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 多治見行きの普通列車が、キハ75形でやってきました[①]。岐阜発多治見行きという列車で、高山本線と太多線を直通して走ります。元からこの列車に乗車することを決めていましたが、美濃太田でずっと待っていると、その待ち時間があまりにも長くなってしまうため、1駅手前の坂祝へと引き返し、”お出迎え”をしたというわけです。

 キハ75形は、全ての座席が転換式クロスシートとなっています(各ボックスの端部を除く)[③]。日常の通勤・通学輸送には不向きですが、私のようなたまにしか乗らない旅行者にとっては、とてもありがたいことです。座席上部のカバーは、背もたれの上部全体を覆う仕様のもので、2席分が繋がっています[④]。こうした設備の良さを活かし、3扉・デッキなしという構造でありながら、急行列車にも使用されていた時期がありました。

 美濃太田から先は太多線に入ります。同駅発車後、北東へ向かう高山本線と分かれ、南東に向かう太多線を進んでいきます[⑤]。高山本線との並行区間が終わった後も、なおも複線状態が続いたため、「太多線は実は複線だったのか」と思ってしまいましたが[⑥]、これは、太多線の線路ではなく、この先にある美濃太田車両区への回送線です。

 そして美濃太田車両区が見えてきましたが[⑦]、特記すべきは、何と言っても、敷地の一角の保存車両群でしょう。かつて、美濃太田車両区の一角では、国鉄型の車両が数多く保管されていました。現在のリニア・鉄道館で展示されている車両には、ここを出身とする車両も多くあります。同館での保存対象から外れた車両は、そのほとんどが、浜松での解体の運命を辿りましたが、現在でも、数両の車両が残存しています[⑧]

 最初の停車駅は美濃川合です[⑨]。太多線に特急・快速の類はなく、全てが普通列車で、全てが各駅に停車します。かつては、「ホームライナー太多」なる列車も乗り入れていましたが、同列車も、太多線内は各駅停車でした。美濃川合を出ると、列車はすぐに木曽川を渡り[⑩]、「”川”と向かい”合”う」と書くその駅名が嘘ではないことを実感します(駅の住所は、(前略)川合町ですが、本当にそれが由来なのか?)。

 太多線の上空を通過して隣にやってきた複線電化の線路は、名鉄広見線の線路です[⑪]。先ほど、ひだ25号に乗車したときも、途中で複線電化の名鉄各務原線と並行しましたが、単線・非電化の高山本線/太多線に対し、名鉄各務原線/広見線は複線電化。名古屋〜豊橋間で鍔迫り合いを繰り広げるJR東海と名鉄も、岐阜県内では、JR東海が白旗を揚げ気味でしょうか? そして列車は11:30に可児に到着[⑫]

 列車はその後も南東方向へ下っていき、駅に停まるたびに乗客を増やしていきます。そしてやや都会的な街並みが見えてくると、まもなく終点の多治見です[⑬]。中央本線の線路と合流し、架線下を進んでいって、11:50に多治見に到着しました[⑭]























 太多線を乗り尽くして多治見にやってきました[①]。今回の旅に出る前の時点で、JR東海の未乗車路線は、太多線と名松線のみになっていたため、JR東海で残す路線は、名松線のみです。そして、それは、JR旅客6社で残された最後の路線でもあります。

 多治見は、JR東海の貨物駅でもあります。列車から降りたとき、ちょうど、EF64形による貨物列車が停車していました[②]。その脇では、フォークリフトを使用した荷役が行われている最中でした[③]。走行中の貨物列車を見かけることは多々あっても、積み下ろしをしている場面を眼前で目撃することは、そう多くはありません。貨物列車における「駅」とは、”積み荷が乗り降り”する場所です。

 先ほど乗車した列車は、12:06発の岐阜行きとして折り返していくようです[④]。高山本線へ直通し、岐阜まで乗り換えなしで行ける列車になります。発車標の2段目に、わざわざ「美濃太田経由」と付記しているのは、そうしておかないと、名古屋・東海道本線経由と勘違いされてしまう可能性があるということなのでしょうか。まあ、そう考えてしまうのも分からなくもないですが。

 現在の駅舎は、2009年11月に使用を開始したもので、その全体的な印象は、「明るく広い」。例えば、乗り換え通路ひとつをとってみても、左右の幅は余裕を持ったものとなっていて、朝夕のラッシュ時でも、人の流れが詰まりにくそうです[⑤]。また、ここにある発車標は、”あるホームからあるホームへ向かうとき”に正面に入るように取り付けられていて、乗り換え先の列車を、立ち止まることなく確認できます。

 乗り換え通路から外を見てみると、山が近いということに気づきます[⑥]。つまり、多治見市(駅)は盆地に位置しているというわけですが、この盆地が、日本でも1、2を争う暑さの諸要因のひとつとなっています。多治見市で記録された最高気温は、2007年8月16日の40.9度。熊谷などと共に、暑さが知名度向上に寄与しているという街です。その山の麓の辺りに注目してみると、既に桜が咲き始めていました[⑦]

