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無線機を持った2人の作業員が機関車先頭部のステップに立つと、特別なトワイライトエクスプレス号はゆっくりと動き出し、大阪方面へと移動していった。EF65形を先頭として、トワイライトエクスプレスの象徴・スロネフ25、両端にロイヤル/中央にスイートを配するスロネ25×3、屋根まで食い込む大きな窓が並ぶサロンカー・オハ25、走るレストランの名がふさわしい食堂車・スシ24・・・と、トワイライトエクスプレスを代表する車両が次々と目の前を流れていく。最後尾を務めるカニ24には、もちろん、絵入りのテールマークが表示されている。

 その後、10:15過ぎ。先ほどの作業員が電源車へと移動し、その電源車を先頭とした推進運転により、下関駅9番線に、ついに特別なトワイライトエクスプレス号がやってきた。その光景に、一瞬、上野駅13番線に入線してくる北斗星号の姿が重なる。東の北斗星号、そして西のトワイライトエクスプレス号。前者は2015年の8月半ばまで臨時列車として運転を続けたが、結果的には、トワイライトエクスプレス号の方が生き長らえることとなった。

 方向幕を見てみると、嬉しいことに、「トワイライトエクスプレス 大阪」の表示が出ていた。というのも、トワイライトエクスプレス号が団体列車として走る場合、これまでは、その行き先に関わらず、駅名がない「トワイライトエクスプレス | Twilight Express」の表示が出るのが慣例になっていたのだ。特別なトワイライトエクスプレス号は団体列車であるが、駅名を含むコマを出してくれた。やはり目指すべき駅の名は見たいものである。

 電源車、7号車、6号車・・・と、目の前を客車が通過していく。電源車と食堂車以外の各車両は、窓がスモークガラスとなっていて、ホームからは、その中の様子が窺いにくい。これから始まる華麗なる長旅の舞台とは、いったいどのようなところなのか。車内に入ってみなければ、それは分からない。見えそうで見えない歯がゆさ。早く乗り込んでみたい。それがまた旅情を掻き立てる。






































入線が完了すると、ホーム上で待機していたJR西日本の社員たちが、乗降口の前にマットを敷き始めた。それだけではない。その後は、マットの近くで直立し、この特別なトワイライトエクスプレス号に乗り込むツアー客ひとりひとりに挨拶をしていくのだ。些細なサービスのようにも思われるが、真の豪華さの拠り所とは、いかに設備が充実しているのかよりも、「いかに人の手でもてなせるか」にあるのではないだろうか。

 あと5分ほどで発車というころ、JR西日本の社員たちが、「下関へまたお越しくださいませ!」と書かれた横断幕を見せてくれた。下関を後にする時間はまもなくだ。今回の特別なトワイライトエクスプレス号のツアーでは、首都圏発・北陸を選ぶと、下関で前泊するようになる。それゆえ、昨日は下関周辺をぶらりと観光する時間があったのだが、下関の全てを見ることはできなかった。いずれまた訪れる機会が得られることを願おう。

 発車時刻が近づいてきている。そろそろ乗り込むこととしよう。今回、我々には、3号車1番室のロイヤルが割り当てられた。先ほどのマットは、もちろん、3号車の乗降扉の前にも敷かれている。マットの先にあるのは、夢にまで見たトワイライトエクスプレス号の世界である。マットへ近づく。それを踏む。ステップに足を乗せる。そして、歩みをもう一歩前へ踏み出してみる・・・。

 ホームとデッキ。距離にして数十cmしか離れていないが、その間には、明確な壁がある。日常と非日常。世俗と超俗。たった1枚の扉を隔てて、全く違う世界が隣り合う。今、その扉は開いている。特別なトワイライトエクスプレス号。それは、閑静にして豪壮な、ひとつの新しい世界への招待。




 

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