2013年5月。JR各社から夏の臨時列車が発表された時のこと。
JR九州から発表された臨時列車の中に、小倉〜大分間を走るにちりん号がありましたが、注記には、
「・・・(のにちりん号)は、485系電車(国鉄色)で運転します」と記されていました。

JR九州の485系といえば、2011年3月のダイヤ改正で全編成が定期運用を失い、それ以降は廃車も進み、いつの間にか、
国鉄色のDo32編成1本を残すのみという状況になってしまいました。そのDo32編成が、臨時のにちりん号で走るというのです。

「特に根拠はないけど、何となく、2013年をもって、Do32編成も廃車になりそうな気がするんだよな〜」
「九州といえば、2009年に行ったきりで、以降は1度も足を運んでいない・・・。九州の485系もいつまで残るか分かったものではないし、
今年の夏は、485系のにちりん号の乗車も兼ねて、九州を行き先にするか・・・」

そんなわけで、2013年の夏の旅の行き先は、九州となったのです。

4年前の2009年と比べると、九州新幹線の全通やそれに伴う在来線の列車体系の変化など、九州も、だいぶ状況が変わりました。
今ふたたび関門海峡を越え、真夏の九州へ。さあ、いざ出発です。



●8月15日〜16日●
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※各画像はクリックすると拡大します。

















 常磐線と山手線を乗り継いで、夜の東京駅へとやってきました。今回は、九州入りする方法として、東京から寝台特急サンライズ瀬戸号に乗って岡山へ向かい、岡山で新幹線に乗り換える、という方法を選択しました。

 22:00ちょうどに東京駅を発つサンライズ瀬戸号が発車する9番線へとやってきて、まず最初に思ったことは、「まったく、(鉄道趣味者的には)不便な時代になったもんだ」。そりゃそうですよ、以前は東京(本州)から九州へ直通する寝台列車があったのに、今は1本もないんですから。富士、はやぶさ、さくら・・・。九州に直通こそしませんが、下関行きのあさかぜ。新幹線で京都・新大阪へ向かうのならば、あかつき、なは、彗星といった、関西発の九州行きの寝台列車も選択肢に入れることができました。

 「以前なら、まずどの寝台列車に乗って九州へ向かうかという時点で迷うことができたのに・・・」などと思うも、もう後の祭り。サンライズ瀬戸号と新幹線の組み合わせという、2013年の世を生きる人間の、”現代的な”手段で九州へ向かいます。

 9番線では、既に多くの人がサンライズ瀬戸・出雲号の到着を待っていました[①]。大人あり、子供あり、軽装あり、スーツケースあり・・・、と、その身分身なりは様々。開放B寝台車なら、これらの面識のない人たちとも会話が発生して・・・、なんてことがあるんでしょうが、幸か不幸か、サンライズ瀬戸・出雲号で使われる285系は、寝台は全て個室となっています。

 そして21:48、9番線にサンライズ瀬戸・出雲号が14両編成で入線してきます[②]。写真の通り、多くの人の写真撮影にあう人気者です。お盆休みの期間中で、子連れ・家族の人たちが多かったからかもしれませんが、特に鉄道に興味はなさそうな女性(お母さん)や女の子たちが撮影している姿が多く見られたのが、かなり印象的でしたね。

 サンライズ瀬戸号は四国の高松へ向かい[④]、サンライズ出雲号は山陰の出雲市へと向かいます。両者は東京〜岡山間では併結しているので、その区間内における利用であれば、どちらを選んでも良いのですが、そういう場合、私は慣習的に瀬戸の方を選びます(瀬戸の寝台券がとれなければ、出雲にしますが)。もっとも、一応その理由はありまして、それは、「瀬戸の方が遅延や運休の確率が低いだろうと考えているから」。

 車内の通路は木目調の部品で仕上げられ、照明には、暖かな電球色のものが使われています[⑤]。およそ、鉄道車両の内部とは思えません。そしてこの通路を歩いてやってきたのは、3号車15番の部屋です[⑥]。今回選択したのは、サンライズ瀬戸・出雲号にある寝台の中では最も安価な、B寝台個室ソロです。

 この285系のソロなんですが・・・、車両の中央を通路が通り、その両側に各部屋があり、しかも上段室と下段室が交互に組み合わせられているという構成もあって、正直、部屋の中は非常に狭いです[⑦]。靴を脱げる程度の広さしかない入り口と、あとはベッドがあるだけ。もっとも、東京〜岡山間程度の利用では、この狭さも大して苦になるものではありません。

 そして22:00に、列車は定刻に東京駅を発車しました[⑧]。入線時に多くの人に迎えられた285系ですが、発車時も、何人かの人による見送りを受けました。東京駅の9番線から離れた列車は、闇夜の中へ飛び出していきます。

