全長676キロの「偉大なるローカル線」
日本最長路線・山陰本線を乗りつくす旅−18


仙崎駅/仙崎→幡生
駅舎内には、何か一言を書いた「札」がたくさん貼られています。先ほどの金子みすゞのモザイクアートも、この札によってできているものです。

ところどころ、何も書いていない札がありましたが、これってひょっとしたら勝手に書いても構わないものだったのでしょうかね?

結局書きはしませんでしたが、どうだったのでしょう。
もし書いても構わないのであったなら、何とも勿体ないことをしてしまいました。
無人駅なので、改札はそのまま素通りしました。
ただ、改札する人が立つ場所(アルミパイプで囲まれていた)はあったので、かつては有人駅だったのか、それとも時と場合に応じて有人改札となることがあるのか。

駅名標には片側、左側にだけ「ながとし」と。
ここが終端駅であることをもっとも分かりやすい形で示すものと言えます。
「ようこそ金子みすゞのふるさとへ」

ところが私は歩いて仙崎駅に来て、今から列車で仙崎駅を離れようとしている身分なので、この「ようこそ」という言葉は私にはあてはまりません。

こういうとき、「列車で来れば良かったかな」とつい思ってしまいます。

それは「ようこそ」とあるのに、これから離れようとしているからというのももちろんですが、仙崎駅が線路が途切れる終端駅であるということもそうです。

それこそ、日本最北端の駅にして終端駅の稚内駅に、列車ではなく夜行の高速バスなどで辿り着いてみたら、どうでしょう。何か物足りないというか、「ただ来ただけ」と感じそうというか・・・。
吊り下げられている駅名標は、ごく普通のJR西日本様式のものですが、ホーム上に立ててある駅名標は、三角形をしていてイラストが入った、仙崎駅独自のものになっています。

その隣には、金子みすゞの代表作とも言える「私と小鳥と鈴と」の全文が書かれています。
金子みすゞという人物を仮に知らなかったとしても、「私が両手を広げても お空はちっとも飛べないが・・・」で始まる詩の内容は、誰もが1度は見たり、聞いたりしたことがあると思います。

「私と小鳥と鈴と」は、今では小学校の国語の教科書にも掲載されているそうです。
うーん、そういえば、教科書で読んだ記憶もあるような・・・。
それから待つこと数分、折り返し上りみすゞ潮彩2号となる、みすゞ潮彩1号がやってきました。

私は長門市駅から歩いて仙崎駅まで来ましたが、もし列車で来るとしたら、このみすゞ潮彩1号に乗車していました。

位置づけとしては観光列車ですが、数少ない普通列車を補完する(特に平日は)という性格もあるので、2両のうちの1両は自由席となっています。
みすゞ潮彩号のキハ47形は、内装は結構変わった(特に指定席車両)のですが、外は塗装と一部の窓が変わったくらいで、元々のキハ47形の姿をよく残しています。

せっかくなのですから、JR東日本の「リゾート○○」のように、外見も観光列車らしく、思い切って変えてほしかったところですね。
普通列車を補完することとの兼ね合いというのもあるのかもしれませんが。
自由席車両は、内装にはほとんど手が加えられておらず、座席も元々のクロスシートやロングシートですが、指定席車両は全ての座席をこのようなソファーのようなものに置き換えてあります。

普通のリクライニングシートとせず、このようなソファーとしてみたのは試みとしては面白いでしょうが、実際の評価は賛否両論になるかと思います。

写真は1位側の座席で、こちらは車両の中の方に向けて固定されてしまっています。一方1位側は窓側と進行方向側、両方に向けることができるようになっています。

みすゞ潮彩号は景観の良いところでは一時停車したりするので、それらの絶景を見るなら、2位側にはあまり指定されたくないですね。しかも1位側は山側ですし。
1つ面白いのは、2位側(海側)の座席にはA・Dの記号が与えられていること。

2人掛けの座席の両方に窓側の記号が与えられているというのも何だか変に思えますが、2位側のソファー座席は通常は窓を向いているので、たしかに間違いではありません。

それに、指定席は通常窓側から埋めていきますが、もし普通の車両のように2位側がA・Bで、1位側がC・Dだとしたら、D席を指定された場合に「窓側のD席なのにろくに景色も見られない」ということになりかねないでしょう。

そういった事態を避けるということでも、この「謎めいた」座席記号の割り当ては、実は望ましいことだったのだと言えますね。
ちょっと困ったのは、荷物棚の類がなかったこと。
照明を間接照明にするのは結構なことですが、それよりも荷物を置いておくところが欲しかった。

写真は1位側ですが、もちろん2位側にも荷物棚はありませんでした。

幸い、指定されていた6番席は、窓側に座席を向けていれば、その左側に荷物を置くところができましたが、だからといって「荷物棚はなくても良い」とはならないのでね・・・。
山陰本線1624D/6827D 快速みすゞ潮彩2号(キハ40系)
仙崎(13:03)〜幡生(15:07)
仙崎駅を発車すると、4分で長門市駅に到着です。
いやぁ、列車で行けばたったの4分で着くのですね。そこを歩く奴がいるらしい・・・。

指定席車両から降りる人はもちろんいませんでしたが、前側の自由席車両からは結構な数の人が下車していきました。まぁ、数少ない仙崎支線の列車の1本ですからね。
みすゞ潮彩号は、平日は本当に普通列車(各駅停車)として走りますが、土曜・休日は通過駅のある快速列車として走ります。

しかし、時刻表を見て既にご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、そのダイヤ(時刻)にはほとんど差がありません。通過駅があってもなくても。

そうなると、「ではなぜ快速の場合でもダイヤはほぼ同じなのか?」ということになりますが、快速列車で運行されるときは、駅を通過することで発生する時分を活かして、このような景観の良いところで一時停車を行います。(写真では停まっていることがちょっと分かりづらいが)

なるほど観光列車らしいですね。なかなか良いと思います。
特牛駅。「とっこい」ならまだしも、「こっとい」とはまず読めません。

もちろん難読駅名として有名であり、みすゞ潮彩号に乗車していた地元のボランティアの観光案内の人(だったような)も、「鉄道ファンに人気の駅」と紹介されていました。
そして、このような景観の良いところに来れば、また一時停車をします。

私自身はもうこの旅で何度も日本海を見ていて、そしてみすゞ潮彩2号に乗車している人たちも、これが2回目の日本海沿岸での一時停車なのですが、「もう見たし撮ったし」とこの景色を見ない人は私も含め、誰1人としていませんでした。

一時停車すれば皆、この光景を目に焼き付けますし、またカメラを持っている人は、この光景を撮影するためにカメラを窓越しに構え、撮影します。

何度魅せられても飽きない。日本海が持つ、不思議な力です。
明るいところを走っているとどうということはないのですが、トンネルなど暗いところを走っていると、壁面に取り付けられた、この貝殻のような照明が目立ちます。

これが色的に結構暖かみがあって、蛍光灯では感じられない良さがあります。
3度目の一時停車。

窓越しに広がるのはやはり雄大な日本海なのですが、それでも見る場所が違えば、例えば海岸の様子も違ったりするわけで、単に「日本海」と言っても、1つとして同じような光景はありません。

この3度目に停車した場所では、下りのみすゞ潮騒号の停止位置目標を見ることができました。

私以外にも1人、この停止位置目標を撮影している方がいました。
なるほど思うことは同じ、か(笑)

下車駅の幡生駅までは、あと約45分。
幡生駅で下車をするということは、すなわち山陰本線の全線乗車を果たすことを意味します。

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