全長676キロの「偉大なるローカル線」
日本最長路線・山陰本線を乗りつくす旅−16


東萩→飯井/飯井駅
山陰本線1567D (キハ40系)
東萩(10:24)〜飯井(10:45)
10時24分発の1567Dで、次は飯井駅を目指します。

実はその飯井駅こそが、14ページ目の上から4番目で書いた「ある駅で下車をする、という計画を叶えるため」の「ある駅」です。

今回の旅ではキハ181系の特急はまかぜ号に乗車する、ということがまず1つ目の譲れないところでしたが、飯井駅で下車することも、また今回の旅で譲れないことの1つです。
隣の萩駅に到着。

僅かな乗客を拾って、列車はすぐに発車します。
青空と田園風景。夏の日差しが、稲穂をより美しく見せてくれます。

我が家は住宅街にあるのですが、その住宅街をちょっとでも外れるとこれと同じくらいの田園風景が見られるので、田園風景自体は何も物珍しいものではありません。

しかし・・・、日々の喧騒や自分を追い立てるもの、その他全てを忘れて、心を無にして見てみると、実に心落ち着く「魔法のような力を持った」景色に見えます。
10時45分、下車駅の飯井駅に到着。

飯井駅は山と海に囲まれたところにある小さな駅で、「降りるのは自分くらいだろうな」と思っていましたが、隣の三見駅から乗車してきた子供1人も下車しました。

先ほどまで乗っていた列車はワンマン列車だったので、「途中下車です」と運転士に伝えましたが、今の時期に、旅行者が青春18きっぷではなく、普通の乗車券でこんなところで降りるなんてことはまずないでしょうから、特異に見えただろうなぁ・・・、なんて思ってみたり。

まぁそもそも山陰本線をず〜っと通って幡生まで行く切符を買っている時点で、特異なことは間違いなしなのでしょうが(笑)
どうしても飯井駅で降りたかった理由。それは、ホームから日本海を見ることができるという、ちょっと面白い駅だということを事前の調べで知ったから。

「ただ全線乗車するだけじゃなくて、どこか1つ、小さな駅で降りてみたい」と思っていた私は、何か面白そうな駅はないか探しました。そして見つけたのが、ホームから日本海が見えるという飯井駅でした。

「飯井駅で降りてみたい」と思った私は、飯井駅で降りることができないか検討しました。すると、益田駅を7時50分発の列車で発てば、嬉しいことに飯井駅で降りられることが分かりました。

これこそが、益田駅を9時53分に出る列車で出発できなかった理由です。
この飯井駅で下車するために、それよりも1本早い7時50分発の列車で発ったのです。
単式1面1線の小さな駅。それが飯井駅です。
いかにも田舎の駅、ローカル線の駅、というような佇まいです。

列車が出ていけば蝉の鳴き声がホームを包み、車が走る音も滅多に聞こえてこなければ、人の話し声さえも聞こえてきません。

「本当に自然の中にある駅だな」という印象でした。
駅名標。小文字のLとIで、「り」と書いてあるように見えなくもないですね(笑)

駅名を書いたとき、日本語では三重県の津(つ)駅が一番文字数が少なく、ローマ字で書いたときは頴娃(Ei)駅、粟生(Ao)駅などが一番少なくなります。
飯井駅(Ii)もそのうちの1つですが、横幅の取り方は恐らく日本で一番狭いのでは?
写真の中央に駅の待合室が写っていますが、こうして見ると、駅は高いところにあり、集落から行こうとするときつい坂を上る羽目になり、降りるときは走る羽目になります。

この辺りはもう住民の高齢化も進んでいるようですし、少ない列車本数と合わせて、この坂の存在だけでも、鉄道は利用を避けられそうな気がします・・・。

3つ上の写真のように眺めてみたり、そして辺りをざっと歩いてみたりすると、飯井駅近くの集落は昔ながらの造りの家が実に多く、「いわゆる”時が止まったような”というのはこういうことか」と思いました。

決して住みやすくはないだろうし、まして便利でもない。だから正直、雰囲気が良いとか言うだけで住みたいとは思わないのですが、何と言うのでしょう、普通に自宅を中心に暮らしているだけでは得られないものが、ここ飯井駅近くに凝縮してあるような気がしました。
「ホームから日本海を見ることができるというなら、当然、海岸に行くことぐらいできるだろう」という思って駅から歩いてみると、やはり海岸まで来ることができました。いやぁ凄い!

これまで見てきた日本海は全て列車の中からのもので、ただ素通りして見るだけのものでしたが、今はゆっくり、じっくりと眺めることができます。

耳に聞こえてくる、海岸に打ち寄せる波の音は、心を落ち着かせてくれる・・・、のですが・・・。
時折聞こえる銃声が、その全てを台無しにしてくれます・・・。

あれ、でも「この付近は狩猟禁止」って立て看板があったけどな。無視しているのか!?
かねがね書いていますが、その海の水の透明度と青さには驚かされます。
水中にある岩と海藻の姿がはっきりと視認できるだけで、ちょっと感動してしまいます。

水着を持ってきていれば絶対泳いでいましたが、まさか鉄道旅行に水着なんざ持ってくるわけがないですし、こうして写真を撮ることしかできなかったのがあまりにも残念でなりません。

うーん、NHKで放送されていた最長片道切符の旅では、関口知宏がいきなりパンツ一丁で海に飛び込んだりしていたけどな〜。
砂浜に近いところの水の色は、どちらかというと緑に近いものでした。
この日本海でも、私にとっては物凄くに綺麗に見えて、驚愕すべきものでしたが、聞いてみれば沖縄の海はもっと綺麗らしいですね。

鉄道以上に風景が好きであれば、その海見たさに沖縄に行こうと思いますが、沖縄にはいわゆる普通の「鉄道」がないので、鉄道が好きな私は行く理由がありません・・・。
1つ良いと思ったのが、ただ雄大な日本海がそこにある、というだけでなく、すぐ近くには緑豊かな山がある、ということです。

そう考えると、この飯井と言う場所は、本当に自然豊かなところだと思いますし、都市部にいると忘れてしまいそうな「ありのままの自然」が残っています。

今回は夏に訪れましたが、冬になって雪でも降れば、また違った光景が見られそうです。
美しい日本海を十分に堪能して、そろそろ次の列車に乗る準備でもしようかと、駅の方まで戻ってきました。

長門市方には、道路を跨ぐために鉄橋になっている部分がありますが、なにせ単線非電化で、また高架と違って両脇にガードがあるわけでもない(左のはたぶん保線用の足場)のですから、車内からだと宙を飛んでいるように感じそうですね?

進行方向右側を見ていたら、特にそう思いそうです。長さがないのがちょっと残念ですが。
例のきつい坂を上ってホームにやってきましたが、他に列車を待つ人はいませんでした。そして結局、次に乗る列車が来るときになっても、他の利用客は来ませんでした。

木製のベンチがある待合室がホーム上にありますが、この駅周辺の環境、そして無人駅というこの駅自体の性質を考えると、ここで駅寝して1夜を明かす人がいるのではないでしょうか。

条件的には駅寝がしやすそうな気もしますが、どうでしょう、飯井駅で駅寝をされた方、この画面を見ている方の中にいらっしゃいませんか?
11時26分発の長門市行きがやってきました。

これで終点の長門市駅まで移動しますが、間には長門三隅駅があるだけで、終点の長門市駅までの所要時間は僅か13分です。

山陰本線を全線乗車するのに必要な移動距離は、あと87.9キロ。
もう100キロもないとは・・・。

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