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 何とか上鹿折駅に辿り着きました。写真からも分かるように、この駅は、駅周辺の住居や商業施設も少ない、山あいの地帯にあります[①] [②]。ということは、元々利用客数が多くなかったと推定されるわけですが、立地の悪さと利用客の少なさが、BRTのメインルートから外された理由というところでしょうか。ただ、陸前高田〜陸前矢作と異なり、こちらは、JR東日本はBRTを運行しない、という仕打ちまでついています。

 海から離れた山間部にあるという立地が幸いし、上鹿折駅は、津波の被害を全く受けませんでした。ホームの前に駅舎(待合室)が設置されていますが、板を打って閉鎖しただけで、駅舎自体は、非常に綺麗な状態を保っています[③]。切符の回収箱や灰皿も当時のままに置かれています。駅施設の破損などがないためか、ホームへの立ち入り禁止措置はとられておらず、入り口に柵やロープは見当たりません[④]

 上鹿折駅は、鹿折唐桑駅と陸前矢作駅との間に位置する駅でした[⑤]。先ほど、私は、陸前矢作を訪れましたが、鉄道時代は、線路は山間部を貫いて両駅を結んでいました。しかし、BRTとなった今は、そのルートが海沿いを迂回するような形をとっているため、上鹿折と陸前矢作を移動したいと思った場合は、距離的な無駄が大きくなってしまいます。

 津波の被害を受けなかったこの駅は、駅舎だけでなく、ホームも在りし日の姿をとどめています[⑥]。もっとも、5年以上も列車の往来がないレールは、その輝きを失い、錆びついたくすんだ色合いをしています。雑草も無造作に生い茂り、社員(?)が来て駅舎の閉鎖措置をとったこと以外は、ほとんど手つかずのまま放置されているということが分かります[⑦] [⑧]。駅名標も健在ですしね。

 駅の設備は健在でありながら、その前後の区間が被災したことで不通区間に含まれてしまい、おまけにBRTのメインルートから外されてしまった上鹿折駅は、そのような意味では、不遇の駅であると言えます。昼過ぎの穏やかな時間帯、物音もしない静寂に包まれる上鹿折駅。雰囲気としては、それこそ、いつ列車が来てもおかしくないという感があるのですが・・・[⑨]。ここで待っていれば、列車がやってくるような気が・・・[⑩]

 駅構内に設置された信号機は、電気が通らなくなってしまっただけで、板で打ち塞がれるようなこともなく、しっかりと立ち続けています[⑫]。鉄道関連施設の保存の新しい形、保存車ならぬ「保存駅」ではないか、と思ってしまうほどに、上鹿折駅の状態は良好です。















 鹿折金山線の路線バスに乗車します[①]。この手のとんぼ返りではよくあることですが、バスの運転手は、上鹿折駅にやってくるときに乗車したバスと同じ人でした。もっとも、だからと言って、お互いに特別な反応を示すわけではありませんが。なお、先ほどのバスは、やや遅れて上鹿折駅前に到着しましたが、折り返し時間を切り詰めたようで、このバスは、ほぼ定刻にやってきました。

 このバスのロングシートは、背もたれが高く、更に仕切りがついているというものでした[②]。是非鉄道車両にも導入してほしいものですね。昔とは異なり、今は、新型車両と言っても、ただただ新しいというだけで、画期的な改良や変化はあまり見られません。通勤型車両も、これ以上の進化・改良というのはなかなか難しいのでしょうから、是非、「より快適な次世代型ロングシート」として、これを導入してみてはどうでしょうか。

 前方に掲示された運賃表に目をやってみると、「回数券で乗継券(バス→地下鉄)は購入出来ません」という表記がありました[④]。よくよく考えてみれば、これは滑稽です。言うまでもなく、気仙沼付近に地下鉄などありませんからね。鉄道の世界においては、大手民鉄から地方民鉄への車両の払い下げがしばしば行われますが、それはバスの世界にもあるようで、この車両は、名鉄バスから移籍してきたようです。

