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 まだまだ秋などではないはずですが、群れを成すトンボを見ていると、まるで季節は秋なのかと思ってしまいます。トンボが自然の中を飛び交う景色はいかにも牧歌的であり、時間の経過と共に暗くなっていく外界や、その姿を絶え間なく変えてゆく雲の様子などは、あたかも季節の深まりを示しているかのようであり、ここに限っては、真夏というよりかは、秋に向けた季節の移ろいが展開されているかのようです。

 佐田岬灯台は100年以上の歴史を持つ灯台であり、今日まで海峡の安全を守り続けてきました。青空とは対照的な色合いの、しかしそれでありながら雲の白には溶け込んでゆくような白亜の出で立ちは、飛行機雲が筋を描く一瞬にもよく似合います。空を目指してスッと立ち上った灯台と、青空に白い筋を残した飛行機雲。青空によくマッチする白はどちらなのか?と競い合うようでもあります。

 灯台付近にやってきた時点で19:00が目前だったので、辺りはどんどん暗くなってゆくわけですが、それを苦に思わずに「またとない一瞬に出会えるチャンスかもしれない」と捉えることは重要です。日没の間際は、時間が1分2分と経過するたびにその眺めを変えますが、刹那的な絶景こそ価値があるというものです。「2022年7月22日の佐田岬」は、どうあがいても二度と再現されるものではありませんから。

 佐田岬先端の御籠島まで行き、とりあえず周辺をうろうろと。ここに到達するまでの道のりはなかなか厳しいものがありますが、灯台があり、また観光地にもなっているので、ある程度整備はされています。草木を掻き分けるような羽目にはなりません。4連休となる休みなので、もっと大勢の人が押し寄せているかと思いましたが、それほどではなかったです。まあ、人が多すぎたら、ちょっと最果ての秘境感も薄れてしまいますが。

 夏至はとうに過ぎていますが、7月の西日本ということもあり、日没時刻は遅いです。今日の日没時刻は、おおよそ19:20というところでしょうか。関東で育ってきた人間なので、陽が長い時期に西日本にやってくると、日没の遅さに違和感を覚えることがあります。今でこそ大阪に住んでいますが、それでも愛媛は大阪よりも更に西にありますから、また一層日没が遅いわけです。

 19:00を過ぎてもなお明るいものの、それでも陽は徐々に沈むもの。1分、また1分と経過して太陽が水平線に近づくたびに、太陽の周囲と空の色は変化し、一瞬の偶然が織り成す絶景が次々と繰り広げられます。暗くなると駐車場に戻るのも一苦労になるためか(山道には碌に街灯もない)、日没よりも前に引き上げる人が多いようでした。

 モニュメント「永遠の灯」は、灯台の形を描いたもの。一体にしないで「2つの柱が寄り添い形づくる」ところがポイントのようです。




                                         





















 岩に掘られた洞窟は、戦時中に砲台を整備するために掘られたものであり、海峡部に向かって大砲が置かれました。今も置かれている砲台はあくまでもレプリカですが、やけにリアルに錆び付いているので、一見すると本物のように見えなくもありません。

 今日は残念ながら快晴とまではいかなかったため、日没時刻を迎えるよりも先に陽射しが届かなくなりました。ここからまた歩いて1.8kmも歩かないと駐車場に辿り着かないというのは、ハッキリ言ってそれ相応の危険も覚悟する必要がありますが、暗闇を切り拓くための懐中電灯は持ってきています。それがないと、日没後に山道を歩くのは、かなり大変になってしまうかと思います。

 岬の先端で水平線に落ちる太陽を目撃できれば最高だったのですが、達成ならず。いよいよ薄暗くなってきたので、私も駐車場に戻ります。丘の斜面に咲く花々は、あまり街中で見かける種類の花ではないような気がして、”四国の最西端”という地理によく似合います。

 辺りが暗くなればなるほど、それまでは白亜の構造物としか見えていなかった灯台の、その中にある光源が光を放ちながらくるくると回転し始めていることが分かるようになり、灯台としての機能を真に果たす姿が見られるようになりました。

 駐車場に向けてとぼとぼと歩いていると・・・、空の色が再び変わり始め、なんだか赤色の部分が目立つようになってきていることに気づきました。青空と混じる赤色は綺麗だな・・・と思っていたら、目の前に浮かぶ雲の全てが真っ赤に染め上がり、青空がある領域を圧倒する、これまでにない絶景が展開されていました。その赤い闇の中を行くのは、漁船か小型貨物船か・・・。ああ、なんて素敵な眺めなのでしょうか。

 茜色の空というのは、詩的表現や歌詞の中では見聞きすることはあっても、「では本物の”茜色の空”とやらを目撃したことはあるか?」というと、自信は持てないものでしたが、今日、私はそれを肉眼を通じて間違いなく視認しました。水平線の向こうに姿を消してもなお、太陽としての有り余る力が放たれ続け、それが純白の雲を赤色に燃やす景色は、まさに自然が作り出す刹那の美です。分単位どころか、秒単位でも持たない「一瞬の奇跡」。

 それが4〜5分も経つと、いよいよ陽の光は虫の息となり、夜の闇が世界を支配するための準備が整う・・・と言いたいところなのですが、それでもなお水平線の上には茜色が躍って、空にも闇に染まり切らない”青色”が力強く残っており、19:30を過ぎたにも関わらず、夜はまだここには訪れていないようでした。雲は白にも赤にも青にもなり、変幻自在の色合いをもって「壮大な絵画」の立役者となります。

 今日のホテルは、大洲市内にある「ホテルオータ」でしたが、佐田岬からの移動の途中に休憩なども挟んだ結果、ホテルに着くころには、既に22:00くらいになっていました。やれやれ、ではありますが、あの絶景を収穫できたのならば、どんな困難も疲労も痛くはありません。


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