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 眼下に見えているのは吉野川です。水は澄んで綺麗ですが、その流れは急流そのもの。先ほどまで見ていた祖谷渓のあまりにも穏やかな様子とは、まるで別物です。水流がせめぎ合うところは泡立ち、その部分だけが白色に変化します。吉野川の両側に聳える奇岩は、この激しい川の流れが幾年もの年月を重ねることで作られた、歴史の産物です。

 「険しい」という3文字が身に染みて感じられるこの一帯を、向こうに見える特急列車はすいすいと駆け抜けてゆきます。もちろん、それは線形が良いからではなく、振り子式車両2700系が持つ能力によって成し遂げられています。キハ181系時代なら、きっとのろりのろりと走っていたであろう場所でも、2700系は苦にしません。

 この吉野川を遊覧船が運航しているということで、それに乗ってみたいと思います。道路や商業施設は高いところにあり、一方で船への乗り場は川のレベル・・・つまり低い場所にあるので、乗船券を購入したら、階段を通じて下へと向かっていきます。単に川岸へ行っているだけなのですが、都市部でもないのに地下へ向かっているような感じがあります。

 1つ前の便が戻ってきました。どうもここでは魚の餌も売られているのか、前の便から下船してきた子供が、運航中に撒きそびれたのであろう餌を乗り場で一気に川に投げ、魚たちが次から次へと押し寄せてきました。




                           















 今日は平日なので、これから乗る15:30の便が最終便です。1つ前の便には、それなりの乗客がいたのですが、この便は私も含めて合計2人しか乗客がいませんでした。まあ、そんなものでしょうか?

 乗り場を出発した遊覧船は、北に向かって進んでゆきます。いくら四国三郎・吉野川といっても、これはラフティングではないので、乗っていて身の危険を感じることはありません(乗り心地はいたって平凡です)。周りを見れば、個所数∞と言っても過言ではないであろう、多くの奇岩が聳えています。人が生きる100年だけでは生まれない、地球の歴史そのものがここに現れています。

 一方で下を見てみれば、グリーンともブルーともつかない川の色が目を惹きます。その色はたしかに濃いのですが、しかし周囲にある自然が映り込むくらいには綺麗であり、激しい流れが特徴の吉野川も、他方では美しい川と呼べることが分かります。そして視点を上の方に引き上げれば、瑞々しい緑が繁茂し、それが奇岩が居並ぶ荒々しさと同居しています。

 いくらでもある奇岩の中でひときわ目立っているのが、やや灰色で、横方向に筋が入った岩。それは獅子岩と呼ばれ、なるほどたしかにライオンのように見えます(この手のモノって、そうは言いつつも「まあこじつければそう見えなくもないか・・・」くらいのものが多い気もするのですが、これは本当に獅子に見えます)。ま、筋の方向のせいで、鬣がただのオールバックになっていますが!

 小さな滝あり、筋の方向が逆転した岩あり、突き出した岩で流れが激しくなる場所あり、そして岩場に身を寄せる蝶の姿あり・・・。約25分、ただただ川を1往復してくるだけなのかといえば、この遊覧船は、決してその程度のものではありません。




                       













 レストランと遊覧船乗り場にはだいぶ高低差がありますが、かつて吉野川が増水したときには、レストランの建屋のギリギリに迫るくらいまで水が増えてきたようです。本当に床に上がってくるかどうかの寸前くらいまで来ていたということですね。

 大歩危駅まで戻りますが、タクシーに乗るにはもったいなく、しかし都合よく路線バスがあるわけでもなかったので、歩いて駅まで向かいます。大歩危峡まんなかから大歩危駅までは1.8kmなので、暑くて大変というのはありますが、距離そのもので言えば、歩くのが苦になるほどではありません。上から吉野川を見ると、太陽の光が当たり、この川が思っていたよりも透明だったことが分かります。

 ところで吉野川の川辺に降りることってできるのだろうか・・・と思っていたら、道路から下へ繋がる階段が生えていました。しかし、それは細く、暗く、蜘蛛の巣が張られ、雑草にまみれ・・・。「これは絶対に無理だろう」と思うほどではなく、無理やり進んでゆけなくもなさそうという程度の荒れ具合なのが、またなんとも。でも、降りたところで、ここでは釣りもできなさそうですが。

 吉野川は、光の当たり具合によって、その見た目を変えます。陽が当たるところは明るい緑色に、影になってしまうところは暗い青色に見えます。先ほども触れましたが、透明度は高く、川の底はしっかりと確認することができます。

 大歩危駅の近くにある、謎の橋桁の残骸は、「歩危観橋(ほけみばし)」の跡。今、吉野川の両岸は、歩道付き・自動車の対面通行も可能な大歩危橋によって結ばれていますが、1974年にそれが開通するまでは、大歩危駅付近で対岸に渡るためには、歩危観橋を渡る必要がありました。しかし幅は3.23mだったと記録されており、これでは自動車の対面通行など不可能です。


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