Page:31

※各画像はクリックすると拡大します。










 五稜郭駅の構内で放置されているキハ56-211[①]。引退してから相当期間が経過しているのにまだ置かれているということは、保存といえば保存ということになるのかもしれませんが、この朽ちようを見ると、「放置」と言った方が正しいかもしれません。なお、キハ56系については、北海道三笠市の三笠鉄道記念館に3両が保存・展示されているので、仮にこのキハ56-211が解体されたとしても、そこまで嘆くことはないでしょう。

 JR貨物では、青函トンネルなどの昇圧区間での走行が可能な新型機関車として、EH800形が登場しました[②]。2014年8月、下りの急行はまなす号で北海道を目指していた私は、深夜の木古内駅において、試運転中のEH800形と遭遇しました。あのときは、北海道新幹線の開業なんかまだまだ先のことだな、という気がしていたのですが、いつの間にか月日は過ぎ、この3月26日という日を迎えました。

 北海道新幹線の開業に当たっては、並行在来線となる江差線が経営分離され、道南いさりび鉄道となりました。五稜郭駅の駅名標は、駅自体はJR北海道の管轄ですから、JR北海道標準のデザインが採用されていますが、道南いさりび鉄道の誕生により、「道南〜は五稜郭分岐だが、全列車が函館まで乗り入れている」という状況を表せるように、表記が修正されました[③]

 新函館駅は大賑わいでした。そして、今頃、函館駅もとても賑わっていることでしょう。ただ、間にある五稜郭駅は、”初乗り組み”からは無視されているようで、静かでした[④]。ここでは、特にイベントなども催されていませんしね。熱心な鉄道ファンは、北海道新幹線への初乗りをしてきた後、更に開業したて(経営分離を開業と表現するのは好きではないのですが)の道南いさりび鉄道への初乗りもしているかもしれません。

 この駅は、函館市の市街地の中に含まれているため、駅周辺にも街が広がっています[⑥]。駅前のすぐそこにコジマもありますしね。駅舎内もそうでしたが、五稜郭では、特に北海道新幹線の開業で狂喜乱舞といった様子はなく、至って普通の土曜日の時間が流れていました。

 今回、五稜郭駅ではこだてライナー号を下車したのは、五稜郭タワーを訪れるためでした。北海道は、鉄道旅行でも、普通の観光旅行でも、もう何度も訪れていますが、函館市の観光地のひとつ・五稜郭タワーは、実はまだ行ったことがありません。今回、北海道、それも函館周辺へ行く機会が得られたということで、「これはちょうど良い機会じゃないか」と。

 「五稜郭公園入口」というバス停を目指すべく、バスの時刻を綿密に調査。その結果、「8:39発の89系統・旭岡中学校行き」に乗れば良いということが分かりました。ところが、です。「五稜郭駅前」を名乗る5か所のバス停(正直この時点で色々とツッコミたい)の全てを訪れても、「8:39発の旭岡中学校行き」という便が見当たりませんでした。おかしい。はて、どういうことか?

 そして、私は、函館バスが3月26日にダイヤ改正をしたということを知りました。JRがその日にダイヤ改正をすることは当然把握していましたが、函館バスも同時にダイヤ改正をするということを把握していませんでした。そして、その改正の結果、「土曜日・8:39発の旭岡中学校行き」という便は、大幅に時刻が変更され、なくなってしまっていたのです。あるまじき失態!と言いたいところですが・・・。

 今回、バスの時刻を検索するにあたっては、ナビタイムを使用しました(函館バスの公式サイトでは、あるバス停の発時刻しか分からない)が、私は、きちんと「3月26日」を指定していました。ただ、時刻を検索をする時期が早かったのか(もっと直前にするべきだったか?)、ダイヤ改正後のデータがまだ未提供で、ダイヤ改正以前のデータに基づいた時刻を表示してしまっていたようです。

