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 E26系は、ステンレス製の車体をそのまま生かした無塗装仕上げで、それゆえに、ロゴや色帯といった「色があるところ」は、よく目立ちます[①]。E26系は、まさにカシオペア号だけに使われることを前提とした専用車両で、車体そのものに「CASSIOPEIA」とあります。一応、行き先表示機には、北斗星とエルムの表示も用意されているようですが、これまでに「カシオペア」以外を名乗って走ったことはありません。

 全ての乗降扉が閉まり、車側灯が消えると、あとは回送列車としての発車のときを待つのみです[②]。「ステンレス製の車両」は、そこらへんの通勤型車両においてありふれていて、正直なところ、その外観からは、E26系の「豪華寝台列車」としての風格や気品、偉大さはあまり感じられない、というのが本音です[③]。しかし、「見た目はイマイチでも中は凄い」というのもまた、実際に4度乗ってみた者としての弁。

 一般の臨時列車として走っていたころのカシオペア号のダイニングカーでは、その運転における営業が終了すると、折り返し列車でのディナー営業に備え、カーテンを閉めて、列車運行中から既にその準備を始めていました。次のカシオペア紀行(下り)は、1月1日上野発で、今日中には折り返していきませんが、客席のカーテンは下ろされています[④]。車内では、今も準備作業が行われているのでしょうか。

 「うえの」だからカシオペア号が似合うのか、カシオペア号だから「うえの」が似合うのか、それは定かではありません[⑤]。しかし、例えば北斗星号が、かつて一部の臨時列車において、横浜や新宿を始終着駅としたことがあったのに対して、カシオペア号は、今も昔も、関東側の拠点駅は、上野駅を貫き続けています。そのような意味では、カシオペア号と上野駅の間には、確固たる絆があります。











































 上野駅到着後も、案外”しぶとく”13番線に留まり続けたカシオペア号ですが、12:16、約24分の停車の後に、ついに回送列車として尾久に向かって発車していきました[①]。列車からホームに降り立ったその瞬間も、旅の終わりを意識したものでしたが、すぐそばにカシオペア号があったため、それはまだ弱いものでした。しかし、こうして推進回送での発車に立ち会うこの瞬間には、まさに「真の旅の終わり」を感じます[②]

 同じ上野駅13番線からの札幌方面への発車でも、展望スイートを最後尾とするときは、それは「素晴らしい旅の始まり」ですが、機関車を最後尾とするときは、「長旅の終幕」となってしまいます[③]。ホームから手を振るべき相手もおらず、ただただホームを離れ行く姿を見つめるしかないこの時間は、単なる見物人ではなく、実際にひとりの乗客だった立場としては、とてもやるせない時間です。

 とはいえ、今更何を嘆いてもしようがないですから、13番線から発車するカシオペア号のその姿を、最後まできちんと見届けましょう[④]。手に届きそうなところにあったヘッドマークがどんどん小さくなり、赤い尾灯を別れの印のように焼き付けていく光景を、この旅の結びとするのではありません。そこにむしろ、「だいぶ”乗りづらく”なったけど、ツインでいいからまた乗ってみたい」という、次の旅への期待を込めましょう。

 「豪華寝台特急」、「カシオペア」、「食堂車」、「夜汽車」・・・。それらのキーワードが、人々の夢と期待を掻き立てるだけの力を持ち続け、そして人々もそれらの言葉に希望と興奮を重ね続ける限り、カシオペア号は生きることができます。実用性をとんと無視した、楽しさや非日常の演出を使命とする列車の動力源は、他でもなく、単純な「需要」という言葉に押し込められない、人々が内に秘める、もっと前向きで明るい気持ちなのです。










































 カシオペア号が13番線から姿を消すと、我々の目の前に、まだ保護用のビニール袋すらも剥がされていない、設置したてほやほやの真新しい柵が姿を現しました[①]。大理石調の光沢あるホーム表面からは、何やら「ここは特別な場所である」という雰囲気が漂います[②]

 上野駅13番線と14番線の間には、かつて荷物の積み下ろしのために使われていた細長いホーム(作業場)が残っていて、それが「新たな旅立ちの13.5番線」の名称の下、2017年5月1日から運転が開始された四季島号専用の乗降ホームとして活用されることになっていました。このとき、その13.5番線は、四季島号の運転開始に備えて、整備を行っている最中だったというわけです。

 まだ未完成で、舗装されていない土台の面も見えてしまっている13.5番線ですが、専用のラウンジも含め、四季島号という新たな豪華寝台列車を世に送り出すための準備は、着々と進行しています。一方ではこうしたハードが、そしてもう一方では受け入れるためのソフトが。

 カシオペア号は、北斗星号、トワイライトエクスプレス号などと共に、「豪華寝台特急」という、夜行列車の新たな在り方を創造しました。そして今、それらの魂を受け継ぎ(正直なところ、”拡大解釈”の感は否めませんが)、ななつ星、四季島、トワイライトエクスプレス瑞風といった、次世代の豪華列車が次々と芽吹こうとしています。その息吹は―――流れる歳月を糧にして、確実に動き出そうとしています[③]
















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