 高台にある気仙沼市営住宅は、バスの走行経路から外れたところにあります。宮城県道34号線から外れたバスは、市営住宅の前にあるバス停での乗降を終えると、ハンドルを思い切り切って転回します[⑤]。「高台にある市営住宅」ということで、そこは当然行き止まりになっているわけです。

 今回は、気仙沼駅前までは乗車せず、鹿折唐桑駅前で下車しました[⑥]。このまま気仙沼駅まで行ってしまうと、その後に乗車する一ノ関行きの列車までの待ち時間が異常に長くなってしまうほか、 鹿折唐桑駅前で降りれば、またひとつ新たに駅を訪問できる、といった理由から、そのような行動をとりました。鹿折唐桑〜気仙沼間は、JRのBRTバスで移動します。























 鹿折唐桑駅前のバス停にやってきました。ここには岩手県交通のバス停もありますが、そちらは、「鹿折駅前」という停留所名です[①]。まあ、事業者が違いますから、同じ名称にしなければならないという道理はありませんが、やや不親切と言えばそうかもしれません。何せ、同じ場所にある同じもの(バス停)なわけですからね。このような事例は、鉄道では、JR九州の人吉駅とくま川鉄道の人吉温泉駅などで見られます。

 荒れ地の上に建造されゆく大きな建物[②]。「またイ●ンモールでも造ってんのかな」と思ったら、「鹿折地区 災害公営住宅建設中」との掲示がありました。気仙沼市も、特に海沿いの地帯においては、津波で流失した住宅は数知れません。人の暮らしは住まいからです。

 一見、ただの交差点のように見えます[④]。しかし、ここはただの交差点ではありません。なぜなら、一般道(宮城県道34号線)とBRTの専用道が接続する場所だからです[⑤]。専用道への出入り口では、踏切の遮断桿のような棒が立ち塞がり、一般車両や歩行者の進入を防いでいます。この専用道も含めた周辺一帯は、地盤の嵩上げが実施され、旧道から眺めてみることによって、どのような変化が起こったのかが分かります[⑥]

 この後はJR東日本のBRTバスに乗車しますが、それの鹿折唐桑駅は専用道上にあり、路線バスの鹿折唐桑駅前とは異なる場所にあります。休止中の踏切から気仙沼方面を見てみると、寸断された線路の向こうに、アスファルトで固められたBRT専用道が・・・[⑧]。BRTの運行開始当初、JR東日本は、しきりに「仮復旧である」と繰り返してきましたが、線路を引き剥がしてアスファルトで固めた時点で、その本心は丸見えだったわけです。

 「BRT(バス)の専用道の工事中です」と書かれた看板が立てられていましたが、これは、既に整備が完了した気仙沼〜鹿折唐桑間の専用道を整備しているとき立てたものが残っているのか、それとも、鹿折唐桑よりも先の専用道を更に整備していくということなのか[⑨]。上鹿折を経由しない現在のルートを維持するのであれば、鹿折唐桑より先は、専用道は造れず、しばらく一般道を通らざるを得ないようにも思われます。

 専用道上の鹿折唐桑駅にやってきました[⑩]。鉄道時代の駅と全く同じ場所に整備されましたが、そこを通っているものは、線路ではなくアスファルトです[⑪]。ところで、仮復旧仮復旧と言い続けてきて、結局BRTでの本復旧とすることが決まったわけですが、もし今から再度線路を敷設するのであれば、このままアスファルト上に敷設し、スラブ軌道(のような何か)にでもするのでしょうか?[⑫]

 待合室に設置されたロケーションシステムモニターによると、気仙沼行きのBRTバスは、現在5分ほど遅れているようです[⑭]。一般道も走る以上、多かれ少なかれ遅れは発生してしまうものだというのは分かりますが、遅延があまりにも常態化すると、その遅れ分を含んだダイヤが設定されてしまうかもしれません。そうなると、所要時間が延びたダイヤとなることで、スイスイ行っても意味がなかった、という事態も起きてしまいます。


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