかったはずです。何せ、本格的なクルーズ列車の運行は初めてでしょうから。 運行毎にアンケートを配布し、そこで出てきた良かったところ、悪かったところを集約し、トワイライトエクスプレス瑞風の運行反映しようということなのでしょう。車両ばかり突き詰めても、具体的なツアー内容が伴っていなければ、現在運転している特別なトワイライトエクスプレス以上に高額な料金をとり、目の肥えた富裕層がやってくるであろう瑞風では、満足してもらうことができません。 不足している点、不十分な点はたくさんありましたし、何より、特別なトワイライトエクスプレスの部分に約16万円分の価値があったか、お得感があったかといえば、それは否定しなければなりません。大阪〜札幌時代であれば、スイート利用で昼・夕・パブ・朝の全てをきっちり食べ、グッズを買い漁ったとしても、そんな額にはなりません。ミニツアーを内包した額であることを考慮しても、かなりの割高感は否めません。 ただ、結局、満足したのかどうかで言えば、私はそれなりに満足できました。これは重要です。「満足できなかった割安ツアー」よりは「満足できた割高ツアー」の方が総合的には楽しいわけで。食事についてはケチのつけようがありませんでしたし、料金などを気にせずに飲んでいけるフリードリンク、様々なグッズが入手できるじゃんけん大会などには、かなりの高評価を下して良いと思います。 私は「死んでもトワイライトエクスプレスに乗らねばならん」と思っていたタチなので、約20万円+αを突っ込んだことは何ら気にかけていません。高いとか安いとかではなく、「憧れ倒していたトワイライトエクスプレスに乗れる」ということが全てだったと思っています。「大阪〜札幌時代に切符購入の努力を怠り、結局乗り逃した人間なのに、20万円出したら乗せてくれた」と思えば、そんなに悪い話でもありません。 で、最終的に、こうやってずらずらと愚痴をこぼしてきて得たひとつの結論は、「割安とか割高とかを感じようとする一般人には、こういうものは向いていないな」ということ。現在のななつ星、そして今後のトワイライトエクスプレス瑞風、トランスイート四季島は、どれも富裕層向けに走るクルーズトレインです。富裕層というのは、ポンと気軽に金を出せる人たちなのであって、いちいち割安・割高・得・損のことなんて考えもしないはず。 今回、私は、約20万円+αということで、さすがに恐れ戦きましたが、お金のある人たちからすれば、「なんだそんなもの」というところでしょう。トワイライトエクスプレス瑞風、トランスイート四季島は、特別なトワイライトエクスプレスよりも更に高額な料金が設定されるはずです。私も含めて、つい損得で良し悪しを論じたくなるように人たちは、やっぱり、こういう列車は不向きだということです(笑) ![]() DISCOVER どこかのトップへ 66.7‰のトップへ |