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 五稜郭公園入口バス停で適当なバスを捕まえ、函館駅にやってきました[①]。正直なところ、それが函館駅に行くかどうかは分からず、「”多分”、まあ駅に行くだろうな」という半信半疑の状態で乗り込みました。しかし、ここで運転手に「これって函館駅前行きますか?」などと聞くのは、いかにも下調べの足りない観光客であることを露呈するような気がして嫌だったので、それはしませんでした。

 函館駅の駅舎は、普段と同じ装いでした[②]。外壁に巨大な垂れ幕や横断幕がかかっていないかなと期待していましたが、そこまではやらなかったようです。ただ、その賑わいぶりは、普段とは明らかに異なっていました。北海道でも上位の都市で、一大観光地の玄関口ですから、普段でもそれなりに人がいるものですが、今日はまた一段と人出が多いように思われます[③]

 その理由はこれでした[④]。「祝!北海道新幹線開業 つながるニッポン祭り」。26日・土曜日と27日・日曜日に催されたイベントで、函館の人気料理店や全国各地のラーメン屋が集結したり、全国の自治体のPRブースが置かれたり、郷土芸能が披露されたりと、なかなかの盛り上がりぶり[⑤]。26日の15:00頃からは、ブルーインパルスの祝賀飛行が行われたようで、そのときには、盛り上がりは最高潮に達したことでしょう。

 何をするつもりでもなくぶらついていると、コーヒーとクッキーが無料で振る舞われるとのことだったので、とりあえずもらっておきました[⑥]。クッキーは普通に食べることができましたが、なかなかの猫舌で、コーヒーは冷たいものに限る(食堂車で飲む場合を除く)というしきたりがある私は、小さな紙コップ程度の量のホットコーヒーでも悪戦苦闘。舌がある程度慣れてきたら、あとは舌を焼く覚悟で一気飲みです。

 ”無料で振る舞われる”といえば、駅前では、読売新聞と北海道新聞が号外を配布していました[⑦]。もちろん、両紙ともありがたく頂戴しました。ただ、東京に本社を置く全国紙と、北海道に本社を置くブロック紙、どちらの方が、より今回の北海道新幹線の開業に興奮するかといえば、当然後者です。読売の号外がA3サイズであったのに対し、道新の号外はA1サイズ弱ほどの大きさであり、用紙サイズが全く異なりました。

 函館駅の中は、多くの人でごった返していました[⑧]。新幹線とはこだてライナー号の本数のことを考えると、新幹線で北海道へやってきた人が続々現れて・・・という状況ではないはずですが、なぜか大混雑。駅の中では、特にイベントなどは催されていなかったはずですが、何かグッズでも売っていたのでしょうか。行くべき先は函館駅の中ではなく、駅前で行われている、つながるニッポン祭りだと思いますが・・・。

 改札口の上にある2台の発車標は、以前は、「木古内・青森方面」と「森・長万部・札幌方面」であったのが、前者は、道南いさりび鉄道の「木古内・上磯方面」のものとなり[⑨]、後者は、JR北海道の「新函館北斗・長万部・札幌方面」となりました[⑩]。ただ、道南いさりび鉄道では、3行も表示欄は必要ないということなのか、3段目には、JRの特急スーパー北斗号の改札開始時刻の案内が流されていました。
















 私がこれから向かう先は、なんと函館空港です[①]。函館空港へ向かうバスに乗車するべく、駅前のバス乗り場の11番のりばで並びます。11:10に駅を発車し、11:31に空港に着くという、乗車時間21分の道のりですが、路線バス型ではなく、観光バス型の車両が使用されていました[②]。これに関しては、空港へ行く人を乗せるということで、スーツケースなどを収納できる観光バス型が望ましいということなのでしょう。

 リクライニングシートを装備する観光バス型車両なので、移動は至極快適です[③]。また、乗車率はそれほど高くなく、私の隣の席には誰も来なかったほか、後ろの座席にも誰も来ませんでした。2席を1人で使え、いくら背もたれを倒してもお咎めなし。快適さは2倍増しです。

