17:15発の松阪行きで帰ります[①]。盲腸線の列車というのは、往々にして到着直後に折り返していってしまうものですが、16:35に到着した下り列車の折り返しが17:15発と、40分の時間が設けられています。単に乗り潰しのためだけにやってきた人間にとっては、「到着後即帰還」となることが回避され、しばらく駅でのんびりするための時間があることは、非常にありがたいことです。
いま来たばかりのところを、列車はそのまま戻っていきます[③]。その中でも、少しでも飽きを感じないようにするために、先ほどは家城〜伊勢奥津間で進行方向左側に陣取っていたところを、帰りも左側に陣取ることで、行きとは反対側の車窓を見るようにしておきます。最高速度65km/hという走りは、時にじれったくも感じられますが、時に心地良くも感じられます。
まずは比津に停車します[④]。2016年3月のダイヤ改正の時点で、比津駅を発着する列車は、1日に7.5往復ありますが、それに対して、1日平均の乗車人員(2014)は4人なので、乗車や降車が発生しないのは、何ら珍しいことではないと言えます。実際、この列車では、乗降は全くありませんでした。もっとも、名松線においては、こうした「利用が極端に少ない駅」という存在は、比津に限ったものではありませんが。
山際を通っていく区間では、このような落石防止柵が設置されています[⑤]。家城〜伊勢奥津間が台風によって不通になったときは、土砂崩れもその要因のひとつでしたが、山の表面全体が流れてくるようなときは、こんな柵は何の役にも立ちませんね。あくまでも落石対策用です。
伊勢奥津へ行くときの列車でもそうでしたが、沿線では、走行中の名松線の列車を撮影する人がしばしば見られました[⑥]。では、彼らはいかにも「撮り鉄」なのかというと、そのようなことはなく、多くは、携帯電話かコンパクトデジカメを使用しているような、”ライトな”人たちでした。彼らが地元の人々であるならば、名松線の復活がいかに待ち望まれていたのかがよく分かります。帰ってきた「日常の風景」のありがたみ。
17:49に家城に到着[⑦]。下り列車との行き違いを行うため、ここでは13分間停車します。そろそろ暗くなってきました。
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