 ”ガラケー”では、満足にバス時刻の検索もできませんし、結局、打つ手を失った私は、タクシーに頼ることにしました[⑦]。バスであれば、五稜郭駅前〜五稜郭公園入口は240円で済んだところを、タクシーにした結果、950円もかかってしまいました。まあ、タクシーにしたことの副産物として、五稜郭タワーの入口まで直接乗り付けることはできましたが(五稜郭公園入口のバス停から五稜郭タワーへは、またいくらか歩くことになる)。

 この件に関し、タクシーの運転手は、函館バスの複雑怪奇な運転系統のことや、五稜郭タワーと言いつつ五稜郭駅からは遠いことなどを総合して、「函館・五稜郭は、観光客には不親切なところですよね」との感想を漏らしました。なお、私の姿を見て、なんとなく鉄道好きだということは分かったようで、この後北海道新幹線に乗るのかと聞かれましたが、いや、むしろ乗ってきたばかりだと答えると、さすがに驚いていました。























 軒高98m、避雷針を含めた全高は107mとなる五稜郭タワーは、道南地方で最も高い建造物です[①]。下から見ようとすると、首を思い切り上へ向けなければなりません。展望室はガラス張り・逆台形で、スリルと見晴らしを両立していそうです。

 展望室への入場料金は840円。高くもなく安くもなく。エレベーターガールの操作と案内のもとに展望室へ辿り着くと、そこには、晴れ渡る函館の街並みと五稜郭がありました[③]。「土曜日・春休み・北海道新幹線開業日だから、とてつもなく混雑しているかも」と恐れていましたが、実際には、そう大した人出ではありませんでした。また、あの中国人・台湾人も見当たらず、全員日本人でした。皆「休日を楽しむ地元の人」といった雰囲気。

 五稜郭は、箱館奉行所の移転先として築かれた”城”ですが、城というよりは要塞といった雰囲気。何と言っても特徴的なのは、その星形の造形で、これにより、外部からの敵に対しての死角が小さくなる・・・とかなんとか[⑤]。が、正直、星形である理由や利点については、よく分かりません。解説しようと思っても、あまりにも専門外すぎる分野なので、結局、インターネット上に書いてあることの受け売りにしかなりませんので・・・。

 というわけで、私は、五稜郭を眺めながら色々と考えるのもそこそこに、窓越しに見える函館の街並みを楽しみました[⑥]。ただ、これはもう恐らくどこの展望台にも共通することでしょうが、やっぱり、昼間の眺めというのは、夜間に見る夜景と比べると、建物の色や大きさ、道路方向・形状の統一性のなさが丸分かりになってしまうので、やや「汚く」見えてしまう部分はあるかと思います。あと、単刀直入に言って「地味」。

 南東方向を眺めると、函館空港の滑走路が見えました[⑦]。空港というのは、規模が非常に大きい施設なので、そのことも考慮する必要はありますが、このように、五稜郭タワーからその存在をはっきりと視認できますから、市街地から比較的近いところにあると分かります。駅から空港まではバスで20分程度なので、この点から考えても、それほど遠くはないということです。

 津軽海峡の向こうに見えるのは、本州・青森の地[⑧]。ただ、眺めた方向から考えると、見えているのは、大間であると思われます。今日は晴れており、海も至って穏やかに見えますが、ひとたび悪天候になれば、そのような状況下を船で乗り越えていくのは、大変な困難でした。「本州と北海道を結ぶ、天候に左右されない、安定した輸送手段を」。そうした願いから生まれた青函トンネルを、今日、ついに新幹線が通りました。

 五稜郭地区の方が函館地区よりも賑わっている(商業ビルや飲み屋が充実している)というように聞いていますが、五稜郭タワーから眺めてみる分には、函館駅周辺の方が、高層建築は多いように思われます[⑨] [⑩]。高層建築の多さと賑わいは、必ずしも比例はしませんが、マンションやホテルといったものは、函館地区の方が整備が進んでいるのかもしれません。

