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 山本で対面乗り換えをして乗車したのは、唐津線経由の佐賀行きの普通列車。正直、「また普通列車か」という感じ。今日乗車した列車を振り返ってみても、そのほぼ全てが普通列車で、優等列車は、熊本→博多間で乗車したさくら号のみです。そのさくら号でさえ、座席には座れず、通路でずっと立っていましたから、ある意味、そこらへんの普通列車に乗って立ちん坊だったようなものです。

 そんなわけで、この列車に乗っていることも、もはや苦痛と感じる部分もありました。せめて快速列車ならまだまし・・・、と思うんですが・・・(やっぱり、全ての駅にいちいち停車していると、どうも乗っていて退屈に感じる)。まあ、普通列車しか走っていないとか、特急の本数がかなり限られているとか、そういう路線を乗車する路線に選定したのが悪いといえばそうなんですが。

 いずれにせよ、JR線を全線乗車するとなれば、それらの退屈な路線も必ず乗車することになるわけですから、いつかは経験する退屈な時間を、今回の旅で先取りしたものだと思っておきます。

 17:22に到着するのは厳木(きゅうらぎ)。この駅には、1899年に造られた煉瓦造りの給水塔が、大きな損傷や劣化もなく、きれいな姿を保ちながら残っています[③]。唐津線での蒸気機関車の運用は1973年には終了しましたが、この給水塔は解体を免れたということのようです。駅舎も1930年に建てられた木造のものであり、給水塔の存在も相俟って、厳木駅には昔懐かしい感じが漂っているかもしれません。

 乗客は多すぎず少なすぎずで、車内は「穏やかな夕方」という感じがありました[④]。今日は熊本7:24発の三角行きの列車で1日が始まりましたが、いつの間にか、もう夕方という頃合になってしまいました。今夜の上りのサンライズ瀬戸号で東京に戻ることになっていますから、九州島内にいられる時間も、もうそんなには長くありません。

 長崎本線の架線柱と架線が見えるようになると、間もなく、唐津線の終点(起点)駅の久保田です[⑤]。唐津線の列車は、全て長崎本線に入って佐賀まで乗り入れるため、久保田を始終着駅とする列車はありません。

 唐津市〜多久市〜小城市と通ってきた唐津線ですが、久保田駅は、佐賀市内の駅です。ここから先は佐賀市内を走っていきます(厳密には一瞬だけ小城市内に戻るんですが)。佐賀市の市街地も見えるようになってきました[⑥]

 18:00ちょうどに到着するのは鍋島[⑦]。佐賀駅の隣の駅で、佐賀市の市街地の最西端に位置するという駅です。そして鍋島を出ると、列車はやがて高架橋を駆け上がり[⑧]、終点の佐賀に到着します[⑨]































 駅名標に入れられている絵は鳥ですが・・・、これは、佐賀県の鳥のカササギ(カチガラス)でしょうか[①]。先ほどまで乗車していたキハ47形を見てみると、車両前面の方向幕は「西唐津」となっていました[③]。佐賀駅を発車する唐津線直通の下り列車の行き先は、多久・唐津・西唐津の3種類があります。「唐津行きはもう1駅頑張れば西唐津なのに」とも思いますが、まあ、需要との兼ね合いもあるんでしょう。

 18:09に佐賀を発車していったのは肥前大浦行きの普通列車[④]。2両編成の817系でした。肥前大浦という駅は、このように1つの列車の終着駅とされることもある駅であり、列車の運行上は重要な駅ですが、駅自体の知名度はあまりないように思います。まあ、「知名度はないけど列車の始終着駅にもなる」という駅は、全国には結構ありますけれどもね。九州では、日豊本線の大神(おおが)もその一例でしょう。

 改札口前の様子[⑤]。さすがに県庁所在地の代表駅ですね、駅にいる人の数がやはり多いです(写真の範囲内だけでは人の数が少なく見えるかもしれないが、範囲外にもかなりの人がいた)。「都市部の駅に来たな」と感じるのは、その人の多さはもちろんですが、自動改札機が設置されているからということもあるかもしれません。

 佐賀駅は、国鉄時代の1976年に高架化されたという駅です。この写真[⑦]は南口で、この写真[⑨]は北口ですが、どちらもほぼ同じ造りになっていて、一見しただけでは、どちらがどちらなのかを区別するのが難しそうです。しかも、駅舎の造りがほぼ同じというだけでなく、駅の前でタクシーが横並びで待機するという状況まで同じです(ちなみに、南北の相違点についてですが、駅舎に取り付けられている時計の位置が違います)。

 もっとも、駅前の状況に関しては、南北でだいぶ異なっているので、駅前の様子の写真では、南北を区別することができそうです。6番の写真は南口のもので、8番の写真は北口のものですが、南口の方がより「街」という感じがあります。

 次に乗る列車が発車する4番線のホームに上がると、ホーム上に、自由席特急券の専用自動券売機がありました[⑫]。佐賀〜博多間は、特急であれば所要時間は40分前後(日中)で、もちろん特急を利用する人が多い区間です。ホーム上に自由席特急券の自動券売機を設置しているのも、その利用客の多さに対応してのことでしょうか。

 ちなみに、佐賀〜博多間(上りのみ)では、自由席特急券で特急の指定席車両(ただし最後部の車両を除く)に乗ることができるという特例が設けられています。やはり、博多方面の特急の利用者の便宜を図ってのことでしょう。指定席車両にも乗れるようにすることで、佐賀や鳥栖から自由席特急券を持って乗った人が、座席に座れないという事態が発生しにくいようにしているんでしょう。