 南北の自由通路は、これまた広くて明るいです[⑧]。写真ではやや暗く写ってしまいましたが(これでも露出を+2段も補正しています)、ガラス張りになっている部分では、多くの日差しが差し込み、照明に頼らない、自然な明るさを得ています。

 南口は、ホテルやデパート、マンションなどが集まる、多治見市の玄関口です[⑨] [⑩] [⑪]。駅からはやや離れたところにありますが、市役所の本庁舎も南口側にあります。駅前のロータリーは、自家用車・タクシー・バスがそれぞれ分離されるように設計されていて、交通の滞りが起こらないように配慮されています。有料ですが、駅舎のすぐ目の前に駐車場もあり、そういった点でも便利です。

 現行駅舎の全面開業は、2010年10月のことでした[⑫]。この視点からでは見えませんが、南北を結ぶ自由通路は、貨物駅の敷地を跨いでいく関係上、長さが102mにも達する、とても長大なものになりました。外壁はタイル状で、1枚1枚色合いが異なっており、外見に変化を生みます[⑬]

 南口にある銅像は、左手で花瓶のようなものを差し上げています[⑭]。やや読みにくいですが、台座部分には、「陶都多治見」と書かれています。美濃焼の産地として知られる多治見は、陶器産業が盛んな土地であり、毎年4月には、多治見陶器まつりといった行事も開催されているようです。





















 さて、一方こちらは北口です。駅のすぐ近くに、多治見市役所の駅北庁舎があります[①]。「駅からこんなにも近いとは、なんて便利な市役所なんだ」と言いたいところですが、「駅北庁舎」というところを忘れてはなりません。多治見市役所は、本庁舎・笠原庁舎・駅北庁舎の3つに分散しているため、自分の用事がある部課が、必ずしも駅北庁舎にあるとは限らないわけです。

 北口駅前は、現在、何やら整備が進行中の模様[②]。裏手にあたる北口側とはいえ、多治見駅が眼前に控える優等地ですが、これをどう活用していくつもりなのでしょうか。舗装なども進行しておらず、土が盛り上がっているという状況では、この先の様子を想像できません[③]

 と思ったら、この駅前の用地の未来図がありました[④]。言葉を使った詳説がありませんが、とりあえず、駅前に公園のようなものを整備するということで良いのでしょうか。こうした駅前の用地は、商業施設からすれば、喉から手が出てしまいそうなものですが、それを跳ね除けたのか、入札が全くなかったのか。いずれにせよ、「駅前に公園」という、なかなかお目にかかれないものが出来上がるようです。

 一応、北口は裏口に当たる側なので、人通りや交通量は、南口と比べると少なめです[⑤] [⑥]。ただ、こちらにもタクシーやバスは乗り入れていますし、立体駐車場やマンションもあります。市域は北口側にも広がっていて、地方の中規模な駅にありがちな、「駅裏はもう山」、「すぐ後ろに川」といった状況ではありません。全体的には、南北両方ともそこそこ発展している、バランスのとれた状態だと思います。

 北口に、「自動二輪(125cc)以上専用」の有料駐車場がありました[⑦]。世の中のライダーたちは、日本における二輪の駐車場の少なさに嘆いているとのことですが、二輪専用の駐車場というものがあるとは・・・。四輪や自転車が停められないことは言うまでもありませんが、ここのミソは、もしかしたら、125cc以上限定というところかもしれません。つまり、原付、50ccクラスの二輪は対象外というわけです。

 ここからは名古屋を目指しますが、12:34発の特急しなの8号に乗車します[⑨]。多治見〜名古屋間は36.2kmで、快速で35分程度、普通列車で43分程度。特急に乗らなければならないような区間ではありませんし、多治見発名古屋方面の快速・普通列車は、日中でも毎時5本はありますが、まあ、「旅行中」ですからね。財布の紐は緩めです。それに、特急列車に飢えていますから・・・。

 2番線に名古屋行きの快速列車が入ってきました[⑩] [⑪]。中津川始発の列車ですが、多治見でしなの8号を先行させます。しなの8号よりも3分遅く多治見を出て、12分遅く名古屋に着く。しなの8号の次は20分や30分も空く、というのであれば、ここで特急に乗る人も多いことでしょうが、3分後に快速が出るわけですからね。よほどのせっかちさんでない限りは、向こうの快速に乗ることでしょう。

 5号車・自由席の乗車口で列車を待ちます[⑫]。多治見〜名古屋で特急に乗るといっても、27分程度の乗車時間で、指定席やグリーン車に乗ろうとは全く思いません。このような「別に特急に乗らなくてもいいじゃないか」という区間で特急に乗るときは、基本的に自由席を選択し、必要なお金を削減するようにしています。「余計なプチ贅沢をするのは結構だが、その中でコストダウンを図れ」ということです。


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