パブタイムのひとときを楽しんでいる間に、列車は青函トンネルに入ってしまいました。ここまで来ると、「本州」というものの存在を意識せずにはいられません。本州に上陸はしていませんが、少なくとも、北海道を離れてしまったことはたしかです。
下り列車が通る線路を見つめてみます[①]。2015年度末の開業を目指して建設工事が進む北海道新幹線ですが、青函トンネル内は、在来線の車両も新幹線の車両も通れる三線軌条となっています。狭軌の線路の外側に、新幹線用に敷設されたレールが並走します。北海道新幹線の開業は、もうそう遠いことではありません。私はあと何度「夜行列車で青函トンネルを通過する」ということを体験できるのでしょうか。
元・竜飛海底駅[②]。隣の吉岡海底駅は2006年3月から長期休止駅となりましたが、相棒ともいえる竜飛海底駅は営業を続け、2014年3月のダイヤ改正で廃駅となるまで営業を続けました。駅として一般の乗客を乗降させる役割はなくなりましたが、現在、そして今後も、緊急時に乗客を避難させる拠点という役割は残っています。ホームに大きく口を開ける、避難路へと繋がる通路が見えます[③]。
単調で変化のない走行音が40分以上は続いたでしょうか・・・、その走行音がフッと途切れて、空が見えました[④]。北の大地を離れ、海底トンネルをくぐり、ついに本州に戻ってきてしまいました。青函トンネルの区間は眠っておいて、目覚めたら本州だった・・・というのもなかなか感動的でしょうが、トンネルの走行を全て見届け、「いつまでこの眺めが続くのだろう」と思ったときにやってくる脱出の瞬間を見届けるのも、これはこれで感動的です。
やけに明るく、そしてホームのようなものがある場所を通過します[⑤]。津軽今別駅でしょうか。この辺りでは、現在、奥津軽いまべつ駅の建設を含む北海道新幹線の建設工事が進められており、それは深夜にも行われます。カシオペア号は、その横を通過していきます。去りゆく者と来る者・・・というのは大げさかもしれませんが、新幹線の忍び寄る足音が聞こえてくるようです。
トンネル内に現れた2本の光線[⑥]。そしてその後ろに連なる青い客車たち[⑦]。札幌行きの急行はまなす号とのすれ違いです。8月30日、私は下りのはまなす号のドリームカーから、上野へ向かうカシオペア号の姿を見ました。7日後、乗車する列車を入れ替えて、今度は札幌へ向かうはまなす号の姿を見ました。はまなす号から見た7日後の自分と、カシオペア号から見た7日前の自分。不思議な気持ちになります。
列車は蟹田で運転停車します[⑧]。ここでは機関士のみが交代し、車掌は青森で交代となります。蟹田を発車して、引き続き単線の津軽線を南下し、機関車交換を行う青森を目指します。青森駅に到着する直前、青森〜上野間を牽引するEF510形が待機している姿を目にしました[⑨]。
23:40、列車は青森に到着しました[⑩]。既に最終列車が出発してしまっている青森駅はひっそりとしている・・・と思っていましたが、カシオペア号の撮影のためにホームに立つ人が何人かいました。終電は出たのに駅構内にいて良いのか?とも思いましたが、青森駅を最後に出る列車は23:37発の弘前行きの普通列車なので、それからまだ時間が経っていません。深夜の2時や3時ならともかく、これくらいは黙認というところですかね。
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