 これから函館空港へ向かうわけですが、別に空港見学をするのではありません。本当に飛行機に乗るために空港へ行きます。これまで、基本的に鉄道以外の乗り物が登場することはありませんでしたが、その後、レンタカーが登場し、更にフェリーが登場しました。今回はバス(BRT)が何度も登場しましたが、この後、ついに飛行機が登場します。

 函館駅前を出発したバスは、まず街の中を走っていきます[④]。そして街中を抜け切ると、海沿いを行く国道278号線に入ります。海沿い、と言って、どの程度の海が見えるのかというと・・・、このくらい[⑤]。太陽の光を受けてきらめく水面が見えています。海は青く、山も青く、そして空も青く。北海道新幹線にも、これくらいきちんと海が見える区間があると、面白いところなのですがね。在来線時代だったら・・・。

 途中の停車は湯の川温泉バス停のみ。渋滞などに巻き込まれるもなく、順調に道を走ってきた空港連絡バスは、20分ほどで、函館空港が見えるところまでやってきました[⑥]。そして、私は函館空港に降り立ちました[⑦]。所要時間は21分(普段は20分、26日限定の特別ダイヤ)、運賃は410円でした。各駅停車のはこだてライナー号は、函館〜新函館北斗間で19分くらいなので、それより若干遅いという程度です。























 空港連絡バスで函館空港にやってきました[①]。北海道新幹線の開業により、一気に新幹線との競合関係ができましたが、なにぶん向こうがあの体たらくなので、航空各社は、「新幹線が開業したからといって、特に何か手を打つという考えはない」との反応を示しています。新幹線が開業すると、大抵、飛行機側は、対抗策を打ち出したり、あるいは減便・小型化といった措置を取りますが、「無反応」は、ある意味、一番凄い展開かも。

 鉄道至上主義を打ち出していたつもりはありませんが、JR線の全線乗車を目指したり、なるべく夜行列車に乗るようにしていたりしたことで、私は、これまで、飛行機には縁がありませんでした。飛行機に乗ったことは、高校時代に、修学旅行のために2回(1往復)乗ったことがあるだけで、自ら予約して、空港に来て、搭乗して、というのは初めて。それゆえ、この先で踏むべき段階などもよく分かっていません・・・。

 現在のターミナルビルは、2005年に本開業した3代目です。もう11年も前のものですが、内装の一部に木を使うなど、現代の内装デザインで流行しているものを先取りしている面も見られます[③]。また、同時に、内壁の一部はレンガ模様になっていますが、これは、函館の有名観光地のひとつである、赤レンガ倉庫群を思わせるものであり、函館の玄関口となる空港にふさわしいものです[④]

 売店で土産などを買った後、「とりあえず、搭乗手続きをすれば良いのかな」と思い、AIR DOのカウンターへ行くと(これから乗る便はAIR DOによる運航)、そこは無人で、「ANA3番カウンターへお越し下さい」との掲示がありました[⑤]。ということで、今度はANAのカウンターへ向かいましたが、「お客様は搭乗手続きをする必要はないので、荷物預けの手続きをして、そのままお進みください」と。・・・”初心者”って辛い。

 で、飛行機に乗るとは言ったものの、結局どこを目指すのかといえば、それは名古屋です[⑦]。12:30発のAIR DO 128便に搭乗し、名古屋(中部国際空港)を目指します。出発便の案内装置は、いわゆる反転フラップ式で、今となっては古めかしいもの。JRの駅からは既に全滅しているようですが、私鉄では、まだいくつかの駅において残存しているようです。また、このように、空港にも残存しています。

 東北地方の未乗車の路線を乗ってきて、そこから開業したての北海道新幹線へと繋ぎ、これで無事にJR線の(仮)全線乗車を達成した・・・かと思いきや、実はそうではありませんでした。実は、JR東海の名松線と太多線は、まだ乗っていないのです。東北・北海道と東海ということで、明らかに方面が違いますが、「この旅をもってJR線の全線乗車を果たす」と定めた以上、別々の旅に分けることはできませんでした。

