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列車は14:26、光に到着した。ここには57分間停車するが、乗降扉も開き、ホームに出ることができる。下関は入線から発車までの時間がそれほど長くなく、また、写真撮影のためにやってきた人も入り乱れていたゆえ、トワイライトエクスプレス号の写真を満足にとれなかったという人も多かろう。57分という長い停車時間を使えば、トワイライトエクスプレス号の写真を、今一度じっくりと撮れるはずだ。

 ホームから各車両を見てみると、どの窓もやけに色が濃く、中が見えにくいということに気が付く。実際、電源車と食堂車を除き、トワイライトエクスプレス用の24系の窓は、「内からは見えるが外からは見えない」、特殊なマジックミラーを使用している。改造・落成当初は普通の透明ガラスであったが、特に展望スイートの客から「興味本位で覗かれる」「落ち着かない」「プライバシーの侵害」といった声が上がったため、取り替えたという。

 とはいえ、トワイライトエクスプレス号の乗客たるもの、じろじろと覗かれることがあったとしても、むしろそれを誇り、「どうだ、いいだろう」と優越感に浸りたいものである。だいたい、大きな窓をつけて地上を走る列車に、外界から隔離されたような高層階のようなプライバシーを求めること自体が間違いであろう。覗きこまれた際には手を振ってやり、この素晴らしい列車の住民であることを自慢してやろう、というくらいの気概を持たなければ。

 トワイライトエクスプレス号が「廃止」された理由は車両の老朽化と案内されているが、真の理由はそれではないことは、鉄道ファンの間では広く知られていることであろう。ただ、ツッコミたいことは色々とあるが、外板の浮き上がりが見られるなど、車両の老朽化が進んでいること自体は、決して嘘ではないようだ。種車の落成時期から計算すれば、車齢は相当なものである。

 食堂車を除き、全ての車両が24系の改造車というわけだが、展望スイートの三枚窓が特徴的なスロネフ25、天井にまで達する大きな窓が目立つスロネ25、そのサイズの窓が5枚も連続するオハ25など、かなり大がかりな改造が行われている。Bコンパートメントとして使われたオハネ25・オハネフ25以外の24系改造車は、いずれも原形からは大きく装いを変えている。

 JR西日本が所有していた寝台客車は、方向幕が黒地であることが特徴的であったが、トワイライトエクスプレスでは、昔ながらの白地のものが使われている。他の一般的な寝台列車とは姿かたちも志向も大きく異なるトワイライトエクスプレス号にこそ、新鮮さとデザイン性に満ちた黒地の方向幕が似合っていたように思われる。そこにあえて「昔ながらの」様式を取り入れた。新しくて特別な列車だからこそ、「初心」「伝統」を忘れないのだ。






































引き続き、EF65-1124が列車を牽引する。既に専用色に塗られたEF81形が敦賀にあるのだから、それらに牽引させても良いのではないかと思ってしまうのだが、山陽本線でトワイライトエクスプレス号を運転するときは、以前からEF65形が使用されている。この1124号機は、2015年秋の全般検査に合わせ、わざわざこの色に塗り替えたもので、特急色のEF65形よりも、より「トワイライトエクスプレス」らしさを演出してくれる。

 ここ光駅では、ちょっとした出迎えがあった。ホームに降りたなり視界に飛び込んできたのは、光市のゆるキャラ「ひかるちゃん」と、光市出身のかの総理大臣「伊藤博文(に変装した人)」であった。光は長く停車するだけで、立ち寄りとすら言えないが、彼らによって、乗客たちに「光」という街を植えつけられれば、光市もご満悦であろう。これで光を覚えてもらえれば、いつか観光でまたやってきてくれる可能性が生じるのだから。

 発車時刻は15:23であるが、点呼をとって全ての参加者がいるかを確認しなければならないため、実際には、早めに車内に戻っておくように催促される。この辺りは、いかにもツアーの専用の団体列車らしい。私も3号車1番の部屋へと帰ったが、もう皆自室へと戻ったのか、個室前の廊下はひっそりと静まり返っていた。デッキにせよ廊下にせよ、木目調で近代的な内装は、とてもここが24系の車内であると思わせない。

 光を発車した列車は、柳井を目指して進んでいく。何となく気が向いてサロンカーへ足を運んでみると、そこはもぬけの殻で、乗客や添乗員の姿は見られなかった。人の姿がないことで、サロンカーの全体が見渡せるようになったが、改めて、その窓の大きさには感嘆する。そんな大きな窓が、車内の左右に連続して配置されているのだから、車窓の流れ方は豪快そのもの。まるでオープンカーに乗っているかのようである。




 

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