4番線に新青森行きの臨時普通列車がやってきました[①]。青森21:29発の新青森行きの特急は、789系で運転されるスーパー白鳥98号ですが、既に全編成が北海道へ帰ってしまったのか、485系が充当されていました。とはいえ、鉄道好きからすれば、785系の置き換え車両として生き長らえることが決まっている789系よりかは、白鳥号からの引退で恐らく廃車・解体となる485系3000番代の方が、見られて嬉しいものかもしれません。
行き先表示機は、「臨時」や「普通」のみで済ますのではなく、きちんと「普通 新青森」の表示を出していました[②]。青森発新青森行きということで、1区間しか運転されませんが、最後に485系に乗りたいと思う人は少なくないようで、この列車に乗り込んでいく鉄道好きの姿が散見されました。
青森駅に停車する485系3000番代[③]。改造で3000番代となった車両は、1996年から運用を開始し、当時盛岡〜青森・函館間を結んでいたはつかり号に投入されました。はつかりから白鳥になったり、八戸発着になったり、新青森発着になったり、つがるに入ったりと、その使われ方は様々に変化しましたが、20年に渡り、いつも青森駅に顔を出していました。今、青森駅×485系3000番代が見られなくなるときが、ついにやってきます。
485系が白鳥号から引退したことは、「485系の定期特急運用がなくなった」ということでもありました[⑤]。全国各地で走っていた485系も、いなほ号での運用がE653系1000番代に置き換えられた後は、白鳥号が、最後の定期特急運用の場でした。しかし、485系はしぶとい。2016年3月のダイヤ改正以降も、通称「糸魚川快速」は、未だに485系によって運転されているそうです。そして、それは、日本最後の485系の定期運用でもあります。
新青森を出る函館行きの白鳥号・スーパー白鳥号は全て終了している時間帯で、新青森行きについても、スーパー白鳥98号が最終列車です。ということは、もうこの後、485系による臨時の普通列車はないということです。更に言い換えれば、いま目の前にいる21:29発の臨時普通・新青森行きが、青森所属の485系最後の運用ということになります。ああ、そんな歴史的な瞬間に、私は立ち会っています[⑥] [⑦]。
・・・とかなんとか言いましたが、当時は、そんなことは微塵も頭になかったので、「21:29の発車まで付き合ってはいられない」と、発車を見届けないで改札を出てしまいました。もったいないと言えばそうですが、既にホテルのチェックイン約束時刻を過ぎているということもありましたからね。
改札口にある発車標のうち、以前は「津軽海峡線」と書かれ、(スーパー)白鳥号とはまなす号を表示していた筐体は、既に路線名の表示が消されていました[⑧]。上段・中段には何も表示されず、下段の列を、「本日、北海道新幹線開業準備に伴い〜はまなす号は、運休いたします。」との文言が、繰り返し繰り返し流れていました[⑨]。「運休」とは言うものの、それは、「運転再開」のない運休です。
北海道新幹線開業までの日数を数える装置は、ついに「あと1日」を表示するに至っていました[⑩]。正直なところ、明日になった途端、交通網が大きく変わり、新幹線で北海道へ行くことができるようになるという予感・実感は、全くありません。ただ、(私は別にそうでもありませんが)この開業を待ち侘びている人はたしかにいるわけで、彼らには、もう嫌というほどに予感や実感が降り注いでいることでしょう。
かつて青森駅は、青函連絡船との接続駅でした。そして、青函トンネルができた後も、新幹線が延伸した後も、北海道へ向かうときは、必ず青森駅を通らなければなりませんでした(厳密には、夜行列車が青森信号場経由でスルーしたこともありますが・・・)。即ち、鉄道で北海道へ向かう場合、「青森駅を通らないで」というのは不可能でした。青森駅は、北海道へ往来するにあたっての関所のようなところでした。
それが、明日からは、新幹線により、青森駅を通ることなく北海道へ行くことができるようになります。北海道新幹線は、青森駅を経由せず、新青森駅からそのまま北進します。青森という駅にとっては、これはある意味、衝撃的なことです。何しろ、そんなことは、1908年に青函連絡船の運航が開始されて以来、初めてのことなのですから。それから108年、青森駅の立場が、大きく変わろうとしています。
歴史の節目を通り過ぎる瞬間はもうまもなく。しかし、青森駅前は今日も穏やかで、いつもと変わらぬ時間が流れているのでした[⑫]。
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