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しくない」と思った光景は初めてだ。
 洒落たバーか、あるいは書斎の一角か。しかし、流れゆく車窓と走行音は、ここが紛れもなく列車の中であることを教えてくれる。かつて20系は「動くホテル」と称されたが、今この瞬間、我がカシオペアスイートは、動くホテルとなっていることはもちろん、さらに「動くバー」「動く書斎」となった。
食堂車の営業が終了 いよいよ夜の世界へ
 リズムよく走行音を刻んでひた走るカシオペア。食堂車での晩餐やラウンジカー訪問、車内販売でのグッズ購入など、ひとたびカシオペアに乗れば、やること・やるべきことはたくさんあるが、それでも、基本的な過ごし方は「流れゆく車窓を見ること」である。
 メゾネットタイプのカシオペアスイートの場合、展望タイプでの後面展望のような車窓は楽しめないものの、2階と1階という概念があるため、時々上下階を行き来して視点の高さを変えられるのが面白い。1階からの視点の低さは、駅通過時に、眼前に迫り来るホームという迫力ある車窓を見せつける。
 ベッドのすぐそばに窓があるとなると、例え寝床に入っても、すぐに寝入ってしまうのは惜しい。寝室は1階にあり、またベッドは窓の下辺よりも低い位置にあるため、横になりながら車窓を見るのは、やや難しい。だが、窓越しに入ってくる様々な色の光を見ているだけでも、鉄道の寝台車ならではの貴重な体験ができていると言えよう。
 食堂車のパブタイムは23:00をもって営業終了となり、本日はこれで店仕舞いである。翌日は6:30から営業を開始する。23:00の段階では、12号車の売店、ワゴンによる車内販売も既に営業を終えており、各部門を担当する乗務員の休息の時間が始まる。また、乗客においても、もう寝床に入った人もいることであろう。カシオペアの車内での人の動きは鈍くなり、人々の興奮もしばし鎮まる。
 だが、運転士や車掌が眠りに就くことは絶対にありえないし、列車が明け方まで停車し続けるということもない。人々が夢見心地の中にあっても、止まることなく動き続けるもの。それが「夜を行く列車」である。
 列車は23:14に盛岡に到着する。かつての北斗星1号ならいざ知らず、カシオペアでは、ここ盛岡から乗車する人の姿は見られなかった。既に食堂車の営業は終了しているし、盛岡からの乗車となると、カシオペアの全てを楽しみ尽くすことはできない。
 ホームの青森寄りでは、ひっそりと機関士
の交代が行われ、北の大地へ向けてのさらなる北進の準備がなされた。
いつしか雪深くなり列車は津軽海峡へ
 上野から東北本線を走り続けてきたが、盛岡からはいわて銀河鉄道線となる。また、目時〜青森間は青い森鉄道線であり、しばらくの間、第三セクター線上の走行が続く。
 ここまで、沿線の積雪はさほどでもなかったが、盛岡から先の区間は雪深い。列車はいつしか白い絨毯の上を走るようになり、雪煙を巻き上げては、それが闇の中にすっと消えていく。青函トンネルを抜けて北の大地へ上陸する瞬間もそれなりに感動的だが、新幹線に頼らずに在来線だけを走り、こんなにも雪が降るところへ来たということに気づくと、「遠くへ来たのだな」とふと思う。これもまた、一種の感動を覚える瞬間である。
 一切の運転停車もなく疾走を続け、数々の駅を通過したカシオペアは、1:50に青森に到着する。発車時刻は2:47であり、青森には、約1時間に渡って停車する。ここでEF510形が切り離され、新たにED79形が連結されるが、メゾネットスイートからでは、どちらの様子も窺うことはできない。
 ED79形は、1号車の前位に連結される。展望スイートでは、その様子を、他の乗客の干渉もなくひとり占めすることができる。今回は1号車3番のメゾネットスイート。1号車1番の寝台券を手に入れることは、今後も目標として抱き続けることになろう。
 2:47、1号車を先頭として、カシオペアは青森を発車する。列車は青森からは津軽線へ入り、しばらくすると、進行方向左手に青森車両センターが現れる。ここでは様々な種類の車両を見ることができ、深夜ではあるが、上野〜札幌間における注目車窓のひとつとして数えられる。臨時のあけぼのでの運用も終了し、廃車も近くなっているであろう青森所属の24系、上野〜青森間でカシオペアを牽引したEF510形などの姿が見られた。
 単線の津軽線を進んで、3:12に蟹田に運転停車する。青森では機関車の交換を行ったのみで、機関士と車掌の交代はここ蟹田で行われる。蟹田という駅は、一般的な知名度はほとんどないであろう。深夜の蟹田、特に有名というわけでもない小さな駅で、人知れずカシオペアを司る人が入れ替わる。
 ここまで、ずっと1号車〜3号車の範囲内にこもっていたが、ちょっとした気分転換でもしようかと思い、12号車のラウンジカーへ行ってみた。ラウンジカーは、青森〜函館間では
▲このベッドで寝るとき人は何を目にするのか とめどなく流れる車窓は何を見せるのか
▲本州最後の停車駅の盛岡に到着 しかしさすがに乗る人はいなかった
▲東北本線は盛岡で終わる 今や青森まで行かない東北本線に違和感はない
▲雪深い線路の上を走る いよいよ雪の量が多くなってきた
▲青森停車中 機関車の付け替えの様子はメゾネットスイートからは窺えない
▲青森車両センターの脇を通過する 様々な車両との出会いが待つ
▲深夜の蟹田で運転停車 ここで機関士と車掌がひっそりと交代する
▲誰もいないラウンジカー しかしBGMが休む間もなく繰り返し流れ続ける





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