 では、なぜ飛行機で移動するのか。第一に、鉄道だと、時間がかかりすぎます。飛行機が12:30発なので、新函館北斗12:44発のはやぶさ22号に乗ったとすると、東京17:04着。そこから東京17:20発ののぞみ245号に乗り継いだとすると、名古屋着は19:01です。函館〜新函館北斗を無視しても、6時間17分もかかります。はやぶさ22号に接続するはこだてライナー号は、函館11:53発であり、その分も加味すると、所要時間は更に長くなります。

 一方、飛行機は、名古屋(中部)14:10着です。予定では、その後、中部国際空港15:07発のミュースカイに乗車する(もっと早い列車にも乗れるが、相当に余裕を持たせて)ことになっていますが、そうすると、名鉄名古屋は15:35着。となると、名古屋のホテルには、16:00前には入れることでしょう。函館駅を11:10に出るバスに乗りましたが、そこを起点に計算しても、函館駅〜名鉄名古屋は、4時間25分です。

 第二に、飛行機で行く方が圧倒的に安いということ。鉄道だと、函館〜名古屋の乗車券11750円(学割として)+新函館北斗〜東京の普通車指定席の新幹線特急券11330円(繁忙期・はやぶさ)+東京〜名古屋の同5030円(繁忙期・のぞみ)=28110円です。私としては、何よりも、新函館北斗から東京までの新幹線特急券の値段に驚き。これ、グリーン車の場合ではないんですよ。”普通車の特急券だけ”で1万超えって信じられません。

 飛行機だと、函館駅前〜函館空港のバス代410円+函館空港〜中部国際空港の航空券17010円(早割45・普通席)+中部国際空港〜名鉄名古屋のミュースカイ代1230円(運賃870円&特別車両券360円)=18650円です。航空券は、45日前までに予約した場合の早割運賃ではありますが、ご覧のように、鉄道で移動した場合よりも遥かに安いです。

 第三に、「たったいま青函トンネルを新幹線で抜けてきたばかりなのに、そこをまた新幹線で通るのはつまらないし芸がない」。それに、北海道新幹線も、東北新幹線も、東海道新幹線も、当然、既に乗車済みですから、再度乗ったところで、車窓は既に見たことがあり、面白くありません。それならば、思い切って空の景色と名鉄線の景色を見る方が、私としても楽しめるというものです。

 そんなわけで、函館から名古屋への移動にあたっては、計画段階から、迷うことなく飛行機にすると決めていたものの、「が、函館〜名古屋(中部)なんていう、”ビミョーな区間”に就航はあるのだろうか?」との心配が頭をよぎりました。そこで検索をかけてみると・・・、一応あることにはありましたが、1日たったの1往復! やっぱり、需要としてはかなりニッチということのようです。

 預け荷物(リュック)を渡してきた後は、出発口へ[⑧]。ここで手荷物の検査を行うわけですが、なにぶん、鉄道にはない概念ですから、やや戸惑ってしまいます。出発ロビーには多くの人がいましたが、やはり、春休みの土曜日だからでしょうか[⑨]。北海道新幹線は、往復で利用されることは少なく、大抵、「片道新幹線・片道飛行機」となるらしいですが、ここにも、新幹線でやってきて、これから羽田へ帰る、という人がいるかもしれません。

 これから乗り込む機体には、既にボーディング・ブリッジが繋がれていました[⑩]。飛行機のことはよく知りませんが、座席数144のB737-700という機種で運航されるようです。まあ、1日1往復の路線ですから、そんなものでしょうか。一方、隣にいたANA 554便・羽田行き(?)は、機体が明らかに一回り大きく、座席数405のB777-200ERというものでした[⑪]。函館〜羽田と函館〜名古屋の需要の違いが分かります。

 名古屋(中部)行きのAIR DO 128便は、まもなくご案内とのこと[⑬]。その後、12:25頃になって、ようやく搭乗が開始されました。それでは、私も飛行機に乗り込み、空の旅に出ることとしましょう[⑭]


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