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記念になるものといえば、下関発車後、和菓子や新聞、暇つぶしになる雑誌などが入った紙袋が渡されたのだが、その中には、乗車記念証やカード、特製シールなども入っていた。乗車記念証はともかくとして、カードと特製シールは、市販の名刺サイズのカードやラベルにインクジェットプリンターで印刷したことが素人目にも分かるほどで、高品質とは言い難いが、客のためにと手作りしたことが伝わってくる。

 さて、そのころ、列車は新山口にやってきていた。ここでは16分の停車時間が設けられているが、乗降扉は開かず、完全な運転停車である。下関〜大阪間約560kmを28時間弱もかけて走るということで、このような運転停車や長時間停車が繰り返されることは分かっていたが、列車が走らないということは車窓も変化しないということであり、それは誠に退屈である。ロイヤルのせっかくの大きな窓がもったいない。

 列車は13:02に新山口を発車し、山陽本線を東進する。停車はたしかに多いが、駅間での異常なノロノロ運転は起こらず、走行中は、寝台特急らしい、心地よい走行音と揺れ(3号車1番室は台車の真上!)を楽しむことができる。「寝台特急」と書いたが、ダイヤ上は、この列車は「臨特急客9040」となっている。臨時・特別急行・客車・第9040列車。お世辞にも特急らしい走りではないが・・・、ダイヤ上の扱いでは、たしかに特急列車なのである。

 防府を通過してから5分ほどで、瀬戸内海が見えてきた。勘の良い方は既にお気づきであろうが、大阪〜札幌時代の編成をそのまま組み替えた場合、各個室は、山陽本線では山側になってしまう。瀬戸内海を各個室から眺められるようにするために、山陽コースの運転前には、各個室が瀬戸内海側に来るように方転される。そして山陰コースで運転するときは、やはりまた方転を行い、各個室が日本海側に来るようにしている。




































車内放送で「13:30頃から、サロンカーにおいて、ヘッドマークのレプリカを使った記念撮影会を行う」との案内がされた。それに合わせて、我々もサロンカーへと向かったが、そこには既に多くの人がいた。撮影会に合わせて出陣してきた人もいるであろうが、サロンカーで息抜きをしていたという人もいるであろう。天井にまで食い込む大きな窓と、ゆったりと寛げるソファー。こんな車両が1つあるだけで、旅はますます楽しくなる。

 ひとまず適当なソファーに腰を下ろすと、飲み物はいかがかと尋ねられたので、リンゴジュースを頼んだ。既に記したように、深夜帯を除き、特別なトワイライトエクスプレス号では、常時フリードリンクが提供されている。やってくる飲み物は、もちろん、サロンカーで寛ぎながら飲んでも良い。ほどなくして届けられたリンゴジュースは、果肉がたくさん入った上等なものであり、「こんなところまで高級にしているのか」と驚いたものである。

 写真撮影の順番が回ってきたので、車掌も交えて、3人で記念写真を撮ってもらった。これでまたひとつ、特別なトワイライトエクスプレス号での思い出ができた。聞くところによると、このヘッドマークのレプリカは、JR西日本が制作したものではなく、トワイライトエクスプレスが好きな有志が制作し、記念撮影用に、と、JR西日本に寄贈されたものであるという。色合い、絵柄、大きさなど、いずれも実物を忠実に再現している。

 裏面を見てみると、特別なトワイライトエクスプレス号に乗務した車掌たちのサインが入っていた。この列車に乗務したときは、ここにサインを入れるのが習わしになっているらしい。今日乗務している車掌のものも、早速書き込まれていた。

 有志がこのレプリカを作ったということもそうだが、殊にトワイライトエクスプレス号に関しては、本当に「この列車を愛する」人が多いものだと感じる。団体専用列車になった今でも、リピーターがしばしば乗ってくるとのことだが、そうさせる「愛」を育ませる何かが、この列車には存在している。




 

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