青森駅[①]。そこは、夜行列車界の冬の時代にあっても、「夜行列車の聖地」たる駅でした。例えば、既に夜行列車界がボロボロの状態に陥っていた2010年においても、北斗星号・カシオペア号・トワイライトエクスプレス号・はまなす号・あけぼの号・日本海号の計6種の夜行列車(運転停車だけのものも含む)が発着する駅で、東京駅や上野駅など目ではありませんでした。
それが、今となっては、たまに運転されるカシオペア紀行を除いては、青森駅を発着する夜行列車は、全て消滅しました。トワイライトエクスプレス号(大阪〜札幌時代)を除く、先の5つの夜行列車で青森駅を通過した/乗下車したことがある私は、かつてを懐かしむばかりです。そのうえ、北海道新幹線の開業によって青函特急を失った青森駅は、本州⇔北海道の長距離移動にも関与しなくなり、ただのローカル駅に成り下がってしまいました。
青森駅の駅名標を見ながらそのようなことを考えていると、時刻は1:55になり、約40分間の運転停車を終了して、カシオペア号は、上野駅に向けて再び動き出しました[②]。進行方向は再度変わり、1号車が上野寄りになっています。そして、これから走るのは東北本線・・・、もとい、青い森鉄道線といわて銀河鉄道線。寝台特急の”通行料”が大きな収益源でしたから、カシオペア紀行が通過するだけでも、両社に少しは貢献できるでしょう。
自室の窓には、シャーベット状になった雪が張り付き、この窓を隔てた向こう側にある凍てつく世界の厳しさをうかがわせます[③]。窓を挟んで、片や北国の美しくも過酷な環境があり、片や豪華寝台特急が織り成す、温もりと華やぎの環境がある。その対照的な2つの世界の存在を認知し、そして「温もりと華やぎ」の側に身を置いていることを思い出したとき、乗客たちは、改めて豪華寝台特急の空間に包まれていることを実感します。
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