鰺ヶ沢から先は、いよいよ本格的に海に近いところを走行する区間が多くなります。このような車窓[①]が見られることも非常に多くなってきます。そしてそれに伴って、車窓(主に、こういった日本海の風)をカメラで撮影する人の姿が見られるようになってきました。乗っている人のほとんどが車窓に興味と関心を持ち、写真を撮るというのは、やはり”旅行者”の利用が多い、リゾート列車らしいこととも言えましょう。
お腹がすいてきたので、そろそろ食事をすることに。リゾートしらかみ号は快速列車と言えども、車内販売が行われます。せっかくリゾートしらかみ号に乗ったわけですから、その車内販売で何か弁当などを買っても良かったところですが、今回は新青森駅の売店で、事前にこの焼き鯖寿司の弁当を買っておきました[②]。「あんましおいしくないのでは・・・」と思っていましたが、予想に反して、なかなかおいしかったです。
いったいどのような吹雪に見舞われたというのでしょうか。窓にへばりついた雪が氷結して何だか凄いことになっている、というような家が何軒も見られました[③]。もはや窓の開閉に支障をきたすのではないか、というような状態になっていました。いかに激しい吹雪があったのかが想像されるところですが、それが1年度の冬の間に何度もあるわけですから、たまったものではありませんね。
深浦は、鯵ヶ沢を出たあと、最初に停車する駅です[⑤]。深浦駅を含む、岩館〜深浦〜鰺ヶ沢の区間は、ただでさえ本数の少ない五能線の中でも特に本数が少ない区間で、深浦から出る定期列車は、1日に上下それぞれ5本ずつしかありません。また下りでは、9:43発の列車の次は17:07発の列車で、7時間24分も間が空きます。ここで青森行きのリゾートしらかみ1号と列車交換を行いました。
うとうとしていたら、いつの間にか雪はやんで、空も青空が見られ、太陽も出ていました[⑥]。太陽の光が海面にきらきらと反射するこの光景こそ、海が最も海がらしく、そして綺麗であるときだと思います(写真は、まだ海面に雲の影がかかっているところが多いですが・・・)。
この晴れた天気も、時間が経つにつれてどんどん磨きがかかり、雲の隙間から太陽が出ているかなという程度の中途半端なものから、車内に日差しが燦々と差し込む、かなり本格的な晴れ模様になりました[⑦]。雪のほとんど降らない茨城県の住民という身分であり、「せっかく冬に北国に来ているなら、雪が降っていなければ」と、旅先で雪が降ることを望んでいましたが、もうここに至るまでに何度も、雪にも、吹雪にも見舞われてきました。
新幹線や航空機の発達により、どうにも「距離」というものを感じにくくなってきたようにも思います。今や青森でさえ、東京から3時間30分もかからないで手に届くという状況です。昔なら、特急はつかり号で8時間以上はかかったところです。その所要時間に「距離」がありました。
今、私はそれこそ、この天候の大きな違いに「距離」を感じています。東京・茨城には、道でも田圃でも、雪はまずありません。一度に大量に降らない限りは、まず残りもしません。では、秋田や青森ではどうなのか。言うまでもなく、そこらじゅうに雪があります。降った雪は残るのが当たり前。
また、東京・茨城では、冬とは基本的に晴れるもの。雪はもちろん、雨でさえもそんなに降りはしません。だいたいの日は晴れで、昇りゆく朝陽の下、肌にピリッと突き刺す朝の寒さを感じるのが日常のことです。一方、秋田や青森では、冬とは基本的に「雪が降るもの」。天気予報を見ていても、明らかに雪が降る日の方が晴れる日よりも多くなっています。
では、つまり何が言いたいのか。時間で距離を感じられなくなっても、天候の違いには、距離を感じさせるだけのものがあるということです。冬の北国では、周りを取り巻くものは雪で、晴れはそんなにあるわけではないもの。今、こうしてリゾートしらかみ号に乗りながら、久々に晴れ間に出会って、冬の北国での晴れの希少性というものを感じています。そういえばこっちに来て、雪が降って当たり前だというように、感覚がすり替えられている・・・。
そんなことに気がついて、そして私はそこに「距離」を感じました。ああそうだ、実はここは東京から700qやそれ以上に離れたところなのだ、と。所要時間の短縮で、日本が縮んだとか小さくなったとか、そんなことを言っても、実は大きさを測っている定規も一緒に小さくなったんだろ、と。所要時間で距離感を狂わせても、事実が見せる「距離」の現実はどうにも隠しようがないことなのです。
岩舘で列車交換。交換相手の列車が進んでいく先の線路は、雪によって完全に覆いつくされていました[⑧]。それだけの雪が降っていたということでもありますが、ある程度の列車の本数があれば、こうもすっぽりと覆われることはないでしょうから、これは同時に五能線の本数の少なさを体現しているとも言えそうなところです。
いつの間にやら、再び天気は悪化していました。川を渡っていきますが、一部は凍結していました[⑨]。この川を渡ると、もう間もなく能代に到着します。能代は、五能線の起点・東能代の隣の駅です。
そして列車は能代に到着しました[⑩]。能代市は人口約5万7000人の街で、奥羽本線と五能線が接続し、トワイライトエクスプレス号を除く全旅客列車が停車する、東能代駅が隣にありますが、より市の中心部に近いのは能代駅の方です。そのため、乗換駅としての性格が強い東能代駅と本家の能代駅を結ぶ、1区間のみの運転の列車が多数設定されています。
「バスケの街」とありますが、能代市にある能代工業高校は、男子バスケットボール部が全国大会で50回以上の優勝をしています。そのため、能代市も自らを「バスケの街」と称しています。写真のゴールは実用できるもので、リゾートしらかみ1号・3号の乗客は、能代駅に停車している最中にフリースローに挑戦でき、成功すると記念品がもらえます。
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