全長676キロの「偉大なるローカル線」
日本最長路線・山陰本線を乗りつくす旅−8


和田山駅/和田山→浜坂
駅名標。横幅が狭い仕様のものが吊り下げられていました。
そろそろはまかぜ号が到着する、ということで、乗車口の下で待機します。
私は2号車の乗車口で待機です。

特急列車に乗ることも、もう今では特別でも何でもない(そりゃあ通勤で特急使うくらいだから・・・)ですが、それでもいざ乗ると思うと気分は高まりますね。
この乗車口でボケーっと待っている時間さえも、ちょっと楽しく感じます。
11時50分、和田山駅2番線に大阪からの特急はまかぜ1号がやってきました。

気動車ならではの独特の響き渡るエンジン音、国鉄型車両らしい重厚感、特急が特急らしかったころを伝えるしっかりとした造りの車体など、他の特急列車がやってきたときとは、その雰囲気が全く違います。

良くも悪くも、キハ189系では真似できないことだろうなぁ。
方向幕は、やはりJR西日本お馴染みの黒幕。

キハ189系はLEDが行き先表示機なので、もう方向幕では「特 急 はまかぜ 浜 坂」といった表示も見られなくなってしまいますね。
乗車するのは、2号車のグリーン車。最初で最後になるであろうキハ181系への乗車ですから、ここはグリーン車でキハ181系の走りを心行くまで味わおうと思います。

もっとも、これは和田山〜浜坂間の営業キロが78.9キロで、グリーン料金が最安の1240円となるからこそ、乗車できるわけなのですがね。
(京都〜福知山間でたんば1号のグリーン車に乗車したのも同事情。)

車内に入り、手で押して開ける「ちょっと昔な」仕切り扉を開けると・・・。
山陰本線1D 特急はまかぜ1号(キハ181系)
和田山(11:51)〜浜坂(13:16)
そこには、もう芸術品と言わんばかりの美しい形をした座席が。

座面と背もたれが接する角度、肘かけの大きさ・形、リネンの大きさ、背もたれの厚みなど、もう何もかもが絶妙で本当に「美しい」です!
どうやら、座席も車内も、国鉄時代とほとんど変わっていないようです。

2+2配列。付帯設備は足置きだけ。まともなテーブルはない。古い、などなど。
一般的には、お世辞にも高いグリーン料金を取れる代物ではありませんし、私も本音ではそう思っていますが、それでもあぁ〜、もう惚れ惚れ・・・。
何というのか、もう「座席」という1つの工業製品の枠を超えているような気がします。

座席自体と付帯設備、そしてサービスはお世辞にも良いとは言えず、それこそ日本最高のグリーン車と言えるキハ283系のグリーン車とは比べることもままなりませんが、肘かけにかけられた純白の布がこれ以上ない高級感を醸し出しています。

和田山駅を発車。もっとエンジン音が車内に響いてくるかと思っていたのですが、意外と車内は静かで、良くも悪くも拍子抜けしてしまいました。

インターネット上で、よくがらがらのはまかぜ号のグリーン車の画像を目にしていたので、「夏休み中だけどどうだろう」と思っていましたが、さすがにがらがらではありませんでした。
ただ、それでも乗車率で言えば30%くらいか。乗車率が今ひとつだったのは確かです。

キハ189系にグリーン車が設定されなかった理由は、「グリーン車の利用が少ない」ということらしいですが、確かに乗客は少なかったです。
でも、それはキロ180がグリーン料金に見合うだけのものを持っていないからで、ちゃんとしたグリーン車ならば、利用もあると思うのですがね。
座席背面。背面テーブルがありません。
車内でもパソコンを使うような人たちからしたら、迷惑千万でしょうね。

そういうことをしない私でさえ、背面テーブルが存在しないというのはちょっと困ります。カメラを置いておける場所がなくなるので・・・。
で、唯一のテーブルは、座席の脇から引き出して使用できるのですが、その大きさはこのように弁当が1個置ける程度で、あとは何も置けないという小さなもの。

私には分かりかねるのですが、どうなんでしょう、国鉄時代はこの程度の大きさのテーブルでも特に問題はなかったのでしょうか?
まぁ、この小さなテーブルに弁当を置いて、窓の框に飲み物を置けば何とかなるような気はしないわけではないですが・・・。
はまかぜ号のグリーン車のグリーン車らしいところ言えば、この足置きがある程度ですが、383系や100系の一部は、普通車でも足置きを装備していました。

E259系やE5系は、普通車でも背もたれの上部に枕を備えています。そして、普通車でも読書灯が付いている車両も、今では決して珍しくありません。

そういったことを考えると、はまかぜ号のグリーン車がひどいのは間違いないのですが、普通車が物凄く豪華になってきたというか、ずいぶん良くなってきたように思います。

そのように周りが変わっていく中で、意固地なまでに(?)国鉄時代の状態ほぼそのままを保ってきたというのは、もう奇跡かもしれませんね。
途中の江原駅では、国鉄特急色「もどき」の列車と交換。

しかし、窓帯の下に引かれた細帯が座席に座っているぶんには見えないので、こうしてキハ181系の車内から「国鉄特急色」の車両を見ていると、国鉄時代に戻ったような気分?
12時18分、豊岡駅に到着。

豊岡市はかばんが有名な産業なようで、ホームの屋根からも「かばんのまち豊岡」という看板が吊るされていました。

それだけなら何とも思いませんが、なんとホーム上に「かばんの自動販売機」までありました。
豊岡駅で下車された際には、是非ご購入されてみてはいかがでしょうか。
のどかな田園地帯の中を走るはまかぜ1号。

後ろに人がいなかったので、背もたれを最大までリクライニングしましたが、これが驚くほど倒れて、「この座席は夜行列車向きじゃないか?」と思ってしまいました。
何と言っても、最大にリクライニングすると、天井が自然と視界の中に入ってきますからね。

どうも私は列車内で「寝る」のが合わないのか、寝台列車の寝台で横になって寝てみても、ぐっすりと眠ることができません。
正直、このグリーン車の座席の方が眠れるような気もしました。座席の座り心地も最高ですし。
定時より少し遅れて竹野駅に到着。

終点の浜坂駅までは、もうあと40分もありません。

この後、架け替えた直後の新・余部橋梁を渡ります。
キハ181系との新・余部橋梁の共演は3カ月にも及びません。

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