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 時刻は21:40。パブタイムの営業が始まっていたので、3号車のダイニングカーこと食堂車へ向かいました。パブタイムは予約不要で利用でき、安価な料理も多数用意されている(ディナータイムと違って、安価に「食堂車」を体験できる)ので、人気があります。そのため、「満席で待たされるかもしれない」と思っていましたが、実際にはすぐに入れました[①]。ただ、「おひとり様ですか」という言葉は、やはり結構きついものがあります(笑)

テーブルクロスのかかったテーブル、その机上を明るく照らすスタンドライト[②]。清潔感のある真っ白な天井と、そこから漏れ出る間接照明[③]。派手な装飾は一切なく、煌びやかな内装ではありませんが、食堂車としての上品な雰囲気に満ちています。派手さと豪華さを突き詰めたトワイライトエクスプレス号の食堂車とは異なり、基礎だけをきちん磨き上げ、すっきり・さっぱりとした空間を意識したというように思われました。

 さて、何を頼みましょうか・・・[④]。私としては、一応、このパブタイムでの食事を「夕飯」として位置づけています。そのために、ここまでカツサンドだけで飢えを凌いできたわけですから。ある程度お腹を満たせる量のあるものを・・・ということで検討した結果、煮込みハンバーグセット(2060円)を選択しました。高いと言えば高いですが、カシオペア号に乗ってしまった以上、今更数百円単位のことなんて気にしてもしようがありません。

 なお、セットの内訳は、リヨン風サラダ・煮込みハンバーグ・パンorライス・コーヒーor紅茶 となっています。ライスとコーヒーを選びました。

 最初に出てきたのは「リヨン風サラダ」[⑥]。最初は、サラダかあ・・・と思いながら渋々と口に物を運びましたが、かかっているそのソースのなんとおいしいことか。噛むとサクッという音を立てるクルトン、厚みのあるベーコンがおいしさをさらに引き立て、結局、「これはおいしい」と思いながらあっという間に完食してしまいました。このおいしさは予想外でしたね。

 続いて煮込みハンバーグとライスが配膳されました[⑦] [⑧]。列車の食堂車で食べているということの補正を抜きにしても美味なものでした。ポテト・ブロッコリー・ニンジンがそれぞれ2個ずつついてきますが、これらはデミグラスソースを絡めて食べることで、よりおいしくなります。ライスもおいしいんですが、その正体は・・・、まあ、ここで詮索するのはやめておきましょう。たぶん、「豪華寝台特急の食堂車」の夢が壊れますから。

 ホットコーヒーは食後にやってきました[⑩]。しかし、冷たい飲み物も欲しかったので、煮込みハンバーグセットとは別にリンゴジュース(370円)も注文してしまいました[⑪]。セットにつくコーヒーがアイスのものであれば、それだけで別に十分なんですけどね。

 花瓶に挿された造花が、卓上にちょっとした華やかさをもたらし、「食堂車での特別なひととき」を演出します[⑫]。そして列車は青函トンネルの中に入りました[⑬]。何が見えるというわけでもありませんが、「津軽海峡を潜り抜ける海底トンネル」の中での食事というのは、非常に特別なもの。流れゆく蛍光灯を見つめながら、コーヒーとリンゴジュースを飲みました。



















 パブタイムのひとときを楽しんでいる間に、列車は青函トンネルに入ってしまいました。ここまで来ると、「本州」というものの存在を意識せずにはいられません。本州に上陸はしていませんが、少なくとも、北海道を離れてしまったことはたしかです。

 下り列車が通る線路を見つめてみます[①]。2015年度末の開業を目指して建設工事が進む北海道新幹線ですが、青函トンネル内は、在来線の車両も新幹線の車両も通れる三線軌条となっています。狭軌の線路の外側に、新幹線用に敷設されたレールが並走します。北海道新幹線の開業は、もうそう遠いことではありません。私はあと何度「夜行列車で青函トンネルを通過する」ということを体験できるのでしょうか。

 元・竜飛海底駅[②]。隣の吉岡海底駅は2006年3月から長期休止駅となりましたが、相棒ともいえる竜飛海底駅は営業を続け、2014年3月のダイヤ改正で廃駅となるまで営業を続けました。駅として一般の乗客を乗降させる役割はなくなりましたが、現在、そして今後も、緊急時に乗客を避難させる拠点という役割は残っています。ホームに大きく口を開ける、避難路へと繋がる通路が見えます[③]

