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 完全に観光列車仕様となったキハ185系・・・厳密に言えばキロ185になっていますが・・・の内装には、普通の特急型車両だった頃の面影はありません。外観は種車の姿を色濃く残していますが、逆に内装は全くの別物にになっています。もはや普通の座席はなく、全てが食事に向いたカウンター席となっています(ただ、正直、この座席で”グリーン車”はいかがなものか?)。

 以前の私なら、寝台列車の食堂車を除けば、列車内での食事にはあまり興味を示さなかったことかと思いますが、今の私は、一応は「大人」です。伊予灘ものがたり号のときと同様、専用の食事(5,000円)を予約しています。食事を予約していない人、または予約している人でも、更に何か欲しいと思ったときには、メニューからの注文が可能です。もう車は運転しませんから、アルコールでも飲みますかね。

 窪川を出た列車の途中停車駅は、時刻表上は土佐久礼のみとなっています。影野は淡々と通過していきましたが・・・、先ほど見たあの幟はなんだったのでしょうか。特に運転停車をするわけでも、地元住民による見送りがあるわけでもありませんでしたが・・・。

 一瞬海が見えると、土佐久礼に着きます。土佐久礼では約12分停車し、その間に地元の名産品を販売するマルシェが開かれます。そうすると、列車内からはアテンダントを除きほぼ人が出払うので、車内の写真を撮るためにはちょうど良いチャンスとなります。今日は2号車の「ソラフネ」と名付けられた車両に乗車していますが、もう一方の1号車は「クロフネ」と名付けられています。

 ”ソラフネ”は、座席〜壁面は白を基調とした仕立てとなっている一方で、天井は宇宙空間を思わせるデザインが施されており、金色の照明ポールの存在も相俟って、「ありそうでなかった」新鮮な車内デザインとなっているように感じられます。近頃って、どうしてもなんでもかんでも「木目調」や「木材」を使うのが流行りですからね(もっとも、1号車はそういう内装になっていますが)。




                                         





















 土讃線の中ではとりわけ海に近いところにある安和駅で運転停車。山間部を縫って走るというイメージがある(だいたい大歩危・小歩危のせいでしょうか)土讃線は、実際その通り海沿いを走る区間は限られており、”太平洋の絶景”が望める場所は非常に少ないです。普通の特急列車であれば素通りしてしまうところを、志国土佐時代の夜明けのものがたり号では、運転停車によって堪能できます。

 予約していた食事が木箱に入って出てきました。上り便は運行時刻が非常に中途半端(15:13〜17:54では、昼食とも夕食ともつかず、しかしおやつというには量が多いような)ですが、これくらいの提供量ならば、夕飯には支障はないでしょう。今日は、もう高知に着けばホテルに入るだけなので、まあビールでも飲みましょうか・・・。

 「移り変わる絶景を見ながらの食事」は、鉄道だからこそできる特権です。そういうこともあって、私は、「駅弁は列車が動いているときに食べること」という妙なマイルールも課しているのですが(例えば始発駅発車前の停車中に食べてはいけない)、雄大な太平洋を見ながらの食事はやはり良いものです。車や飛行機では、こうはいきません。

 須崎で運転停車をします。時刻表上は通過ですが、単に運転停車をするだけではなく、乗降扉が開けられ、ホームに降りることが可能であり、駅の外に出たり、ホームで展開される「須崎駅19分劇場」と銘打った、地元住民によるパフォーマンスを見学することもできます。ここでは乗客におもてなしプレゼントも配布されますが、このときに貰った醤油、大活躍しています。あ、あと、不織布の手提げ袋も・・・。

 1000形気動車が3両編成を組んでいるのは、高校生が帰宅する時間帯に向けての増結運用でしょうか。またここで後続の特急あしずり12号に先を譲りますが、当該の車両は2000系。今までだったらどうということもなかった景色が、今後ますます貴重になってゆきます。一般形の2000系が、もはや11両しか残存していない(2022年7月現在)状況となっては・・・。




                                         





















 続いて佐川に運転停車します。停車時間は長くありませんが、ここで献立表の端に付いていた「コーヒーチケット」を駅へ持ってゆくと、コーヒーまたはお茶と引き換えることができるほか、佐川で仁淀川の青を表現した「仁淀ブルーゼリー」がデザートとして提供されることになっています。なるほど、たしかに水質ランキングで常に1位を取っているその美しい色合いが、ゼリーの中に落とし込まれています。

 次に運転停車をするのは日下ですが・・・、何やらホームが騒々しい。どうも今日の志国土佐時代の夜明けのものがたり号の上り便には、本列車への乗車回数が通算100回になった人がいるようで、地元住民によるお出迎えの中に、その人に対するお祝いが組み込まれていたようです。

 ここからはただの愚痴ですが、個人的には、どうもこのようなものは好きになれません。別に何回この列車に乗るのもその人の自由ですが、その手の自称”常連”は、アテンダントに馴れ馴れしく絡んだり、いかにも自分はここでの有名人であると言わんばかりの立ち居振る舞いをしていることが少なくない気がします(個人の所感ですが)。

 100回目の乗車でこういった祝福がされているということは、いつかどこかで「私はこの列車によく乗っているんですよ」、「今回は99回目で、実は次回で100回目になるんです」などとアテンダントに言いふらしたか、お出迎えにやってくる地元住民に言いふらしたかでもしたのでしょうか。乗車回数など決して自慢でも何でもなく、何回乗ろうと自分の存在を前面に打ち出すようなことはせず、粛々と観光列車に乗るのが良いと思うのですが。

 あなたは自分のことを「この列車における常連」だとか「この列車における主」だとでもお思いなのでしょうが、そのようなことは、アテンダントからすればどうでも良いことです。自分を特別な存在だと思い込み、みんなから丁重に扱われることに喜びでも感じているのかもしれませんが、誠に醜い。例の100回目の人、祝福に感極まって号泣していましたが、列車の私物化というべきか、なんというか・・・。

 とさでん交通は、高知県内における貴重な”電車”。なにぶんJRの電化率がゼロ%ですからね・・・。一昨日に伊予市を出て以来、電化された鉄道とは無縁の状態を送っていますが、とりあえず目で目撃することだけはできました。高知県内のJR線に電化路線は全くありませんが、高知駅の前後は高架化されており、”非電化であるが高架駅”という、全国的にはそこそこ珍しい事例がここにあります。

 そうして窪川から2時間40分で終点の高知に着きました。普通の特急列車であれば、平均的には1時間〜1時間10分くらいで駆け抜ける区間ですが、観光列車ということでずいぶんのんびりと走りました。この速さで特急列車、そしてあの座席でグリーン車というのは、個人的には色々と思うことはありますが、キハ40系で特急と言わないだけはマシでしょうか。

 いつからか、観光列車=水戸岡のイメージがついてしまいましたが、同氏に頼らないで自ら意欲的な観光列車を生み出すJR四国の姿勢は、とても好きです。私はそういう列車にこそ大いなる価値を感じます。


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