 東京を出るとすぐに、車窓に新幹線が現れました[⑨]。名古屋行きのN700系ひかり号。グリーン車に乗っている人はともかくとして、普通車に乗っている人たちを見ると、何となく、「こっちは個室寝台だぜ」という優越感を感じないでもないような・・・(笑)

 車窓を流れゆく高層建築[⑩]。昼間だと、「狭い面積への詰め込みの象徴」に見えなくもないんですが、夜になると、見事な夜景を作り出す主役となります。誰の邪魔もない静かな空間と、次々と流れゆく建物の光。今回の4泊5日に及ぶ九州旅行は、こうして、静寂と共に始まりました。

 列車は横浜、熱海、沼津・・・と停車しながら西へ向かって走り続け、気がついたら、時刻は既に深夜1時を過ぎていました。窓越しに光が見えては後ろへ流れ、光が見えては後ろへ流れ・・・[⑫]。東京を発ってから早3時間、その車窓の様子からして、ここが東京ではないところであるのは確かだ、ということを実感すると、「ああ、旅をしているんだな」という気持ちが、改めて湧いてくるものです。

 そして1:12、列車は浜松に到着します。浜松を出ると、次は5:25着の姫路で、その間、客扱いは一切行いません。窓越しには、朝の東京行きの浜松始発のこだま号となるであろう車両が、ホームに既に据え付けられている様子が確認できました[⑬]

 浜松を発車した後、それでは寝るかということで就寝したんですが、その後、一度目が覚めてしまいました。そのときにカーテンを開けてみると、そこには大阪駅のホームが[⑭]。どうやら、列車は大阪駅に運転停車をしている最中のようです。大阪環状線などの各路線の初発列車までは、まだ時間がありますが、初発列車を待っていると思われる人が、何人かホームにいるのが確認できました。

 そして大阪を発車し、列車はさらに西進します[⑮]。その街の明るさといい、その街の発展具合といい、東京と見紛うような気がしてしまったのは、あながち気のせいでもなかったかもしれません。
















 大阪発車後に再度就寝して、6時にセットしておいた目覚ましの音でちょうど目覚めると、辺りは既に明るくなっていました[①]。真っ暗だったのがいつの間にか明るくなっていて、そしておはよう放送が「皆様、おはようございます。今日は○月○日・・・」と案内するという、その夜行列車ならではの一連の流れ(出来事)が、私は大好きです。

 今回、車内から窓越しに、昇りつつある朝陽を見ることができました[②]。やや霞んでいて、またちょっと位置が高すぎるような気もしますが、これこそまさに「サンライズ」。車内からはその様子を想像することしかできませんが、昇りゆく朝陽の下を、朝焼けをイメージした塗装の285系が走るという光景は、外から見れば、きっとこの上なく良いものでしょう。

 まもなく岡山に到着するという放送が流れたので、身支度をしてデッキへ。乗降扉の窓には、グッドデザイン賞の金賞とブルネル奨励賞を受賞したことを知らせるシールが貼り付けられています[③]。285系に関しては、実は私もそのデザインは大変気に入っています。それは、形状が良いからということはもちろんありますが、朝焼けをイメージしたという塗装の色遣いが見事だからということが大きいように思います。

 乗降扉の脇には、半自動扱い時に使用する(はずの)開閉用のボタンがあります[④]。しかしながら、私はサンライズ瀬戸・出雲号にはもう何回も乗っていますが、乗降扉が半自動扱いとなっている状態に出くわしたことは、これまでに1度もありません。いったいいつ使うことがあるのでしょうか?

 サンライズ瀬戸・出雲号において客扱いをしながら長く停車するのは、始発駅での発車待ち時と、岡山駅での併結・解結作業時ぐらい(当たり前ですが、途中の駅で通過待ちはありません)。でも、そういうときでも、年間を通じて乗降扉の半自動扱いは行っていません。デッキと通路の間には仕切り扉があり、また、ほとんどが個室寝台なので、外の熱気や冷気の車内への流入を防ぐ必要性も低そうですからねぇ。

 「・・・・となると、本当に、何のためにこんなものが設けられたんだろうか?1度でも使用実績はあるのか?」などと思っているうちに、列車は岡山駅に到着。6:27、時刻通りの到着でした[⑤]。人口約70万人の政令指定都市、岡山市の代表駅にして交通の要衝ですから、岡山で降りた人が多かったことは間違いありませんが、継続して乗車する人でも、瀬戸・出雲の解結作業の見学でホームに降り立ったという人も多かったでしょうね。

 さて、私はここ岡山で「下車」します。冷房の効いた車内からホームへ降り立つと、朝といえども、これぞ夏という蒸し暑さが一気に襲ってきました。今日は2013年8月16日。九州旅行の実質の1日目が幕を開けます。


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