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 降り立ったのは安国駅です。ホームの面は舗装されておらず砂利となっており、板張りの駅とアスファルト舗装の駅の中間というところでしょうか。もちろん普通列車しか停車しない駅です。

 乗車していた普通列車は、列車交換を行うため、ここでしばらく停車します。再度雨がぽつぽつと降り始めてきた安国駅で相手方の列車を待っていると、目の前を過ぎていったのは、網走行きの特急大雪号でした。キハ183系の初期型のスラントノーズ車両は、もはや全車両が引退してしまいましたが、「大雪」のヘッドマークは、あの大型のヘッドマークでこそより映えるものでした。

 生田原駅にもあった「ちゃちゃワールド」のポスターがここにも貼られていました。木のおもちゃを収集した博物館で、生田原町という小さな町にとっては、ひとつ分かりやすい観光スポットでもあります。ネタバレになりますが、私はこの後ここを訪れます。

 線対称な形状をした木造の駅舎は、1989年に建設されたもので、安国駅という”普通列車しか停まらない駅”にしては、なかなか立派なものです。そもそも駅舎などなかったり、車掌車の転用だったり、あっても倉庫だったりする駅も存在する北海道の中では、かなり恵まれていると言うべきでしょう。その駅舎はまた鉢植えに彩られ、小さな無人駅ではありますが人の営みを感じさせます。

 安国駅前にあるバス停「安国」から、北海道北見バスに乗って次の目的地を目指しました。この当時で1日3往復、目的の清里方面行きは10:59・15:14・17:24(これは土曜・休日運休)しかないという中で、安国14:57着⇒15:14発のバスという滑らかな乗り継ぎができたのは、奇跡と言っても良いくらいのものでした。

 バスに揺られること約5分で豊原54号というバス停に辿り着きましたが、さてここは・・・?




                           















 辺りは黄金色になった麦畑。耳を澄ませば、国道242号を通過する車の音。ある特定の施設や地区に近いというわけでもなさそうな、なんとも中途半端な位置に置かれている豊原54号バス停ですが、バス停標識の向こうに何かが見えます。それこそは本当の目的地(当然、豊原54号が目的地であるはずはない)、石北本線の秘境駅・生野駅です。

 秘境駅とは言ったものの、周囲はとても開けていて、また近くを国道242号が通っているということで、そこまで僻地にあるという雰囲気はありません。しかし、周囲に民家は少なく、簡単な待合室も設けられていない1面1線の小さな駅は、北海道の農村地帯に似合う佇まいを備えていて、昨日の南斜里駅と同様、しばらく無為に時間を過ごしてみたくなる空間でした。

 このような小さな駅ですが、ホームの面はアスファルト舗装がなされていて(安国駅よりも立派・・・)、「みすぼらしい」という感じはありません。とはいえ、駅の造りで停車本数が決まるわけでもなく、最末期(私が訪れたとき)は、1日に1.5往復しか停車しないという状況になっていました。先ほどのバスは豊原54号に15:19に着きましたが、16:20発の生田原行きがあり、1時間ほどの待ち時間でこれに乗れます。

 この1時間ほどという待ち時間は、巨大なターミナル駅であれば、うろうろとしていれば何とでも時間の潰しようがあるのでしょうが、このような秘境駅となると、”駅の探索”はものの3分もあれば十分であり、すぐに退屈な時間に突入してしまいます。ひんやりとした北の大地では、セミの鳴き声も聞かれず、聞こえてくるのは車の走行音ばかり・・・。




           








 16:20発の生田原行きの普通列車に乗車し、生野を発ちます。先ほど乗った遠軽行きの普通列車は、生野を通過してしまう列車であり、それゆえに、安国で降りる⇒バスに乗る⇒豊原54号で降りる⇒生野駅に行く、という手順をとる必要がありました。バスの本数や石北本線の本数を考えると、それがここまで綺麗に繋がったことには驚きます。

 2021年3月のダイヤ改正で廃止されましたが、当時(2020年7月)は、遠軽発生田原行きという区間列車があり、それがこれでした。途中の駅は安国、生野の2つだけで、まさに存在意義が微妙な列車でしたが、同改正によって生野駅共々姿を消しました。なお、石北本線の生野駅が消えたことにより、播但線の生野駅は、JR線でただひとつの”生野”となり、切符の表示から”(播)”が取れました。

 ガラガラの列車(当然)に揺られて、私は再度生田原に戻りました。


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