◆7月25日◆
Page:12

※各画像はクリックすると拡大します。



                         














 滝川市で朝を迎えました。空を覆っていた雲も徐々に取れてゆき、ホテルを出るころにはすっかり青空が広がっていました。夏の北海道といえば、やはり北海道特有の(何がどうそうなのか、と問われると結構難しいのですが・・・)爽やかな青空が特徴的ですが、今回の旅の中でようやく初めて青空を見ることができました。

 滝川駅といえば、一応それなりの街の玄関口であるにも関わらず、駅前になんとも言えず古ぼけた「スマイルビル」が聳えているのが印象的なところでした。ビルとしての図体は大きいものの、どう考えても様々なテナントが入って賑わっているとは言えないような雰囲気でしたが、2021年3月についにビルそのものが閉鎖されたとのこと。まあ、正直驚きはあまりないですね・・・。

 駅前には、もうひとつ聳えているものがあります。それはグライダーです。滝川市は、グライダーの飛行に必要な上昇気流が発生しやすい土地であることから「グライダーのまち」となり、市内には離着陸場があります。そういうわけで、駅前にも退役したグライダーが保存・展示されていて、駅に降り立った人たちに滝川市の特徴をアピールします。




                           















 「単に列車を乗り回すだけでなく、観光にも比重を置いた旅とすること」という指針に従い、今回、そのグライダー飛行を体験してみることにしました。タクシーでやってきたのは、石狩川の河川敷にある「たきかわスカイパーク」です。ここでは観光客がグライダーに搭乗することが可能であり、1回8,000円で飛行機とはまた違う空の旅を楽しむことができます。

 悪天候であってはいけないのは当然ですが、曇り空であっても、飛行中のグライダーからの絶景を堪能することはできなくなります。しかし、いま空を見上げてみるとどうでしょう。そこに広がっているのは、まさに爽やかな”夏の青空”です。雲量ゼロの超快晴ではなく、適度に雲があることにより、空が青一色の単調なものになっていません。それがまた良いのです。

 グライダーは、動力のあるモーターグライダーに牽引されて浮上します。そして一定の高度と速度を得たら、両機を連結するロープを切り離し、グライダー側は自然の力に任せて大空を飛びます。青色のモーターグライダーに引っ張られた橙色のグライダーは徐々に加速し、滑走路から車輪が離れて大空へと旅立ちました。さて、次は私の番ですよ。




                           















 グライダーは2人乗りで、前席には免許のある操縦者が座り、後席に私が乗ります。動力がない・・・ということは、要は電源がないということでもあり、冷房などあるはずもありません。いかに北海道が内地よりも涼しいといえども、密室も密室でザ・直射日光を浴びるような空間ともなれば、暑くないということはありません。

 しかし、そのようなちょっとした不快など、空を飛ぶ楽しさが打ち消してくれます。モーターグライダーに牽引されて速度を得たら、静かに、そして想像以上に滑らかに、グライダーは空中へと歩みを進めます。操縦者の方も仰っていましたが、普通の飛行機は、離陸するときはエンジン全開で大変なうるささになりますが、こちらは無動力なので、とにかく静かなのです。これが素晴らしい。

 飛行機のようなパワフルさもなければ、全てのモノを置き去りにするような速さもありません。しかし、”無動力”がもたらすかつてない”静かな空の旅”は、グライダーが風を切る音だけが奏でられる世界を作り、その眼下に見える光景は、手に届きそうな近さに感じられながらも、陸上からは決して見ることのできない光景を見せてくれます。

 あれ、空ってこんなに青かったかな。へえ、曇ってひとつあればこれだけの広さを陰らせるのか。おお、線路も国道もまさに一直線。水田は瑞々しく、それでいて水平にどこまでも広がっていそうな・・・。あっ、あれはかつての札沼線・新十津川駅付近。なんと、離着陸場が真下に。飛行時間は約10分という短いものですが、自然に身を任せて空を飛ぶあの10分間を、私は強く思い出に刻みました。

 先に書いたように、料金は8,000円ですが、決して高いことなどありません。これを目当てに滝川に立ち寄る価値は、十分にあると思います。風を切る音が最高のBGMになるたきかわスカイパークでのグライダー搭乗。お勧めします。


TOP                    10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20
21  22  23  24  25  26


DISCOVER どこかのトップへ

66.7‰のトップへ