Page:24

※各画像はクリックすると拡大します。



                                         





















 バスに乗って祖谷のかずら橋に来ました。この辺りでは一番の名所でしょう。複合施設「かずら橋夢舞台」の駐車場を見ると、そこでは渓谷で踏ん張る無骨な脚を見ることができ、いかに険しい場所に駐車場を建設しようとしたのかが分かります。道路(県道32号線)と同じ高さに駐車場を設けるために払った苦労がしのばれるというものです。

 徳島では有名な観光地ではありますが、とはいえ多くの人でごった返すというほどではなく、全体的にひっそりとしています。ま、そもそもそういう場所だと言えばその通りですが。バスで来る人はまずおらず、バス停からかずら橋に向かう道を行き来する人も限定的。「祖谷宝物館」なる資料館は、いったいいつ閉館したのか、もはや廃墟となっていました。

 時間帯的に昼食を食べたい頃合いでしたので、カフェ「森のくまさん」にお邪魔しました。屋外のテラス席に出れば、自然の空気にそよがれながら食事ができます。失礼ながら、この手の喫茶店というのは、食事を頼んでも量は少なかろうと思っていたので、ホットサンドを2つ(カツサンド、ベーコンチーズポテト)頼んだのですが、さすがに調子に乗りすぎたようです。量・・・、多かったです、ハイ。

 祖谷のかずら橋がスリルに満ちた橋であることは、遠めに見ても分かります。足下を流れる祖谷渓は美しく澄んでいますが、その上の通過するかずら橋は、なにぶんにも蔓で編まれた「自然の橋」。それだけなら良いのでしょうが、足場は一定の間隔をもって配置されており、橋を歩くときには、その隙間から下が見えてしまうというのです。それが恐いと感じる人も多いみたいです。

 祖谷の自然の一部となってしまいそうなかずら橋は、外から見ているだけで、当然真価は分かりません。かずら橋の神髄に触れるためには、端から端まで歩いて渡る必要があります。さあ、料金所へ行きましょう。




                             















 祖谷のかずら橋は、威容も満点です。大木とそれに括り付けられた支柱、その先に伸びる蔓の橋。考えてみると、いわゆる”橋”って、中央が盛り上がっているのが普通であるわけですが、祖谷のかずら橋は、自らの重量によって垂れ下がる・・・つまり、中央部ほどへこんでいるわけですね。そういう点でも「変わった姿をした」橋なのかもしれません。

 ひとつひとつの足場は細く、下を流れる祖谷渓のせせらぎがよく見えます。足場の大きさと隙間の大きさと比べると、明らかに後者の方が大きく、即ち祖谷のかずら橋は、足の踏み場がない空中の方が領域的には広いということになります。ただ、いくら怖いと感じてしまうのだとしても、正面だけを見て手すりにしがみつきながら歩き切ってしまっては、祖谷のかずら橋は味わい尽くせません。

 時に足下を覗き込み、時に横を眺め、時にかずら橋そのものの造形を楽しんで。せっかく片道550円を払って歩いているのであれば、ゆっくりと時間をかけて渡り切りたいものです。目で見るも良し、歩いてきしむ音を聞くも良し、蔓に触れて感触を知るも良し。かずら橋に来るからは、どうせなら五感をフルに活かして体験するのが良いでしょう(味覚は無理ですが・・・)。

 かずら橋は天然の蔓によって編まれている以上、定期的な架け替えが必要であり、現在は3年に1度の頻度で架け替え工事が行われているとのことです。また、現代社会で使う橋とあっては、全面的に天然素材で造るというわけにもいかないのか、実際にはワイヤーによる補強がなされています。ただし、それは極力見えないように、蔓によって隠されています。

 かずら橋の近くには、どうやら2匹の茶トラの猫が住み着いているようです。野良猫にしては見た目が綺麗すぎるので、あるいはどこかの飼い猫かもしれませんが、この暑い夏場とあっては、日差しが当たるところには出てこず、日陰で休んでいました。




           








 路線バスに乗ります。都市で見かける路線バスと同じ大きさの車両のようで、よくこれで隘路を走り切れるなと感心したものですが、それと同時に、これでは輸送力過剰にならないだろうかと心配になってしまいます。で、現に、始発のかずら橋夢舞台を出たとき、その乗客は私ひとりだったというわけですが(そのあと増えた覚えも特にない・・・)。

 一眼レフをぶら下げながらさまよっている姿にそう思ったのか、運転手曰く、「旅行雑誌の取材の人かと思った」とのこと。こうして旅日記を書いてこそいるものの、もちろん私はただの一旅行者です。旅日記を書くことと引き換えに収益を貰っているという身分でもありません。お金を貰って旅をする・・・これを”職業”にしてしまったら、たぶん、いろんなしがらみに囚われてしまうのだろうと思います。

 今日最後の観光をしに、大歩危の舟下りへの乗り場「大歩危峡まんなか」に向かいました。だいぶ長い旅になりましたが、これをこなしたら、あとは帰路へとつくだけです(とある秘境駅に降りるという寄り道はありますが)。


TOP                    10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20
21  22  23  24  25  26  27


DISCOVER どこかのトップへ

66.7‰のトップへ