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 というわけで函館港に向かって出港です[①]。本物の青函連絡船は、鉄道連絡船ということで、まさに青森駅〜函館駅を結んでいたので、青森駅から約2300m離れた青森港と、函館駅から約4000m離れた函館港(いずれも直線距離)では、青函連絡船の再現を謳うにはだいぶ無理があります。リクライニングシートを備えるビューシートを選んだのは、「グリーン船室」を再現したつもりということで(後付けですが)。

 今日はそれなりに天候が良いので、航行も順調に行くことでしょうが、悪天候に対する強さは、やはり鉄道が大きく上回るはずです[②]。その点は、青函トンネルが開通したことの大きな恩恵でしょう。一方、瀬戸大橋は、やはり洋上(屋外)に架けた橋ということもあってか、悪天候に対する耐性はあまりなく、強風によって運転を見合わせることも珍しくありません。

 徐々に青森の市街地が小さくなっていきます[④]。立ち並ぶビル群の中でやたらと目立つ三角形の建物は、青森県観光物産館アスパムで、その高さは約76m。一般的な建造物としては、青森県内で最も高いものであり、文字通りのランドマークです。

 今のところの天気はまずまずです[⑤]。照りつける太陽から落ちる光が海原に反射すると、その光が波の動きに合わせてきらめきます。しかし、天気予報は、北海道(函館)の天気は下り坂であると言っていました。たしかに、北海道方面の空を見てみると、雲の切れ目に覗く小さな青空すらもなく、これから先の天気が心配されるような具合にも見えます[⑥]

 いかに11月といえども、さすがに夕焼け空になるには早すぎるだろうと思うのですが、出港から1時間15分ほどが経過すると、外はあたかも「稜線に沈みゆく夕陽・・・」と言わんばかりの状況になっていました[⑧]。黒い雲が太陽にかかり、その光量を絞らせたことで「なんとなくそのように見える」だけなのでしょうが、この航海における印象的な眺めのひとつとなりました。

 ゲームセンターで遊ぶような年頃ではなく、短距離航路ゆえに食堂のようなものもなく、また今ここでシャワーを浴びてもしようがありません。特にやることがないので、ここはひとつ仮眠をして時間を潰そうと思います。レバーを引いて座席の背もたれを倒すと・・・、なんと、ほぼフルフラットになるまで倒すことができます[⑨]。夜行バスのプレミアムシート(角度156度)も真っ青な、見事な倒れっぷりです。

 前のページで、青森〜函館間を移動する際における、鉄道(新幹線)のあまりにも高い料金についてお伝えいたしましたが、フェリーはたしかに安いものの、一方で、所要時間の面では致命的に遅いという点に留意しなければなりません(実測でせいぜい33km/h=18ノット弱程度の速さしか出せなければ、そりゃあ時間もかかるよな・・・と合点は行きますが[⑩])。

 津軽海峡フェリーの場合、港〜港でも、その所要時間は3時間40分で、港⇔駅まで加味すると、相当な時間がかかります。それに対して、鉄道では、時間帯によってばらつきはありますが、青森駅〜函館駅でも、おおむね1時間45分〜2時間15分程度です(新幹線の前後の列車を含む)。もっとも、これを「新幹線の圧倒的な速さ!」と言えないのが残念ですが(理由は言うまでもありませんね)。

 ほぼフルフラットまで倒れるリクライニングシートで仮眠をしていたら、目が覚めたとき、辺りは既に暗くなっていて、フェリーは函館港に入港しようとしていました[⑪]。青函トンネルの脱出のような「これぞ北海道上陸!」という場面はありませんが(海だから当たり前)、遠くに見える五稜郭タワーに、ここが北海道であることを実感できます[⑫]。さあ、月に見守られながらいよいよ着岸へ・・・[⑬]

 こうして、私は史上初めてのフェリーによる北海道上陸を果たしました[⑭]。発着場所があまりにも違うので、リバイバル・青函連絡船と名付けることはできませんが、当時の感覚はなんとなく分かりました。












 さて、いよいよ北海道にやってきました[①]。と言っても、北海道なぞもう何度も来ていますし、土・日・月で往復北斗星号を利用した北海道弾丸旅行(月曜日に上野に到着した後は、そのまま大学へ)をしたことすらもありますから、今更特に感慨深いものはありません。ただ、駅でもなく空港でもなく、港から北海道に上陸することは初めてですから、その点では新鮮さがあります。

 今回乗船したブルーマーメイドは、全長約144m、総トン数8820トンという船で、近くで見れば”それなりに”存在感はあるというところです[②]。これより大きなものはいくらでもありますから、驚くには値しません。とはいえ、人間からすれば”巨体”であることは間違いなく、その体躯には、トラック71台または乗用車230台を収めることができ、先端からは、物流のトラックが次々と発進します[③] [④] [⑤]

 船の全体図がよく見える場所へ移動してみると、全長約144mというその長さがよく分かりました[⑥]。飛行機という巨大な鉄塊が空を飛ぶことにロマンを感じる人が多いと言いますが、巨大な鉄塊が大海原を進んでいくことにも、これまた大きなロマンがあります。そして地面を見てみると、その至る所に水で濡れた痕跡がありますから、今日、函館で雨が降っていた時間帯があったようです。

 しかし、いま夜空を見上げてみると、そこには満月が浮かび上がっています[⑦]。もう雨はすっかり上がってしまったということなのか、それとも、これは一時の小休止であり、この後また天気はぐずついていくのか。18:00に函館港に入港したブルーマーメイドは、この後、20:15発の第22便として青森港へ折り返していきますが、その航海が無事に行われることを祈りましょう。












 津軽海峡フェリーの函館フェリーターミナル(注:青函航路には、津軽海峡フェリーと青函フェリーの2つがあり、青森港は共にほぼ同じ場所ですが、函館港はそれぞれが全く別の場所にあります)を18:30に出発するシャトルバスに乗り、函館駅までやってきました[①]。時刻表では函館駅19:00着でしたが、スイスイと行けたのか、18:50前には到着しました。

 函館駅を訪れるのは、2016年3月26日の北海道新幹線開業の初日以来ですが、当然のことながら、当時の盛り上がりはすっかり影を潜めていて、新幹線ができたときの喜びを残しているのは、駅舎正面の窓に見える、「新函館北斗・仙台 最速2時間30分・・・」などと書かれた、大谷翔平の写真入りタペストリーくらいでしょうか[②](逆に、3月26日当時は、このタペストリーはまだなかったようですが)。

 今日の移動は函館までなので、ここで宿に入ります。今晩宿泊するのは、駅から徒歩7分のところにある、やや古びた外観が目印(?)のホテルプロモート函館です[④]。函館駅ともなれば、徒歩7分未満のホテルなどいくらでもありますが、「まだ利用したことがないホテルに泊まり、様々なホテルを研究する」、「地場のチェーンないしはそこ1軒しかないホテルを選ぶ」といった信条に従った結果、ここになりました。

 見た目は古びているようにも思われましたが(「2012年11月2日グランドオープン」らしいのですが、建物の古さを見るに、やはり居抜きでしょうか)、いざホテルの館内に入ってみると、内部は綺麗に仕立てられていました。また、実際の客室も、可もなく不可もなくという具合でした[⑤]。特に語るべきことはない、普通のホテルですね[⑥]。浴室もいたって平凡です[⑦]


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