Page:3

※各画像はクリックすると拡大します。


















ロイヤル。それは、1人用の個室寝台の頂点に立つもの。特別なトワイライトエクスプレス号では、全てのB寝台車が編成から外れ(客が使える車両という点において)、寝台車は、全てA個室寝台車となった。それゆえ、この列車には、ロイヤルとスイートしか存在しない。大阪〜札幌時代は、ロイヤルは、人々の憧れとなる上級寝台であったが、現在の特別編成では、逆に最下位の寝台となってしまっている。

 落ち着きを払い、重厚さも持ち合わせる木目調の内装。室内で歩き回れるほどに広いその空間。繰り広げられる車窓を堪能できる大きな窓。快適なひとときを約束する、ゆったりとしたベッド兼ソファー。革カバーの列車案内を載せて、ここにやってきた「主」を歓迎する椅子。豊かな曲線が芸術性を醸し出すテーブルランプ。思わず「これが鉄道車両の中なのか」と驚いてしまうその質感と豪華さは、今も失われていなかった。

 第1〜第3編成の車両を混成したことで、ビデオ・オーディオ装置の互換性がとれず、それらが停止されているのは残念だが、ロイヤルを大きく特徴づけるシャワー室兼洗面所は、きちんと利用可能になっていた。入浴、歯磨き、排泄などが、自分の部屋にいながらにして行えてしまう。シャワーのお湯が出る時間は20分となっていて、2人で利用する場合でも十分な持ち時間の設定となっている。

 列車から下車して向かうミニツアーも含めると、大阪までの所要時間は約28時間となり、かなりの長丁場となるが、このロイヤルであれば、終始快適な時間を送ることができるであろう。一晩しか使えないのがもったいなく思われるほどである。

 大阪〜札幌時代のとき、トワイライトエクスプレス号のロイヤルの寝台券を購入しようとしたことが何度かあったが、いずれも失敗に終わってしまった。スイートとロイヤルしかないこの特別編成では、ツアーに参加すれば、最低でもロイヤルが保証される。しかし、一方で、「どうせ乗るならスイートに・・・」と思ってしまったことも事実。幸か不幸か、スイートは展望も中間も空きがなかったのだが、贅沢は望めばキリがない。



































そして10:37、見物人やJR西日本の社員らに見送られながら、列車は下関を発った。下関〜大阪間は約560kmで、大阪〜札幌の約1500kmと比較すると、約37%にしか過ぎない。そこを約28時間かけて走ろうというのであるから、いかにのんびりと進んでいくのかということが分かる。この先には、いくつもの運転停車や長時間停車が控えていて、下関から10分ほどで到着する新下関では、早速18分の運転停車となる。

 トワイライトエクスプレス「らしさ」をどこに見出すか。寝台列車として列車の中で眠れることか。設備が充実していて豪華なことか。食堂車があることか。青函トンネルを通って北海道へ行く(行った)ことか。人によって考えは違うであろうが、殊に運転区間という点でいえば、下関〜大阪間という、大阪〜札幌時代はそうそう走ることのなかった、「普通ではない」運転区間であることは、かえって面白く、この旅をより印象深いものにしてくれる。

 室内に革カバーで装丁された列車案内があったので、ちょっと開いてみた。すると、見開きの右側に、「大阪−札幌を結ぶ豪華寝台特急 トワイライトエクスプレス」と書かれたパンフレットがあった。その内容は完全に大阪〜札幌時代のもので、この特別なトワイライトエクスプレス号では通用しない事項も数多くあったのだが、大阪〜札幌時代のパンフレットを置いていたのは、単に作り直すのが面倒だったのか、それともあえてだったのか。

 ともあれ、少なくとも、私にとっては嬉しいことであった。大阪〜札幌時代にトワイライトエクスプレス号に乗車することは叶わず、このパンフレットを入手することもできなかったのだが、今ここで、遅ればせながらその入手を果たせた。これで少しは溜飲も下がったところである。




 

DISCOVER どこかのトップへ

66.7‰のトップへ