 3月も下旬となり、函館でさえ、もう路面からは雪が消滅しかけていますが、函館湾を取り囲む山々は、まだまだ雪が残っています[⑪]。山の上の方に舞い落ちてきた、踏まれもせず、触られもせずの純白な雪は、透き通るような白さを誇ります。海だけ、山だけの景色も、それはそれで悪くないものですが、海は山を引き立て、山は海を引き立てる。この光景を見ていると、それがはっきりと分かります。

 内陸の方を見てみると、市街地はあるところをもって途切れ、その向こうには田園地帯が広がっていることが分かります[⑫]。写真ではかなり小さくなってしまっていますが、その中を、北海道新幹線の高架橋が、伸びやかに、弧を描きながら通っています。

 目いっぱいズームして撮り直ししてみましょう[⑬]。このようにすると、北海道新幹線の高架橋がはっきりと見えてきますね。それをなぞって行った先に、何やら黒っぽい建物が見えているような気がしますが・・・、あれが新函館北斗駅なのでしょうか? ・・・いや、空港とは規模が全然違うのは分かっていますが、それにしても、見え方が小さすぎやしないでしょうか?

 新函館北斗駅の問題点としてしばしば槍玉に挙げられることですが、新函館北斗駅は、函館からあまりにも遠すぎます。函館駅から函館空港までが約7370m(直線距離)であるのに対し、函館駅から新函館北斗駅は、約15980mもあります。もちろん、鉄道連絡かバス連絡かという手段の違いがあるため、距離の違いがそのまま所要時間の違いにはなりませんが、街の中心部へ、空港よりも遠い新幹線駅がかつて他にあったでしょうか。

 函館とは全く関係のない駅であるならば、むしろ見えているだけでも驚きですが、函館を含む駅名がつけられた、新幹線における函館の玄関口なのに・・・。函館空港の立地は良い方で、”後から来た”新幹線は、立地的には不利にならざるを得ませんが、倍以上の距離はどうかと思います。
















 展望台へ上るエレベーターに乗ると、展望2階へと出されますが、下りのエレベーターには、1つ下の展望1階から乗るように案内されます。階段を下りた先にある展望1階は、高さ90mのところにある2階よりも4mだけ低い86mのところにあり、外の眺めはあまり変わり映えしませんが、床の一部が窓になっていて、下の様子を見ることができます[①] [②]。・・・まあ、土台を見ても、あまり面白くはないのですが。

 「期間限定のさくらソフトクリーム」なるものがあったため、買い求めました[③]。よく言われることですが、アイスというものは、暑くてしようがない真夏に食べるよりも、少々寒いときに食べた方がおいしいものです。なお、公式サイトから入手できる「ソフトクリーム割引券」を紙に印刷し、持参していましたが、さくらソフトクリームは対象外になっていたため、割引なしの100%の値段で購入しました。

 函館を訪れる旅人たちの間で愛されているという噂のハンバーガー屋、ラッキーピエロ[④]。函館へ行ったときのお約束、とも言われているようですが、ああ、しまった。五稜郭タワーへの訪問は達成できたものの、ラッキーピエロのことをすっかり忘れていました。実はここも行ったことがないもので、いずれは行かねばならないと思っていましたが、そもそも頭の中から完全に消えていたものですから・・・。

 北海道新聞函館支社の建物に、北海道新幹線・道南いさりび鉄道・はこだてライナーの開業を祝う垂れ幕が掲げられていました[⑤]。今回の開業を誰よりも歓迎しているのは、函館市民に他ならないでしょう。東北の人でも、関東の人でもありません。ただ、留意しておかなければならないのは、あくまでも「函館市民」であって、「北海道民」とは言い切れないということです。

 「道新」としては、北海道新幹線の開業は一大事です。当然、気合の入った号外を出しているようで、それが掲示されていました[⑥] [⑦]


                  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25
26  27  28  29  30  31  32  33  34  35  36  37  38  39  40  41  42  43  44  45  46


DISCOVER どこかのトップへ

66.7‰のトップへ