 さて、私が次に乗る列車は、博多行きの特急ハウステンボス26号です[⑬]。ハウステンボスの名の通り、博多〜ハウステンボス間を走る列車ですが、今回は、長崎県佐世保市にあるテーマパーク・ハウステンボスに全く関係のない佐賀〜博多間での乗車です(過去には、成田空港へ行く成田エクスプレス号に、成田空港に全く関係のない大船〜東京間で乗車したことがあります)。

 西日本の昼は長い・・・と言っても、8月半ばともなれば、既に夏至は過ぎていますし、太陽が沈む時間は、日を追うごとに早くなっています。時刻は18:50ごろになりましたが、太陽とその光は濃い橙色になり、夕陽はいよいよ水平線の下に隠れようとしています[⑭]。さすがに、車窓を十分に見られるだけの明るさの持続も、そろそろ厳しくなってきたでしょうか・・・。

 ハウステンボス号の到着を待っているとき、西唐津からの唐津線の列車がやってきました[⑯]。車両はキハ125形。今、こうやって車両の側面を見て気がついたんですが、「Y-DC125」と書いてあるところの下に、つばめのロゴが描かれているんですね。

 上の方で、佐賀〜博多間では、自由席特急券で指定席車両に乗れるということをご紹介しましたが、私が所持している特急券は、グリーン車の特急券です。ゆえに、これから乗るのはグリーン車です(笑)[⑰]。 佐賀〜博多という短い距離ですが、グリーン車での移動を楽しもうと思います。

 18:52、ハウステンボス26号がやってきました[⑱]。佐世保からの特急みどり26号を併結していて、前4両がみどり号、後ろ4両がハウステンボス号となっています。使用されている車両は783系です。























 上りのハウステンボス号のグリーン車は、編成最後部である、1号車の後ろ寄りの半室にあります。床面に絨毯が敷かれ、大型の座席が2+1配列で展開する空間には、グリーン車らしい雰囲気と特別感が漂っています[①]

 座席など、主だったところ以外で普通車との差別化が図られている点としては、セミハイデッカーになっていることが挙げられます[②]。通路部分の床と、座席がある部分の床の高さが異なることがお分かりいただけるでしょうか。座席が一段高いところに設置されることで、車窓の眺めが良くなる・・・ということなのかもしれませんが、正直、一段高くなった程度では、あまり変わらないような気もするんですが。

 窓と言えば、グリーン車の窓は、普通車の窓よりも高さのある、大きなものが使われています[③]。窓の大きさは、車窓の眺めの良し悪しに直結しますから、この窓の大型化は、意義のあることだと思います。グリーン車と普通車の窓の大きさの違いについては、この写真をご覧いただくと、その違いが分かりやすいかと思います。

 783系のグリーン車は運転室の後ろに設けられているため、前面展望をすることができるようになっています[⑤]。上りのハウステンボス号では、グリーン車が最後尾になってしまいますが、グリーン車が先頭になる列車であれば、運転士気分で前面展望を楽しむことができます。

 なお、「セミハイデッカーであること」「窓が大きいこと」「前面展望ができること」は、グリーン車が貫通型先頭車に設けられているタイプでは、いずれも当てはまりません。これらが当てはまるのは、非貫通型先頭車に設けられているタイプですので、ご注意ください。

 座席の背面テーブルを展開すると現れる謎のくぼみ[⑥]。網が張られていて、小物入れとなっていますが、なぜよりによってこんなところに?

 実は、783系のグリーン車には、かつては液晶テレビが装備されていました。残念ながら、テレビは後に撤去されてしまいましたが、その結果、テレビを埋めていた部分がくぼみとして残りました。この小物入れは、テレビを撤去した跡として残ったくぼみを活用したもの、ということなんですね。

 さて、783系のグリーン車についてあれやこれやとご紹介しているうちに、列車は新鳥栖、鳥栖と停車して、間もなく二日市というところまで進んでいました[⑦]。この列車に佐賀で乗車した時点では、グリーン車には先客が1人いましたが、その人は新鳥栖で降りていきました。鳥栖ではなく新鳥栖で降りたということは、そこから新幹線に乗って、熊本・鹿児島方面、あるいは広島・大阪方面へと向かう予定だったんでしょうか。

 佐賀駅で、「もう夕陽も沈んじゃうなあ・・・」などと思いましたが、19時台も半ばになると、さすがに辺りはすっかり暗くなっていました[⑨]。九州で迎える3度目の夜です。ただ、明日の朝を九州で迎えることはありません。明日の朝を迎えるのは神奈川県内、あるいは東京都内です。

 19:35、列車は終点の博多に到着しました[⑩]。11:43発の地下鉄の列車で博多を発って以来、約8時間ぶりの博多駅です。

 余談ですが、JR九州の在来線の特急型車両は783系、787系、883系、885系の4種類がありますが、これらの中で私が1番好きなのは783系です。今回佐賀から乗車したのは18:53発のハウステンボス26号でしたが、佐賀から乗車できた博多行きの特急としては、18:14発のかもめ36号、18:36発のかもめ38号もありました。

 しかし、前者は787系による運転で、後者は885系による運転です。「今回の旅では、まだ1度も783系に乗車していない。せっかく九州までやってきたのだから、何とかして783系(のグリーン車)には乗っておきたい」と思い、わざわざかもめ36号、38号を見送って、783系で運転されるハウステンボス26号に乗って博多へ向かうことにしたんです。


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