キハ31形の座席は転換クロスシート[①]。どうも0系の廃車発生品っぽいよなと思っていたら、実際にもその通りだったようで、キハ31形で使用されている転換クロスシートは、0系の廃車発生品を使用しているそうです。キハ31形は、速度や走る路線のことを度外視すれば、あの0系の転換クロスシートによる旅を楽しめるという、ある意味では奇跡的存在とも言える車両です。
7:24に列車は熊本を発車します。三角線の終点駅である三角へと行く列車ですが、宇土までは鹿児島本線を走ります。その鹿児島本線の線路は、宇土駅を過ぎるあたりまで九州新幹線の高架橋にほぼ並行していて、僅かな時間でしたが、N700系のさくら401号との並走も発生しました[②]。
最初の停車駅は川尻。この駅で、三角からやってきた熊本行きの普通列車と遭遇しました[③]。三角線は宇土〜三角間を結ぶ路線ですが、全ての列車が熊本まで乗り入れているため、熊本〜宇土間では、鹿児島本線の列車だけでなく、三角線に直通する列車も利用できます。そのため、結果として同区間では、利用できる列車の本数が多くなっています。
川尻の次は富合[④]。普通の名前の駅ですが、2011年3月の九州新幹線開業のダイヤ改正に合わせて新設された、新しい駅です。駅名標の中央下の絵を入れる部分(JR九州様式の駅名標では、この場所に何か絵を入れるのが基本)には、800系とN700系が描かれていますが、なぜ新幹線の車両の絵なのか?駅の開業日が九州新幹線全線開業の日だからでしょうか?
いえ、もっと納得のいく理由がありました。富合駅の近くに、九州新幹線の熊本総合車両所があるんですね。列車の車内からも、電留線に停車するN700系の姿などを見ることができました[⑤]。富合駅の駅名標に描かれていた絵は、ちょうどこの電留線で見える新幹線車両たちの並びを描いたものだったのかもしれません。
宇土を出ると、いよいよ鹿児島本線と分かれて、三角線内を進んでいきます[⑥]。三角線内に入って最初の駅である緑川から隣の住吉までの約3.2qは、線路はほぼずっと直線を維持したまま敷設されています。曲線らしい曲線もなく、ずっと真っ直ぐと延びる直線を快走する場面というのは、インターネット上のほかのサイトでは全くと言って良いほど触れられていないようですが、三角線の見どころの1つではないかと思います。
住吉〜肥後長浜間では、島原湾の海岸線に沿って走る区間があります[⑦]。が、そんな区間があるとはつゆも知らなかった私(車窓の見どころとか、そういうのはあまり下調べしない)は、山側の座席を選んでしまっていました。
盲腸線は行きと帰りで全く同じ区間を通らなければならないため、私はあまり好きではありませんが、”行きの列車で失敗したことを帰りの列車で取り返せる”という点ではありがたいですね。ええ、三角からの戻りの列車では海側の座席に座りますよ。
一方、山側では、典型的な農村の風景が展開される区間があります[⑧]。肥薩線のスイッチバックのようなものもなければ、車窓の見どころも海ぐらいで、急行も特急もないし、単線で非電化だし、路線距離も25.6qしかなく、ちょっと地味な感じがする・・・というのが、私の三角線のこれまでの印象でした。もっとも、現在は特急列車として、A列車で行こう号が走っています。これで少しは地味さが薄くなったでしょうか。
8:17、終点の三角駅に到着しました[⑩]。これで三角線の全線乗車は完了です。三角駅は1つの路線の終点駅でありながら、単式1面1線という構造であり、構造だけ見れば、まるで列車交換ができない途中駅であるかのようです。
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