 単調で変化のない走行音が40分以上は続いたでしょうか・・・、その走行音がフッと途切れて、空が見えました[④]。北の大地を離れ、海底トンネルをくぐり、ついに本州に戻ってきてしまいました。青函トンネルの区間は眠っておいて、目覚めたら本州だった・・・というのもなかなか感動的でしょうが、トンネルの走行を全て見届け、「いつまでこの眺めが続くのだろう」と思ったときにやってくる脱出の瞬間を見届けるのも、これはこれで感動的です。

 やけに明るく、そしてホームのようなものがある場所を通過します[⑤]。津軽今別駅でしょうか。この辺りでは、現在、奥津軽いまべつ駅の建設を含む北海道新幹線の建設工事が進められており、それは深夜にも行われます。カシオペア号は、その横を通過していきます。去りゆく者と来る者・・・というのは大げさかもしれませんが、新幹線の忍び寄る足音が聞こえてくるようです。

 トンネル内に現れた2本の光線[⑥]。そしてその後ろに連なる青い客車たち[⑦]。札幌行きの急行はまなす号とのすれ違いです。8月30日、私は下りのはまなす号のドリームカーから、上野へ向かうカシオペア号の姿を見ました。7日後、乗車する列車を入れ替えて、今度は札幌へ向かうはまなす号の姿を見ました。はまなす号から見た7日後の自分と、カシオペア号から見た7日前の自分。不思議な気持ちになります。

 列車は蟹田で運転停車します[⑧]。ここでは機関士のみが交代し、車掌は青森で交代となります。蟹田を発車して、引き続き単線の津軽線を南下し、機関車交換を行う青森を目指します。青森駅に到着する直前、青森〜上野間を牽引するEF510形が待機している姿を目にしました[⑨]

 23:40、列車は青森に到着しました[⑩]。既に最終列車が出発してしまっている青森駅はひっそりとしている・・・と思っていましたが、カシオペア号の撮影のためにホームに立つ人が何人かいました。終電は出たのに駅構内にいて良いのか?とも思いましたが、青森駅を最後に出る列車は23:37発の弘前行きの普通列車なので、それからまだ時間が経っていません。深夜の2時や3時ならともかく、これくらいは黙認というところですかね。




















 どのくらい眠ることになるかは分かりませんが、いつでも眠れるように、ここでベッドメイキングをすることにしました。補助ベッドは壁面から引き出すだけで使用できますが、床面に置いてあるベッドは、自分で組み換える必要があります。補助ベッドを荷物置き場として使用してしまっている以上、必然的に床置きのベッドで眠ることになるので、床面のベッドを組み換えます。

 組み立て方をご案内しましょう。向かい合わせになっているソファーの座面の下には、このような取っ手がついています[①]。この取っ手を引くと・・・、座面が移動します[②]。座面を動かしたら、次は、背もたれを固定しているマジックテープを外します[③]。マジックテープを外して背もたれをそのまま手前に引いて倒すと、先ほど動かしておいた座面と繋がり、フラットな面が出来上がります[④]

 この組み換えを、向かい合わせになっているもう一方のソファーでも行います。そうすると、背もたれ・座面・座面・背もたれと繋がって、見事にソファーからベッドへと変身しました[⑤]。あとはシーツを敷き、枕を置けば、立派なベッドの出来上がりです[⑥]

 なお、カシオペアツインでは、床置きのベッドはL字型となるようになっています。組み換えを行わない側のベッドは、最初からほぼ完成に近い状態となっていますが、ソファーの背もたれが邪魔をしてしまっています。この組み換えを行うことにより、邪魔となる背もたれがなくなるので、組み換えを行わない側のベッドは、組み換えを行う側の操作の完了によって、自動的にベッドが出来上がります。

 ここでフェイスタオルと浴衣が入っているビニール袋を開封してみました。フェイスタオルは白一色ですが、カシオペア号のロゴ入りです[⑦]。浴衣は紫色のもので[⑧]、左胸のところに、色付きのカシオペア号のロゴが入っています[⑨]。ここで浴衣に着替えようかと思いましたが、シャワーも浴びていないのに浴衣になるのはおかしいと思い、また車内での行動が制限されるため、結局私服のままでいました。

 なんとなく、液晶モニターをカーナビモードにしてみました[⑩]。・・・が、よく見てみると、これはおかしいですね。野辺地付近を走っているのに、なぜか「東北本線」と表示されてしまっています。言うまでもなく、現在は、そこは青い森鉄道線となっています。地図データが古いもののまま更新されていないということのようですね。ただ、目時〜盛岡間はIGRいわて銀河鉄道と出たので、2002年の東北新幹線八戸開業は反映しているようです。


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