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 五稜郭からは道南いさりび鉄道線の列車に乗車します。やってきたのはキハ40形1両編成で、その塗装は、JR北海道が採用している標準色と全く同じであり、外見上の変化はといえば、車両所有者の銘板が、黒地の「道南いさりび鉄道」に変わったことくらいです[①]。また、車内についても、これまたJR北海道所属時代と変わらない、青色の表地を使ったセミクロスシートのままとなっています[②]

 最初に停車するのは七重浜です[③]。「(ピンポンパーン♪)まもなく、七重浜です・・・」という車内放送の様式、そして声の主も、やはりJR北海道のときと変わりなし。そして駅舎(旧駅舎。現在の本駅舎は橋上駅舎)に何か貼ってあるので見てみると、そこには「心きらめく旅ツインクル」、「JR北海道」と書かれたシールが、そのまま残されていました[④]

 清川口の手前で大野川を渡ります[⑤]。ここはほぼ河口付近であり、向こうには函館湾が広がっているのですが、比較的列車本数が多く、ずっと市街地の中を通る五稜郭〜上磯間は、やや内陸側に線路が敷設されているということもあり、海側に座ったとしても、函館湾を眺める車窓は期待できません。ただし、よく知られているように、上磯〜木古内間は、絶景の連続です(この後お目にかかりましょう)。

 そして五稜郭から17分で終点の上磯に到着しました[⑥]。五稜郭〜上磯と上磯〜木古内では、その需要の度合いが全く異なり、利用客数にも相当な差があるため、上磯で折り返す列車も多数設定されています。私も、本当は更に木古内方面に向かいたいのですが、木古内行きはしばらくないため、やむを得ず上磯行きに乗車していました[⑦]



















 JR江差線時代からの変化が何かと小さい道南いさりび鉄道線ですが、駅名標については、自社様式のものを用意しています[①]。さしもの外国人観光客も、道南いさりび鉄道線にはそうそう乗るものではないと思いますが、駅ナンバリングもされています。

 上磯駅の近くには、太平洋セメントの上磯工場があり、セメント工場特有の大規模でメカメカしい設備群は、駅からでも眺められます[②]。そしてこの上磯工場は、非常に特徴ある設備を有していることで知られていますが、それはまた後ほど・・・。

 折り返しの列車が多数設定されていることからも分かるように、上磯駅は、かつてより江差線における主要な駅で、国鉄時代には、急行列車の停車もありました。また、みどりの窓口も設置されていたのですが、道南いさりび鉄道への移管に伴い、今となっては無人駅となり、待合室に自動券売機が1台ズドンと置かれているだけになっています[③]

 その待合室にある1枚のポスター[④]。「茂辺地駅より徒歩3分 寝台特急北斗星」。実は、北斗星号の廃止後、ある方が「北斗市に北斗星号の客車を保存したい」と発案し、それを実現するための資金をクラウドファンディングで募ったところ、本当に目標額が集まり、今、緩急車とロビー・ソロ合造車が、かつての茂辺地中学校の跡地に静態保存されているのです。

 というわけで、今日の”寝台列車との再会”は、北斗市に保存されている、かつて北斗星号で活躍していた24系(本物)を見学することです。保存場所からも分かるように、その最寄り駅は茂辺地ですが、茂辺地は上磯の1つ先、つまり上磯〜木古内間の駅。本数が少ない区間であり、列車のみで訪問するのには難儀するため、上磯駅からタクシーに乗り継いで向かうことにしています[⑥]

 ただ、せっかく海(函館湾)が近いのですから、すぐに北斗星号のもとへは向かわず、ちょっと歩いて海岸まで行ってみましょう[⑧]。しかし、いざ海岸まで来てみたは良いものの、想像以上に砂浜が汚く、ややがっかりしました。貝殻をはじめとして、木の枝、小石、落ち葉、吸い殻、プラスチックごみなどが流れ着いてきている・・・、というか、捨てられているというか・・・。

 海を挟んだ向こうに聳えるのは、観光地として大人気の函館山です[⑨]。上磯付近からは、函館山の側面を見ることができます。これが茂辺地辺りまで行くと、陸地がもう少し山の裏側に回り込むようになるので、山の後ろ側を見ることができるようになります。

 しかし、その函館山以上に目立ち、気になってしまうのは、湾に向かって突き出している、この謎の長い橋でしょう[⑩]。実は、これこそが、先ほど冒頭で「(太平洋セメントの)非常に特徴ある設備」と申し上げたもので、その正体は、製造したセメントを出荷用の大型船まで搬送する桟橋です。工場からのセメントは、この桟橋に敷設されたベルトコンベアを通り、橋に据え付けられた大型船に流し込まれます[⑪]

 水平線の行方を遮るかのように聳える桟橋は、やはり存在感も抜群です[⑫]。その長さは約2kmにも及び、本当に「長い」。「大きい」とかではなく、「長い」です[⑬]。今は昼なのでそれも分かりませんが、いわゆる「工場夜景」としても、なかなか綺麗なのだそうで[⑭]












 タクシーに乗り込んで、所要約20分・運賃2310円で、北斗星号が保存されている「北斗星広場」にやってきました[①]。いかに江差線の経営分離によって運賃が上がったといっても、上磯〜茂辺地間の運賃は300円ですから、タクシーを使う場合よりは遥かに安いです。一応、バスの利用も検討したのですが、鉄道と同様、どうにもこうにも良い時間帯に便がなく・・・。

 北斗星号の客車があるこの場所は、旧茂辺地中学校のグラウンド跡地を活かしたもので、北斗星広場と名付けられています[②] [③]。しかし、タクシーの運ちゃん曰く、「場所が良くない」とのこと。「新函館北斗駅にでも置いた方が、よっぽどたくさんの人に見てもらえるだろうに」と。まあ、わざわざ上磯駅からタクシーを走らせたことからも分かるように、アクセス性はイマイチで、「知る人ぞ知る」であるのはたしかです。

 さて、改めて客車を眺めてみましょう[④]。ここで保存されている2両の24系は、緩急車・オハネフ25-2と、半室ロビーとB寝台個室ソロを折衷した合造車・スハネ25-501です。個人的には、後者の保存が実現したことは喜ばしいですね。それこそオハネフ25などは、別に「北斗星専用」ではなかったわけで、「これは北斗星です」、「ここには北斗星が眠っています」と示すなら、やはりスハネ25の方が適任と言えます。

 青空の下、終息しかけの紅葉と共に語らうブルートレイン[⑤]。これはこれで美しいワンシーンで、非常に良いとは思うのですが、一方で、長期的な保存を視野に入れるのならば、「屋根くらいはあった方が・・・」と思わずにはいられません。贅沢なことだとは分かっていますが。募金のみで保存を実現するとなると、やはり資金的に、車両を輸送して線路を敷設するだけでも精一杯ではあるのでしょう。

 ここ北斗星広場のポイントは、単に客車を置いてあるだけなのではなく、そのすぐ脇に飲食店(中華料理屋)があるということです。その名は、北斗星号からとったのか、あるいは北斗の拳からとったのか、「北斗軒」[⑥]。このお店の存在は事前に把握していたので、北斗星広場へ行く時刻は、ちょうどここで昼ご飯を食べられるような時間帯になるように調整しておいたのです。

 ブルートレイン北斗星を眺めながらの昼ご飯。我々のような鉄道好きにはたまりませんね[⑦]


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